『500e』にさらに100の魅力を追加した「500+100=600」というコンセプトで開発された『600e』が、いよいよ上陸。さっそく、モータージャーナリスト嶋田智之氏のファースト インプレッションをお届けします。
受け継ぎつつも新しい
『500』=チンクエチェント、そして『600』=セイチェント。『600e』はプロダクションモデルとしての、『500e』に続くフィアットブランド2番目となるバッテリーEVです。パーソナルカーにしてスペシャルティカーという色合いが強い『500e』に対し、同じ世界観の中にありながらよりファミリーユースに向いたモデルとして、『600e』は開発されています。
『500e』のかわいらしさが好きで暮らしに迎え入れたいと思っていても、ドアの枚数や居住スペースの関係から自分たちのライフスタイルにあてはめにくいという人は思いのほか少なくなく、そうした人たちの心と日常を埋めるためのクルマとして作られてる、というわけですね。
フィアットファンの中には先刻ご承知という方も少なくないのでしょうが、『500』がそうであったように、『600』にも同じ名前のご先祖様が存在していました。その後に登場することになる2代目『500』の人気の影に隠れて日本ではあんまり知られてないようですが、初代『600』は1955年にデビューして1969年に生産が終わるまでに260万台が作られたベストセラーカー。“トポリーノ”こと初代『500』より──もっとわかりやすく言うなら現代の日本の軽自動車より──コンパクトな車体に大人4人がしっかり乗れる車内スペースを確保した、当時のイタリアの普通の人たちの暮らしに見事にマッチする、ファミリーユースに最適なクルマだったのでした。
その初代『600』へのリスペクトは、新しい『600』のデザインにしっかりと込められています。2ボックスで5枚のドアを持つ『600e』のスタイリングデザインはまったくの新規ですが、実車を目にすると、かつての『600』の面影が感じられるところが多々あるのです。
例えば車体後部。リアゲートまわりが優しく膨らんでから垂直気味に落ちていき、下端は車体の下に丸まりながら入っていくあたりは初代『600』のイメージにそれとなく重なります。『500e』同様のファニーな顔つきに気をとられてしまいがちですが、シルエットそのものは穏やかな大人っぽい印象です。
実はインテリアにもかつての『600』の面影はしっかりあって、2本スポークのステアリングやラウンド型のメーターナセルなどは間違いなくクラシック『600』へのオマージュです。ダッシュまわりは直線を強調し、さらにモダナイズさせつつ上質に仕上げたという印象で、シンプルでありながら洗練されたインテリアに仕上がっています。
デザインへのオマージュの込め方、そして洗練のさせ方。エクステリアもそうですしインテリアもそうですけど、こういうのをやらせるとイタリアは本当に上手いな、と思わされます。
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