「マニュアル車を操る楽しさを体験してみたい!」
そんなアナタのチャレンジングな欲求を満たしてくれるイタリアンコンパクトが、今回登場するFIAT 500(チンクエチェント)Sです。500Sは2013年4月にカタログモデルに追加されたマニュアルトランスミッション搭載車で、センターに赤文字で『500』と描かれた専用アロイホイールやスポーティなルックスを際立たせるバンパー、リアルーフスポイラーなど、颯爽と駆け抜ける姿が魅力的なモデルに仕上がっています。
日本ではオートマチックに代表される自動変速機付きのクルマが主流になっていますが、一方で、クルマと意思疎通を図りながらMT車を思い通りに乗りこなしたいというMTファンも少なくありません。
MT車をスムーズに走らせるためには、クラッチとシフトレバー、アクセルペダルを連携して動かす複雑な操作が求められます。乗り始めはタイミングがうまくつかめずに、ギクシャクしてしまうことがありますが、そのぶん、操作が思い通りにキマった瞬間の喜びはひとしお。腕を磨いただけ走りが良くなるので、ドライビングの奥深さと運転技術が向上していく楽しみを実感させてくれます。そこで今回はMT車をスムーズに走らせる方法について考えていきましょう。
クルマの動きを感じとり、正確な操作が行える運転姿勢の重要性
前回ご紹介したように、シートポジションを合わせる際の目安は、ハンドル上部を持った時でもヒジが伸びきらず、少し曲がるようにシート位置を合わせること。ハンドルを回しても肩が背もたれから離れないようにシートスライドを調整しよう。
クルマはカーブや路面の凹凸、坂道など、常に外的な環境に影響を受けながら走っているもの。ドライバーがイメージ通りにクルマを走らせるためには、まずはクルマの状態をしっかりと感じ取れる運転姿勢を取ることが重要です。誤った運転姿勢では腰や背中がシートから離れて不安定になってしまうだけでなく、ハンドルから伝わってくる手応えが感じ取りにくくなってしまうことも。クルマからのわずかなインフォメーションも逃さないためには、正しい運転姿勢が欠かせません。
参考記事:「正しいドライビングポジションの取り方 知っていますか?」
MT車をドライブする時、最初に緊張するのが、アクセルペダルとクラッチペダルを調整して行う半クラッチの操作。誤った操作の一例は、クラッチペダルをあらかじめ半クラッチにした状態でアクセルペダルを深く踏み過ぎてしまう運転の仕方です。このようなやり方では、必要以上に回されたエンジンの力がクラッチディスクを摩耗させてしまい、パーツの寿命を縮めてしまうこともあります。
半クラッチの状態でアクセルを踏み込みすぎるとスムーズに発進できないばかりか、クラッチディスクを痛めてしまうので注意したい。
滑らかに、そしてクルマにやさしく走らせるには、発進時にクラッチペダルではなく、アクセルペダルの踏み込みを先行させること。エンジン回転を少し高めておいてからクラッチペダルを踏み込む左足の力を少しずつ緩め、半クラッチの状態で繋いであげると、ギクシャクすることなく、滑らかに走り出すことができます。
ギアチェンジの際は手に力を入れず、レバーに軽く添えるだけでOK 。ギアを入れたら左足の力を緩めていきクラッチを繋ぐ。
次に、変速時のシフトレバーの操作方法です。
シフトレバーは狙ったゲートに力任せに叩き込もうとすると、間違ったギアに入ってしまう場合があります。シフトレバーは手のひらを添える程度の軽い力で動かすように心掛けると、無理のない動作で正確なシフトチェンジが行えます。
ここでシフトアップするときの動作をおさらいすると、加速して変速のタイミングが訪れたら、左足でクラッチペダルを奥まで踏み込んでクラッチをカット。その後、ひと呼吸おいてからシフトレバーをひとつ上のギアに入れ、左足の力を緩めながら半クラッチを使い、エンジンの動力をトランスミッションに伝達します。これで変速は完了です。
カーブを走行する際は、なるべく先のほうを見るように心掛けると、その先の道路状況を早い段階で把握することができます。目線を遠くに置けばどのタイミングでハンドルを切り足すかの判断やアクセルやブレーキ操作のタイミングが計算しやすいことから、適切なタイミングで操作が行えるようになり、自然と滑らかな走りへと変わっていきます。また、カーブの頂点をかすめるようなイメージで緩やかな走行ラインを意識することも、スムーズなドライビングに繋がります。
今回のモデル「フィアット500S(チンクエチェント エス)」。900ccのツインエアエンジンに5MTを組み合わせている。MTを搭載した限定車の人気が高かったことから、2013年4月にカタログモデルに設定された。価格は225万7200円(消費税込)。
今回ご紹介したテクニックは一例ではありますが、すぐに実践できるものばかりです。これらを意識して運転すれば、クルマとの対話力は自然と磨かれるはずです。クルマとのいい関係を築くことで、より充実したドライブライフを送っていただきたいと思います。
文 藤島知子
写真 荒川正幸
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