俳優、彫刻家、コメディアン、そして父親と多彩な顔を持つ片桐仁さん。
最近『500X』を家族に迎え、現在フィアットのキャンペーン「#MyFirstFIAT」に出演中の片桐仁さんへのインタビュー第2弾。今回は、アートとの出逢いやこだわり、そして俳優の仕事について、根掘り葉掘り伺いました。
現在、不条理アート粘土作品展「ギリ展」を全国で順次開催している片桐仁さん。俳優としてはもちろん、アーティストとしても積極的に活躍している片桐さんに、アートとの出逢いについて聞いてみました。
「僕は、とても「不用意な子」でしたね。まあ、ウチの子供みたいな感じで(笑)。
例えば、田んぼに自転車ごと突っ込んで泥だらけになったり。そんな僕が子供の頃に好きだったのは、ウシガエル捕まえたり、ザリガニ捕ったり、虫捕りしたりすること。とにかく、外で遊んでいましたね。
あと、子供の頃から絵を描くのは好きでしたね。粘土遊びとか、木を彫ったりとか、そういうのも好きでした。
なかでも、とても印象的だったのが幼稚園の時。たまたま描いたロケットの絵が賞を獲って、郵便局に貼り出されたんです。それから、小学1年生の時に描いたニワトリの絵が金賞を獲ったり。唯一、周りから褒められるのが絵だったので、子供心に「それだけ、がんばろう!」と思ったのを、いまでも憶えています」
自身の作品にさまざまなアイデアを盛り込んでいる片桐さん。そんなアートを生み出す上でこだわっているポイントは、何かあるのでしょうか?
「僕が作品を制作する上で大切だなぁと思っているのは、笑いとアート性。現代美術の作品の中にも、クスッと笑えるものって結構あるじゃないですか。だまし絵とか。そういうのが好きなんですよね。
日常的に使う物に粘土を盛って作った僕の作品には「使いにくい!」っていう笑える要素があると思うんです。しかも、それを「持ち歩く」っていうのもアートだと思いますね。
ときどき、子供の同級生に「なんで、こんなの使うの?」って言われることがあるんですけど、そんな時には「なんで、そんな普通のこと言うの」って返しています(笑)。
僕の場合は、作品自体が名詞みたいなものですからね。
そもそも、粘土作品を作り始めたのは、雑誌の連載がきっかけ。気がつけば19年間で約180作品も制作しました。
「あの時、こうだったなぁ」とか「楽屋で作ったなぁ」とか思い出も含めて、全部思い入れはあるんですけど、評判が良かったのは1作目の「俺ハンテープ台」。
これを初めて見た時、連載誌の担当者が「毎月こういうのを作るんですか?」って、とても驚いていました。編集部の人たちにも評判が良かったので、初めの頃は自分の顔ばっかり作っていましたね。
あと、スゴく憶えているのは「カエルちゃん」。この時は、モーレツにカエルが作りたくて、ガラケー(携帯電話)をベースに作っちゃったんですよね。これを首から下げてたら「なんで、首からカエル下げてるんだ?」とか言われて。「いや、電話だから携帯しないと」って。これが、役者仲間にものすごく評判が良かったんです。
獅子舞の顔をしたインスタントカメラ「マイしし」も好きですね。これは、カメラマンさんがフード被っている時、獅子舞みたいになるっていう。そういうイメージで作りました。これで使ったインスタントカメラは、嫁さんから奪ったものなんですよ(笑)。
初期の作品は、クリーチャーっぽいものが多かったんですけど、この頃からカエルとかカニとか、実はシンプルなものが意外と面白いんだなと思い始めましたね」
美術大学出身の片桐さんには、さまざまな分野で影響を受けたアーティストがいるとか。どんな人たちに影響を受けたのか?詳しく聞いてみました。
「影響を受けたアーティストは、たくさんいますね。
フィギュアの世界だと、造形作家の竹谷隆之さん。竹谷さんが作るクリーチャーとかが好きだったので、同じ粘土を買って、同じヘラを使って。最初はマネしてましたね。
ある時、幸運にもご本人にお会いする機会があって、工房にもお邪魔したんですけど、いまでも同じ道具使っているんですよ、何年も、何年も。もう、感激でしたね。
それと、サルバドール・ダリにもとても影響を受けました。初めてダリの作品を観たのが、なぜか彫刻展だったんですね。 本当は絵が見たかったのに、彫刻ばっかりで。だけど、そこで観た「象(別名:宇宙象)」っていう作品の立体版があったんです。これは、衝撃的でしたね。
ダリの絵って、めちゃくちゃスゴいじゃないですか。「引き出しのあるミロのヴィーナス」とか、立体になってもスゴく良くって。実際には、ダリの絵を観たことがなかったんだけど、 何かうねりのようなシュールレアリズムのエネルギーが生で感じられて、ある意味絵よりスゴいなって思って。絵も感動するけど、立体って面白いなぁって。ダリは、そんなきっかけをくれたアーティストです。
あとは、ロン・ミュエック。人間そっくりの作品が、ちょっと不気味で。大きかったり、小さかったり、写真で見るとサイズがわからないんですけど、とにかくインパクトが強い。例えば、4メートルくらいある胎児の作品とか。ああいう作品を観ると、本当にスゴいなぁと思いますね。
そうそう、実は僕、ゴッホが好きで油絵がやりたかったんです。
なかでも、ギュスターブ・クールべっていう画家が好きで、僕もスカンブルっていうペインティングナイフを使ってグイってと色を重ねる技法で、キャンバス上で油絵具を混ぜたりして。
でも、だんだん厚塗りになって、左官屋さんみたいになってきちゃって。先生から「お前は筆を使え」って言われたりして。もう、漆喰(しっくい)を塗るみたいになっていましたね。周りからは「もう、それ彫刻じゃん」みたいに言われたりしてました(笑)」
子供のように目を輝かせながら、楽しくアートの話をする片桐さん。ところで、片桐さんにとって、アートとは一体どんな存在なのだろう?
