ヴィンテージのFIAT 500で美しいフィレンツェを駆け抜けるツアー 「大好きなフィアットをイタリアで運転してみたい! でも日本から愛車をイタリアまで持っていくのは無理だし……」。フィアット好きならそう思うことも多いのではないでしょうか。そんな人たちの夢が叶うツアーがフィレンツェにあります。フィアットで美しいフィレンツェの街と郊外の田舎を約4時間かけて巡るツアーがそれ。 ドライブするフィアットは、1957年から1977年まで生産されたリアエンジンのNUOVA 500(NUOVAとはイタリア語で新しいの意。このモデルが2代目の500だからそう呼ばれるのです)。 参加したのはフィレンツェのツアー会社「WALKABOUT FLORENCE(ウォークアバウトフローレンス)」の“FIAT 500 TOUR”。このツアーは英語(またはイタリア語)の案内になってしまいますが、英語ができる人にはお勧めのイタリアならではのツアーです。国際運転免許証(AT限定不可)を持っている18歳以上なら誰でも運転での参加が可能です。参加費は1人だと110ユーロ、グループ(1台)では1人85ユーロとなります(2019年7月現在)。 気になるツアーの内容は? ツアー開始時間は9時半と15時の一日二回。待ち合わせのツアー会社オフィスは、観光名所シニョリーア広場のすぐ近くにあるためアクセスがとても便利です。この日の参加者はアメリカ2人、モロッコ2人、フランス2人、ベルギー1人、ポルトガル1人といった国際色豊かな合計8人となりました。 最初にツアー会社のスタッフから運転方法についての説明があるので、これまでヴィンテージの500を運転したことがない人でも安心。ツアー中はガイドが先導し、その後に続いて運転するのでカーナビや、事前に道路を調べる必要もありません。各車両にはトランシーバーが用意されていて、これで先頭のガイドとコミュニケーションをとります。ガイドは全車両が後続しているか随時確認しながら走りますが、うっかり道を間違えたり、ついていけなかった場合にトランシーバーで連絡が取れます。 オフィスを出た後は世界遺産に登録されているフィレンツェ歴史地区の細い路地を抜け、観光名所ポンテベッキオを眺めながら橋を渡ります。観光客の多いアルノ川沿いをヴィンテージの500で走ると、沿道の観光客たちから視線が集まり、写真撮影されることもしばしば。 フィレンツェのパノラマ、郊外の緑溢れる田舎の景色に癒やされて フィレンツェ市内を抜け、木々の緑のアーチが爽やかな通りをミケランジェロ広場方向へと進みます。そのまま通りを上っていき、フィレンツェの街を一望できるサン・ミニアート教会で最初の下車。 この日はガイド歴9年のアレッサンドロ・デ・マルコさんが先導。フィレンツェ近郊のフィエーゾレ出身です。挨拶をすると「今日、写真撮影があると知っていたらお洒落なシャツを着てきたのに残念だな〜!(笑)」と冗談を言う明るく陽気なガイドさんで、ツアー参加者たちからもとても人気がありました。アレッサンドロさんにヴィンテージの500の思い出を尋ねると「僕のおじいさんもこの車に乗っていたんだよ。イタリア人なら誰でも何か思い出がある車だよね」と愛おしそうに車を見つめていました。 ここではガイドのアレッサンドロさんからフィレンツェについてや1000年の歴史を誇るサン・ミニアート教会の観光案内があります。サン・ミニアート教会の中を見学したり、土産物店で買い物したり、美しいパノラマを背景に写真撮影したりと、参加者たちは思い思いに観光を楽しめます。 サン・ミニアート教会観光の後は車に戻りさらに郊外へと向かいます。昔ながらの石壁の細い路地でも小さな500だとラクラク通ることが出来ます。 緑豊かな美しいフィレンツェの田舎のパノラマでは二度目の停車を行い、下車して写真撮影などを楽しみます。 さらに郊外へと進み、丘陵のオリーブ畑へクルマで入っていきます。オリーブ畑の中で三度目の停車。 ここから近くのワイン用ブドウ畑へと徒歩で移動。ブドウ畑ではガイドからトスカーナのワインについての説明があります。ワイン好きな人はガイドからお勧めワインを教えてもらうことも可能。 美しいパノラマを眺めながら参加者たちと旅の思い出を語り合う食事 旅の締めくくりはツアー会社が所有するプライベートテラスでトスカーナの絶景パノラマを楽しみながらの食事です。 この日の内容はトマトのフジッリやブルスケッタ、トスカーナのチーズやサラミ、プロシュートなど。参加者たちはイタリアの食事に舌つづみを打ちながらツアーの感想やイタリア旅行の情報交換といった話題に花を咲かせていました。 食事を堪能した後は再びスタート地点のツアー会社オフィスへと戻ります。豊かな自然の田舎からルネッサンスの街へと戻り、オフィスに到着して約40kmのツアーが終了です。毎回、距離やルートは異なるので公表はできないとツアー会社は言います。が、いずれもフィレンツェの歴史ある街並みと、雄大な自然のある郊外を堪能でき、満足していただけるはずですとも。 まるでイタリアに住んでいるような気分になるツアー 参加者たちにツアーの感想を聞いてみると…… ベルギー人女性「フィレンツェを訪れるのは初めてでしたが、運転はとても簡単でした! イタリアの車を運転しながらの観光は、イタリアに住んでいるかのような気分も味わうことも可能にしてくれました。ガイドのアレッサンドロさんもとても感じが良くて親切でしたし、イタリアの美しい風景も楽しめて大満足でした」。 アメリカ人男性「ヴィンテージカーが大好きで地元でも運転しています。だからイタリアでイタリアのヴィンテージカーを運転してみたいと思い、このツアーを選びました。フィレンツェの田舎道はとても狭いので、FIAT 500はパーフェクトな大きさで、とても運転しやすかったです。初めてのイタリア旅行なのですが、イタリアはすべてにおいて素晴らしいです」。 フィアット好きにはたまらない内容で、運転出来ない人でもガイドの横に同乗して参加することも可能です。イタリアでの素晴らしい思い出をフィアットと作ってみませんか? WALKABOUT FLORENCEのFIAT 500ツアーはコチラ 500ってどんなクルマ? Text・Photo:小林真子
