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CULTURE

人気ワインストア・三軒茶屋『Però』に聞く、イタリア産ナチュラルワインの楽しみ方

近年、人気を集めているナチュラルワイン(ヴァン・ナチュール)。サスティナビリティへの関心が高まるなか、奥深いワインの世界を楽しむうえでも“自然派”であることが大きなトレンドとなっています。そんなナチュラルワインの魅力を探るべく、今回は三軒茶屋でイタリアのナチュラルワインを扱うワインストア&スタンド『Però(ペロウ)』へ。イタリアへの留学経験があり、現地の文化やお酒の楽しみ方をお店づくりに反映している同店ストアマネージャー・森田雅人さんに、小規模ワイナリーで手間と時間をかけて造られるイタリア生まれのナチュラルワインについて、フィアット『500』をイメージしたオススメの3本を添えて、その魅力を解説していただきました。   イタリアの文化を発信するワインバー『Però』     三軒茶屋の人気イタリアン『Bricca(ブリッカ)』の姉妹店として、2017年にオープンしたワインストア&スタンド『Però』。同店のコンセプトは、ズバリ“飲めて、買える”。店内のウォークインセラーにズラリと並べられた約300〜400種類・800本以上のワインは、そのほとんどがイタリアの小規模ワイナリーでつくられたもの。土壌や気候はもちろん、ワイナリーごとに受け継がれる伝統や造り手の人柄さえも味に表れる、いわばクラフトワイン。そんな個性豊かな無二の一本と出会える『Però』は、一度知ると足しげく通いたくなるワイン好きのためのお店です。     イタリア語の接続詞“しかし”を意味する“Però”。その由来について「言い訳をするときに使う“Però”は、ガス抜き上手なイタリア人らしい言葉。日本人ももっと言い訳しながらでもラクに生きていいし、少なくともこのお店では気楽に過ごしてほしい」と語るのは、ストアマネージャー・森田雅人さん。 同氏は、デザイン事務所を退社しイタリアンの世界に飛び込んだユニークな経歴の持ち主。都内のレストランに入社し、2012年イタリアを縦断。2014年、さらに単身留学。帰国後、南青山の人気店でソムリエを務め、2017年『Bricca』に入社。その後『Però』開店にイチから携わり、現在は自身が現地での生活で体感したイタリアの文化やワインそのものの魅力を生産者に近い立場で発信し続けています。   ▲『Però』ストアマネージャー・森田雅人さん   「ワインは、ブドウで9割が決まると言われています。ただし自然が相手ですし、地質の違いや日照条件なんかでブドウの特徴が変わってきます。加えて、醸造の方法で同じブドウを使っていても味わいが変化する。うちで扱っているのは、ほぼ家族経営の小規模な生産者が造ったもの。だからこそ、ブドウそのものの味だけでなく、年ごとにスキルの向上や苦労と成功までも顕著に表れる。そこがクラフトワインならではの魅力だと思っています」   3つの“待つ”を経てつくられるイタリア産ワイン     近年トレンドとして注目されている『ナチュラルワイン(ヴァン・ナチュール)』。一般的には、ぶどうの栽培方法から醸造工程にいたるまでを可能な限り自然に則ったかたちで造られるものとして『ビオワイン』や『無添加ワイン』も同様に人気を集めていますが、実のところ“自然派”の定義は明確に定まっていないのだとか。 「ナチュラルワインとそうではないものの違いは、かなり曖昧です。畑で使われる農薬や添加物の有無など、ナチュラルの基準もメーカーがどう主張するかによるところがあります。国ごと州ごとにも規定が変わってきますし、人によっても捉え方が変わりますよね。近年若い生産者の参入による多様化によってさらにナチュラルワインというワードが曖昧になっていき、いずれ淘汰されていくと思っています」     『Però』で取り扱うものは、ほとんどがナチュラルワイン。