滑らかと力強さを併せ持つ
もうひとつ触れておきたいのが、色づかいです。フィアットは昨年の6月、“イタリアの海、太陽、大地、空からインスピレーションを得た”色だけでボディカラーを構成し、「グレーはなし」と大胆な宣言をしました。日本市場では撮影車両のスカイブルーに加え、キーカラーのサンセットオレンジにホワイトという3色展開。それらの色味が絶妙にいいのです。
写真右はサンセット オレンジ、中央はホワイトの『600e』。
アイボリーを基調としたインテリアにも、ところどころに鮮やかなブルーの刺繍やステッチが施されています。イタリアはまさしく色彩の国。こういう“らしさ”みたいなものが、気分を大きく上げてくれるのです。
そんなわけで、ルックスは内外ともにかなり好印象。茶目っ気たっぷりの明るさと、シンプルだけど洒落た着こなしの上手な、『500e』のお姉さん。そんな印象です。
では、肝心のクルマとしての実力はどうだったでしょう? 先に申し上げちゃいますけど、実はこっちもだいぶ好印象だったのでした。
メカニズム的な部分にサラッと触れておくと、『600e』はステランティス・グループの電動化車両用モジュラープラットフォーム、「eCMP」を骨格にしています。そこに54kWhのリチウムイオンバッテリーと前輪を駆動する最高出力156ps、最大トルク270Nmのシングルモーターが組み合わせられて搭載されています。車重は1580kgあり、それを非凡とはいえない動力源で走らせるのか……と、正直に白状するならそれほど期待感は高くはなかったのです。
ところが、それはあっさり覆されました。スポーツ系のバッテリーEVではないので途方もなく速いというわけじゃありませんが、そのパフォーマンスに不足なし。ちょっとときめくくらいの速さと楽しさくらいなら、たっぷりと提供してくれるのです。何より絹を思わせるような滑らかなフィール、欲しいときに欲しいだけトルクを提供してくれる瞬発力と力強さ、4人乗車時の加速性などは、モーター駆動ならでは。僕たちが普段クルマで走ってるときのいわゆる常用域においては、『600e』の走りの上質さがキラリと光ります。
モーターは最高出力156ps、最大トルク270Nmを発生。
優しく快適な乗り心地にも感銘を受けました。バッテリーの重さは、重厚感と安定感のある乗り心地にきっちりと活かされています。それはもうちょっとした高級車の領域。同じBセグメントと呼ばれるクラスの内燃エンジンのクルマでは、とてもじゃないけど実現できないレベルです。
バッテリーが低い位置に適切な配置でレイアウトされてるおかげで、ハンドリングも良好です。とにかくクルマが素直に曲がってくれる、行きたい方向へと向かってくれる。そんな印象です。ステアリングのフィールとしては、『500e』のようにクイックというわけではなく、どちらかといえばマイルドといっていいと思うのですが、これはむしろ誰もが安心して操作でき、自然で穏やかな操舵感とともに気持ちよく曲がっていけるというメリットに繋がっています。
>>>次ページ フィアットらしい懐の深さ
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