現地の暮らしを通じて見えた「もうひとつの豊かさ」
イタリア中部のシエナに暮らす筆者がサルデーニャ島を訪れることになったきっかけは、街のカフェでのある出会いでした。夕方になると毎日のように屋外席に座っていた一人の紳士と、いつの間にか言葉を交わすようになり、やがて彼の名前はジョルジョで、かつて高校教師をしていたことがわかりました。
そんな風にして親しくなったある初夏の日、ジョルジョ氏が「今年の夏休みは、私の故郷にいらっしゃい」と誘ってくれました。その故郷というのがサルデーニャだったのです。「夏のサルデーニャ」と聞いた瞬間、思い浮かんだのは、前述のように優雅なヴァカンスを楽しむセレブリティたちと、彼らが滞在するようなグランドホテルの光景でした。
しかし後日、飛行機で北の玄関口、オルビア・コスタ・スメラルダ空港に降り立ち、レンタカーを借りてたどり着いたジョルジョ氏の故郷――カーラ・ゴノーネは、人口わずか1500人ほどの小さな村でした。彼が手配してくれていたのは、知り合いのジャンミケーレというおじさんが営む、自宅の離れの一室。そこは週刊誌で見たような華やかな風景とはまったく違う、素朴な日常が広がっていました。

セレブリティが集うエリアでなくても、碧い海が広がります。
到着したその晩から、ジャンミケーレ氏の夫人とお嬢さんと一緒に、屋外のテラスで夕食をとることになりました。テーブルに運ばれてきたのは、「パーネ・フラッタウ」という郷土料理。先に夫人とともにクルマで島に戻っていたジョルジョ氏も合流しました。
「多くのサルド(サルデーニャ出身の人々)は、夏になると家族と一緒に故郷に戻って、一年でいちばん美しい季節を楽しむのさ」と、ジョルジョ氏は教えてくれました。
宴も終わりに近づき、食後酒のリモンチェッロを傾けながら、彼がふと思いついたように言いました。「そうだ、明日の朝、おもしろいところに連れて行こう」。行き先は“お楽しみ”とのことでした。
翌日、ジョルジョ氏に連れられて訪れた建物の中では、早朝にもかかわらず4名の女性が作業に取りかかっていました。彼女たちが手がけていたのは、サルデーニャの名物パン「パーネ・カラザウ」でした。


パーネ・フラッタウという名の一皿(上)。サルデーニャ伝統菓子の数々。アーモンドベースにしたものや、果物・野菜を模したマジパン製も(下)。
聞けば、生地づくりは深夜1時半から始まっていたのだそうです。
その生地を、目の前で丁寧に延ばして窯に入れると、まるで自動車のエアバッグのように、一瞬でふくらみました。

パーネ・カラザウの生地を窯に入れると、一瞬のうちに膨らみます。
窯から出したらすぐに、紙を切るような要領で、パーネ・カラザウを上下に切り分けていきます。彼女たちはその作業を、黙々と繰り返していました。重ねられたパーネ・カラザウは、まるで紙を何枚も重ねたような薄さ。それが「カルタ・ダ・ムジカ(楽譜)」という別名の由来なのです。

重ねられた様子は、まさにカルタ・ダ・ムジカ(楽譜)です。
あまりに息のあった作業ぶりに圧倒され、言葉を失っていた筆者に、ジョルジョ氏がそっと話しかけてきました。
「今でこそ、サルデーニャ島といえば美しいビーチやリゾートのイメージが強いだろう。でも、もともと島の人々の多くは、何世紀にもわたって放牧で暮らしてきたんだ。家を離れ、何ヶ月も山や野を移動する彼らにとって、乾燥していて軽いカラザウは、携行する食糧として理想的だったんだよ」

今日、サルデーニャといえばビーチだが、歴史的には山岳地帯における放牧が人々の生活を支えていました。
「伝統食」と聞いて、「きっと祝いの日に食べる特別なものだろう」と思い込んでいたのは、筆者の大きな勘違いでした。滞在中に訪れたいくつかの家庭では、どこでも食事のテーブルにカラザウが当たり前のように並んでいました。家族が四方から手を延ばし、パリパリと音を立てながら割って食べる。そんな光景が日常だったのです。ジョルジョ氏のカラザウの割り方も、明らかに手慣れていて見事なものでした。
ちなみにジャンミケーレ氏の家でいただいた前述のフラッタウは、カラザウをお湯でやわらかくしてトマトソースを塗り、そこにポーチドエッグをのせたものでした。これは、カラザウの食べ方のひとつのバリエーションだったのです。
「サルドは、夏が終わって故郷を離れるとき、お気に入りの店でカラザウをたっぷり買い込んで、クルマに積んで本土に帰るのさ」
ジョルジョ氏は、そう教えてくれました。ご当地パンを通じて、もうひとつの郷土愛あふれる“ドルチェヴィータ”を知った夏でした。

夏になると、各地の広場で民族舞踊の夕べが開かれます。音楽はいつまでも途切れることなく続き、踊りの熱気が広場を包み込みます。
さて、5月・6月のカレンダーを彩るのは、サルデーニャ島の西岸の町・ボーザ。ランドマークのひとつ、ポンテ・ヴェッキオを走るのは『500e(チンクエチェントイー)』です。航続距離は335キロメートル(WLTCモード)。思わず、少し離れた秘境ビーチまで足を伸ばしてみたくなります。アクセルペダルの操作だけで加減速ができるワンペダル走行も、快適なドライブをサポート。三層パール塗装のセレスティアル ブルーは、眩しい太陽の光を浴びると、まるで夢のような輝きを放ちます。地中海の風を感じながら、イラストレーションをお楽しみください。

Fiat 500eの詳細はこちら
Text 大矢アキオ ロレンツォ Akio Lorenzo OYA
Photo 大矢麻里 Mari OYA/Stellantis
【PRESENT CAMPAIGN】
フィアット オリジナル 2025年カレンダー&壁紙ダウンロード
“イタリア各地をめぐるフィアット”がテーマの2025年カレンダー。5月・6月のオリジナルカレンダーは、サルダーニャ島西海岸の街・ボーザ。ランドマークのひとつ、ポンテ・ヴェッキオを走る『500e(チンクエチェントイー)』です。このイラスト入りカレンダー(PC用 / スマートフォン用)はダウンロードが可能。また、イラストのみの壁紙もご用意しているので、ぜひダウンロードしてみてください!
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