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OWNERSグイド・ビトッシ氏(会社経営者)

その魅力はマヨルカ陶器に通じる

新たな会長車

レオナルド・ダ・ヴィンチの生誕地であるヴィンチ村に程近いフィレンツェ県モンテルーポ・フィオレンティーノは、陶器の街として知られる。「コロロッビア」は、その地で顔料をはじめとする多様な陶器用マテリアルを手掛ける企業だ。南米・アジアを含む18カ国に29の関連会社をもち、総従業員数は2000人を数える。

通勤にみずから運転する。「新しい技術には、常に関心があるものですから」とEVである『500e』購入の理由を語る。

『500e』オーナーであるグイド・ビトッシ氏は、同社の創業一族として長年にわたり会長を務めてきた。
「最先端素材にも強いことから、1970年代末にはフォーミュラ・ワンのサプライヤーも務めていたこともあります」と彼は語る。
ただし、ビトッシ氏は運転手付きセダンのリアシートに收まることをよしとしない。常に自らステアリングを握ってきた、行動力あふれる経営者である。これまでに、スーパーカーをはじめ、イタリアおよびドイツ系ブランドのさまざまな高性能モデルを乗り継いできた。

1921年に彼の祖父が設立した「ビトッシ・チェラミケ」歴史的本社の前で。

その彼にとって、最新の愛車はずばり『500eカブリオ』である。近くのフィアット・ディーラーに到着した1号車をいち早く手に入れたという。フルオプションバージョンの「ラ・プリマ」という仕様である。
「850、124スパイダー、128…と若き日の思い出は、常にフィアット車と一緒です。いまでも南部プーリアに所有する家では、Pandaを便利に使っていますよ」と明かす。

ビトッシ氏にとって、フィアット・ブランドは若き日の思い出と一緒だ。

毎日“盗まれて”しまう!

ビトッシ氏は「EV(電気自動車)ならではの、胸のすく加速に感激しています」と『500e』を熱く語る。加えて「ナビゲーションを含むインフォテインメントやADASシステムの操作性は、他の欧州製高級車のレベル以上です」と語る。
さらに「シェルパ・モードも助かります」と説明する。シェルパ・モードとは、航続可能距離が少なくなってきたとき、最高速度や加速、エアコンなど各機能を最適化することで電力消費を自動的に節約する機能だ。「ある日フィレンツェからの帰り道、航続可能距離40kmと表示されました」。その距離は、自邸までの距離とほぼ同じだったらしい。EVを運転中、このような状態はけっして心穏やかなものでないはずだ。
しかし「シェルパ・モードに切り替えたところ、余裕で帰宅できました」と語る。

「ナンバープレートもしっかり見てくれましたか!」。気色満面のビトッシ氏。

「イタリアでのEVは、自動車税が免除されたり、内燃機関車の進入が禁止されている歴史的旧市街にアクセスできることも大きなメリットです」
そうしたなか『500e』に関する唯一の悩みがあるそうだ。彼が乗ろうとすると、毎日のように自身のお嬢さんたちに「盗まれて」しまうことだという。EVとしての高い実用性だけではなく、そのスタイルが魅力的であるからに他ならない。

中庭にて。歴史的本社屋では、伝統的な陶器造りを熟練職人が続けている。

「過去」に学んでこそ可能な「未来」

そのビトッシ氏、先日晴れて現役からのリタイアを果たした。新たな情熱は、創業100年の2021年に開設した企業ミュージアムの運営である。そこには、伝統的な製品だけではなく、エットレ・ソットサス、ミケーレ・デ・ルッキをはじめとする、さまざまな著名アーティストとコラボレーションした陶器製品も展示されている。
「過去の作品群は、人の目を楽しませたり、役にたってきただけではありません。クリエイターたちが次の作品を制作する際、大切な霊感源の役割を果たしてきたのです」と、コレクションの意義を説明する。
歴代『500』が培ってきた生活ツールとしての高い志や、機能に裏づけられたデザインを継承しつつ、未来への提案を惜しみなく盛り込んだ『500e』に、ビトッシ氏は同様の魅力を感じているのである。

ビトッシ家は1536年にまで遡り、長年にわたりマヨルカ焼の世界に携わってきた。創業100年記念に開館したミュージアムにて。

Interview & photo 大矢アキオAkio Lorenzo OYA

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