そして、イタリアワインには他の国で造られるワインとは大きく違った特徴があると森田さんはいいます。 「たとえば世界的に認知度の高いフランスのワインは、需要に併せて出荷スピードが重視されています。その反面、イタリア産ワインの特徴を挙げるとするなら、3つの“待つ”。まず1つ目は、原材料であるブドウがフルーツとして完熟するのを待つ。これは一番大事なことですし、彼らにとっては伝統であり当然のことなんです。2つ目は、醗酵し切るのを待つ。年によってブドウの糖分が違うので、かかる時間も変わってきます。3つ目は、熟成させ飲み頃になるまでボトリングを待つ。いま市場に出荷されているものだと2020年のものがリリースされはじめていますが、イタリアワインの場合2010年前後のものが今年出荷されることもザラにあるんです」 受け継がれる伝統と自然の摂理にすべてを委ね、じっくり時間をかけて造られたイタリアのナチュラルワインは、おうちでゆっくりと楽しむのがオススメ。取り扱いについては、ナチュラルでなくとも基本的に数日ワインセラー(なければ冷蔵庫でも)で寝かせるとより美味しく飲めるというのがワインの基本ですが、森田さんは「計画的に置いておければベストですが、すぐに開けても大丈夫。イタリアワインはしっかり時間をかけているからこそ、いつ開けても飲みごろです」と太鼓判を押します。     「のんびり造られたイタリアのワインは、のんびり飲むのが一番。たとえば、ワインが冷えすぎているなと思えば少し放っておけばいいんです。温度変化とともに味わいの変化を楽しむ余裕があるといいですよね。グラスや温度帯、一緒に食べるものによって印象がさまざまに変化するのがワインの面白いところ。いろいろな種類をたくさん飲むことももちろん楽しいのですが、一杯飲んで知ったつもり一本飲んでわかったつもりになるのはもったいない。いろんな飲み方を試しながら、ひとつのワインとぜひじっくり付き合ってみていただきたいです」   フィアット『500』をイメージした3本のワイン     これまで、訪れるお客さまとワインとの出会いをつないできた森田さん。人それぞれ好みや要望が異なるなか、ワインを勧めるうえで特に大切にしていることは、飲むシチュエーションや誰と飲むのかなど、意外にも味以外の部分だといいます。     「ワインの情報というものはラベルに記載されているんですけれど、残念ながらそこから味はわからないんですよね。ですので、こちらからオススメするときは出来るだけ求めているもののヒントを会話から引き出すようにしています。たとえば、キャンプに持っていくというなら常温でも美味しく飲めるものを勧めたり、プレゼントであればどんな方に贈られるのかを伺ったり。贈る方ご本人が好きなものをプレゼントするのが喜ばれる場合もありますよね。コミュニケーションの中で、その方が求めるものを伺ったうえで自分の引き出しからオススメの一本を選ぶようにしています」     今回は森田さんが、フィアット『500(チンクエチェント)』をイメージしたイタリア生まれのとっておきの3本をリコメンド。それぞれの特徴や味わいと併せて、赤・白・シードルそれぞれのワインによく合うフードの取り合わせのアイデアも伺いました。森田さん曰く、ペアリングフードは味のマッチングではなく“口の中の心地よさ”がポイントになるそう。ぜひ、おうちで楽しむ際のご参考に!   <Asinoi Barbera d’Asti 2016/Carussin(アジノーイ バルベーラ ダスティ/カルッシン>     イタリア在住の時、働いていたワイナリーの逸品。心地の良い酸味の奥に完熟ぶどうのフルーティさも感じられる赤ワインです。「日本で誰よりもこのワインを飲んでいる自信がある」というのは森田さん談。まったりと口溶けのいいチーズやチョコレートと合わせることで、より深い旨みを堪能出来るのだそう。   <Lamoresca Bianco 2018/Lamoresca(ラモレスカ・ビアンコ/ラモレスカ)>     […]