「アートっていう言葉が持つ世界が広すぎて、人によっていろいろな解釈があると思うんですよね。僕にとってアートは、とにかく“とっつきやすいクリエイティブ”。
大人から子供まで笑える。で、クイズみたいに「これは何だ?」ってなる面白さがある。持ち歩く面白さもあるし「それ何?」って興味を持ってもらえる不思議さもある。
いつも持ち歩いている作品は、僕にとっては、いわばコミュニケーションツール。 初対面の先輩の役者さんって、正直どう喋ったらいいのかわからないじゃないですか。でも、向こうから「それ、気になるんだよねえ」とか言われて。それがきっかけで、会話が弾んだり。そういうきっかけを作ってくれる、メリットもあるんですよ。
ときどき、子供たちの粘土教室をするんですけれど、その時もうまく作ろうとしなくていいと、子供たちに言っています。うまく作れなくても「何か」になる。「言葉にならない何かがあるはずだから」ということで作ってもらっています。
泥んこ遊びの延長というか、触って感じること自体が大事かなと思っています。
アートって、その人のライフワークだったり、人生を映し出すものだったりする。いろいろな素材を使って、いろいろな作品を作る人は、いろんなことを考えている。
日常を生きる中で、新しい考え方に出逢えるきっかけになると思うんです、アートって。いろんなことを楽しめる、面白がれるきっかけを教えてくれる、そんな気がします」
多彩な活躍の中でも、役者としての活躍がめざましい片桐仁さん。コミカルな演技はもちろん、クールな役もこなす「役者・片桐仁」は、どのように仕事と向かい合っているのか?その思いを聞いてみました。
「おかげさまで、役者の仕事を中心に、いろいろなお仕事をいただいているのですが、気がつけば、僕はどこに行っても楽しもうとしていますね。
いただいた舞台のお仕事が新作だったりすると、初めは台本がなかったりすることもあるんですけれど、そんな状況も面白がれたり。
ドラマとか映画も、それぞれ魅力があって、とても楽しんでいます。1カットにかける熱量だったり。「ああでもない、こうでもない」と、みんなでギリギリまで試して、監督に相談したり。出演者やカメラマン、スタッフの間で「こうしましょう!」と決まったときのチームワーク感が面白いですね。あと、他の俳優さんとの絡みやアドリブなど、いろんなことを教わるきっかけになるので、どんな現場でも発見がいっぱいです。
なかでも、舞台はちょっと特別かな。僕のタレントとしてのキャリアも舞台で始まったので、やっぱり生のお客さんの前で演じる、あの緊張感とか、毎日同じことしていても何か事件が起こる感じとか、ダイレクトに快感を得られるとか。舞台って、そういうよろこびがありますよね。カーテンコールで拍手とかもらうと、いまでも「わーっ!拍手もらってる!喜んでもらえてるんだ〜!」って気持ちになったりします」
マルチな才能を発揮する片桐仁さん。プライベートに仕事に大忙しの片桐さんが、ココロに抱いている夢は何なのだろう?
「そうですねぇ、美術館で粘土作品の個展をするっていうのが夢ですね。
いま開催している「ギリ展」では、作品を見てもらうことをテーマに展示しているんですけど、美術館となるとちょっと違う。現代美術的なインスタレーションとか、美術館ならではの展示方法とか、いろいろ考えますね。発注すれば大きい作品が作れるかなぁ、とか。
“自分はこういう者だ!”って、凝り固まっていた20代や30代だとしたら、いまはいろんな人からいろんなことを教わる年代。実際、そういうことが多いですね。
今後も、個展をやっていきたいし、俳優の仕事もやっていきたいですね。
これからも、常に新しいことに挑戦する気持ちを忘れないようにしていきたいなぁと思っています」
仕事にアートに、エネルギッシュに打ち込む片桐仁さん。テレビや舞台でマルチに活躍する片桐さんの独創的な存在感、新たに作られるアート作品、そして『500X』と過ごす毎日から、ますます目が離せません。
いつも、応援ありがとうございます。ファンのみなさんは、本当にありがたいです。
「がんばります!」としか言いようがないですけど、これからも応援お願いします。
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