fiat magazine ciao!

株式会社キャライノベイト

LIFESTYLE

サステナブルな活動から生まれた日本の香りと地域貢献

初めてフィアットと走り出すオーナーの物語を描くプロジェクト「#MY FIRST FIAT」の最新作の中で「MEGURIWA(めぐりわ)」の仲間として登場する「株式会社キャライノベイト」代表の清水篤氏。 各地域と深い関わりを持ちながら香りを通じて地域貢献活動をする清水氏に、これからの日本の伝統・文化、そしてサステナブルな未来についてお話を伺いました。       日本全国を周って知った伝統工芸の厳しい現状   −「キャライノベイト」を設立したきっかけを教えてください。   私たち「キャライノベイト」は、地域や伝統、そして文化など日本ならではの特徴をフィーチャーしながら情報発信をしていくスタイルで、日本の香りを用いたモノづくりをしている会社です。 香木の中でも、特に香りの良いものを伽羅(きゃら)と呼ぶのですが、江戸時代には良い物の総称として伽羅という言葉を使っていました。そうしたことから、良い物をより良くする、イノベイトしていくことを目的に「キャライノベイト」と名付け、13年前に会社を設立しました。     私は、以前香りの雑貨を扱うメーカーで営業職として働いていました。その際、日本全国を周っていたのですが、そこで日本のものづくりや伝統工芸が、とても厳しい状況になっていることを知りました。私自身、日本の文化はとても誇れるものと思っていることもあり、この状況をなんとかしたいという気持ちが日に日に大きくなりました。なかでも、日本独自の香りには特別なものがあるので、それを武器として日本のものづくりと連動させた活動をしたいと思い、独立しました。       これからは、モノづくりよりコトづくり   −「キャライノベイト」の活動についてお聞かせください。   私たちキャライノベイトは「人が馨る世の中へ。」という言葉をスローガンとして、日本の香りを用いた様々な商品の開発をしています。「馨る」という言葉には、人の善い行いという意味もあるので、いろいろな人の個性や、その人の好きなことが誇れるような時代になってほしいという思いから、この言葉を肝として活動しています。 また、商品の中にWANOWA(わのわ)というシリーズがあるのですが、なかでも最初に採用したのが、石川県能美市の国造ゆずでした。果汁を搾った際に廃棄される皮を使って、精油やハーブウォーターという香り成分を抽出し、化粧品などを作りました。そして、売上の2%をその地域に還元するシステムを構築しました。売上の2%を寄付することによって、地域の皆様にも、お客様にも喜んでいただけましたし、この活動を通じて多くの方々に能美市のゆずを知ってもらうことができたため、地域に貢献できたかなと思っています。     さらに、能美市ではゆずの木を植樹するイベントも行いました。地元の人たちも地域の特産物であるゆずのことをあまり知らない状態だったので、私たちではなく地元の小学生に植樹をしてもらいました。地域の方々に、自分ごとというか地域のこととして捉えていただき、自分の住んでいる地域や、そこに根付いている伝統や産業を誇りに思ってもらえるよう、このイベントを開催しました。 これからは、モノづくりの時代ではなく、コトづくりの時代だと思っています。こういう人が作っている。こういう気持ちで作っている。それが商品になっているから買ってもらえる。志や想いに共感して物が売れていく。そういう流れがより強くなると思っているので、これからもそうした活動をドンドンやっていきたいと考えています。 他の国だと戦争などで文化的なものが破壊されてしまうことが多いのですが、日本は伝統や文化がたくさん残っている稀な国だと思います。そのため、こうした貴重なものを決して絶やさないよう、今後も関わっていきたいと思っています。       香りを通じて実現する地域貢献の新しいカタチ   −香りに着目した理由を教えてください。   嗅覚(匂い)は、五感の中で唯一、脳に直接伝達される感覚なのです。つまり、人生は香りと連動する。そういうところが面白いと思い、追求したことが香りに着目した理由ですね。 今回、撮影でお伺いした加子母村のひのきはもちろん、それ以外にも様々な日本の香りがあります。私は調香師として香りを作っているので、そうした日本の香りをそのまま使うこともありますが、数ある香りをブレンドしてオリジナルの香りも作っています。 香りを作ることって、作曲や絵を描く感覚に近いと思っています。香りの被せ方や香りの変化を表現していく。そういった意味でも、感性的なものにすごく近いジャンルかなと感じていますね。     「#MY FIRST FIAT」の撮影を行った岐阜県中津川市加子母村は林業が盛んで、なかでもひのきが有名な地域です。私たちが手掛けているブランドWANOWAのハンドクリームやミルクローションに使用しているひのきの精油やハーブウォーターは、この地域のものなのですが、その材料はもともと廃棄する枝葉の部分。いままで廃棄していた材料を有効活用して、製品を作っていくこともサステナブルのひとつのカタチだと思いますし、加子母村のひのきを知ってもらう機会にもつながる。そんな地域貢献の新しいスタイルを、さらに確立していけたらと思っています。       MADE IN JAPANの香りを活かした上質さへのこだわり   −製品開発のポイントを教えてください。   製品に対しても、モノ売りではなく、コト売りであることにこだわりを持っていますね。例えば、環境に配慮したパッケージにしたり、開封した際に新鮮な香りを楽しんでいただけるようアルミチューブを使用したり、岐阜の職人が作った部材を採用したり、細かな部分にもこだわっています。製品に関わる人たちの気持ちを汲み取り、ひとつの製品の中にいろいろなストーリーが詰まったモノづくりをしています。 […]