ここ数年、欧州を中心にヴィンテージやヘリテージという流れに大きな注目が集まっています。ファッション、宝飾品、インテリアはもとより、自動車もその波に飲まれつつあります。 新しいものを否定するつもりはありませんが、こうした流れは、もっとロマンや楽しさ、美しさといった人間らしい、心に訴えかけるものに注目が集まっているのが原因かもしれません。 さて今回は、フランス・パリで行われたRETROMOBILE(レトロモビル)について。 レトロモビルとは、今年で43回目を迎えた欧州最大級の旧車をメインとした蚤の市。文字通り屋外でスタートした蚤の市は、折からの旧車ブームなどと相まって、もはや「蚤の市」というレベルを遥かに超え、立派なモーターショーともいえるような巨大イベントに成長しました。 ある種のアートとしての価値も見出されてきたという「ヴィンテージカー」ですが、投機対象としても人気が高まるばかりで、そうした流れの中、レトロモビルにも、かつてのような庶民然とした人たちだけでなく、いかにもお金持ちそうな方々も激増。それにあわせるかのように出展車両やブースも大変豪華になりました。 そんなレトロモビルの一つの目玉が、会場内で行われるオークション。2016年には1957年型Ferrari315/335Sが、$35,711,359(およそ38億円!)という欧州オークション史上の最高額を記録するなど、ますます世間の注目を浴びることになっています。 そんなお金持ちが集まるイベントですから、各メーカーも次第に敏感に反応するようになってきました。国際モーターショーに勝るとも劣らないレベルの素敵なブースを展開し、過去の資産やこれからのサポート、オーナーズクラブとの連携など、積極的なコミュニケーションを展開し、ブランディングの一環として活用するようになってきています。 市場価格の高騰は、カーマニアのお財布にとってはとても厳しい現実なのですが、一方でレストアにかけられる予算が激増したことによる仕上がりの品質の向上や、それによる実用性の向上。さらに、現在の気候や運転環境にも耐えられるようなアップデートなど、これまで以上に安心して旧車が楽しめるようになってきていることは喜ばしい事かもしれません。 また、メーカーたちが自身のブランディングの一環とはいえ、パーツやレストアのサポートをはじめるということは、やはりマニアにとっては嬉しいの一言。 そんな中FIAT有するFCAは、本拠地のトリノとパリで「Heritage」サービスを発表しました。これは、自身が所有するブランド(FIAT、ABARTH、ALFA ROMEO、LANCIA)がこれまでに生産したクルマに対し、レストアの支援や各種フォローやサーティフィケーション(一種の血統書発行)、そしてそれらの販売などを行うというもの。 「Passione senza tempo」 これはイタリア語で「情熱に時間は関係ない」〜つまり、情熱に際限はないという意味なのですが、クルマを愛する人たちが作るメーカーの、クルマを愛する人たちへのメッセージと決意の表れなのでしょう。 「積み上げてきた過去と歴史の上に我々は立ち、その先に未来があるんです。」 そう語ったのは、今回の新サービス「Heritage」のディレクターであるロベルト・ジョリート氏。FIAT500のデザイナーにして、元FIAT&ABARTHのデザインディレクターである彼のプレゼンテーションには、ひとかたならぬクルマに対する愛が溢れていました。 今回のレトロモビルでは、FIATが誇る幻の名車にお目にかかることができました。 1953年にわずか15台しか作られなかったという、知る人ぞ知るFIATの名車8V(オットヴー)のスペシャルモデル「スーペルソニック」。 50年代初頭らしい通称“JET AGE”と呼ばれる流麗で洗練されたスタイリング、まさに「空飛ぶ〜」的なデザインと、瀟洒でモダンなインテリア(冒頭の写真が8Vのインテリア)に来場者たちは釘付け。 FIATといえば、500をはじめとする大衆車メーカーとして知られていますが、第二次世界大戦前までは、高級な仕立て服のようなクルマをメインとしており、第一回欧州グランプリにも名を連ねる1899年創業の老舗の名門。 戦後の方針転換から間もないタイミングのさなかに生まれた、かつての高級路線時代のFIATを彷彿とさせるこのクルマは、同じトリノを拠点とするカロッツェリアの名門、ギアの手によるもの。 内外装ともに美しいこのクルマは、大変価値が高く、現在も億単位の高値で取引される、文字通り「幻の名車」となっています。 そんなクルマがサラリと売られているレトロモビルは、さしずめお金持ちのための桁違いの蚤の市といえるかもしれません。ちなみに、そんな価格のクルマであっても初日にはすでに「SOLD OUT」の札が…。 「珍しいクルマ、高級なクルマだけがレトロモビルの魅力ではありません。パリという街で行われるこのイベントは、奥さんや恋人といった女性たちにとっても、一緒に行く意義があるイベントなんです…。」とは、イベント・オーガナイザーのメルシオン氏が教えてくれたレトロモビル成功の秘訣。 そうなんです。あのパリでクルマも歴史も買い物やグルメも楽しめてしまう、楽しいイベントがレトロモビル。 ヴィンテージカーをお買上げになるならないは別として、是非一度足を運んでいただきたいイベントです。