LIFESTYLE / Aug 4, 2023#トポリーノNuova 500イタリア電気自動車イタリア人にとって懐かしい名前のクルマが復活。フィアットが2023年7月4日に欧州で発表した小型のシティーコミューターEV(電気自動車)『Topolino』です。イタリア在住のジャーナリスト・大矢アキオ氏に、新『Topolino』の解説とともに、その偉大なルーツをひも解いていただきました。 ▲『Topolino Dolcevita(トポリーノ ドルチェヴィータ)』。オプションパーツのカタログには簡易シャワーも。 イタリア流・近距離モビリティ! この度、発表された新たな『Topolino(トポリーノ)』は、都市部や近距離移動を主な用途とした2人乗りのEV(電気自動車)です。全長×全幅×全高は2,535mm×1,400mm×1,530mm、そしてホイールベースは1,730mm。最高出力6kWhのモーターで前輪を駆動します。最高時速は45 km/hで、満充電からの航続可能距離(WMTCモード)は75kmです。 フィアットは、EVならではのカーボン(二酸化炭素)フットプリントやサウンド(騒音)フットプリントの削減、そしてコンパクトなサイズによるスペースフットプリントの削減という、都市で持続可能な自由を実現するためのすべてを備えている、と強調しています。 ▲ミラノ・スカラ座近くの風景を背に走る『Topolino』。フロントフェイスは1957年『Nuova 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)』のイメージを継承しています。 控えめなパワーとスピードには理由が。欧州連合の『ライト・クアドリサイクル』という超小型車規格に準拠しているのです。このカテゴリーは、長年ヨーロッパで主に小さなメーカーが手掛けてきましたが、近年はいくつかの主要自動車ブランドが参入を試みています。超小型車扱いとなることで、『Topolino』もイタリアでは14歳から原付二輪免許で運転が可能です。 ▲おしゃれなインストルメントパネル。最小回転半径は3.6m。 ▲メーターパネルもミニマリズムを貫いています。 車型はクローズドボディと、『ドルチェヴィータ』と名付けられたオープンの2タイプ。『ドルチェヴィータ』はドアさえ持ちません。1960年代の『Nuova 500』や姉貴分である『600』をベースに、数々の外部製作者が手掛けたビーチカーのデザインが反映されています。 ▲クローズドボディ仕様のパノラミックルーフ。『Topolino』はモロッコもしくはポーランドで生産される予定です。 ▲『Topolino Dolcevita』 ▲『ドルチェヴィータ』は1960年代に一世を風靡したビーチカーを思い出させるドアレスのモデルです。 2つのボディタイプともカラーは『ヴェルデ・ヴィータ』の1色。ホイールデザイン、インテリアも1種類と、ラインアップでもミニマリズムが実践されています。 ▲イタリアの220ボルト2.3kW家庭用電源を使って、0%から満充電までの所要時間は約4時間です。 偉大な先代『Topolino』の歴史 “Topolino(トポリーノ)”とはイタリア語で“小ネズミ”を意味します。実はこの名前、1936年にデビューしたフィアットの小型車にも使用されていたのです。正式名は『500(チンクエチェント)』といいます。 ここで疑問を抱く方のために説明すると、実は“500”というネーミングは、この初代『500 Topolino』が最初でした。つまり、今日多くの人が思い描く1957年『500』より前に『500』は存在したのです。1957年『500』を呼ぶとき、あえて“新しい”を意味する“nuova”を加えて、『Nuova 500』とするのは、そのためです。 『500 Topolino』の開発に参画したダンテ・ジャコーザは、後年フィアット史上に残る名設計者となります。でも、実は彼がいたグループは、それまで乗用車をデザインしたことがありませんでした。おかげで、既成概念にとらわれず、シンプルなシャシー(車台)+全体の剛性に貢献するボディワークというアイデアを生むことができたのです。 ▲『500 Topolino』は1936年にデビューしました。 では、なぜ“小ネズミ”なるニックネームが付いたのか?答えは、そのデザインにあります。初期型である『500 Topolino A』および、それに続く『500 Topolino B』のラジエターグリルは、1930年代に流行した流線型を巧みに取り入れた形状でした。下に向かって三次元に絞られており、あたかも小ネズミの顔をイタリア人に連想させるデザインでした。2人乗りに割り切ったボディ形状も、すばしっこく走り回るネズミに似ていたことは想像に難くありません。 ▲『500 Topolino A』。後輪の後ろを覗くと、カンチレバー方式のため、板バネが後方まで繋がっていません。 […]