「世界中の子どもたちに、平等な教育を届けたい」
そんな想いのもと、2018年11月12日に多くの人たちが赤坂アークヒルズ・カフェに集まりました。
主催したのは、「子どもの教育が世界を変える」という理念を掲げ、グローバルで活動を展開する国際NGO「ルーム・トゥ・リード」。教育の機会を得られず、読み書きのできない世界中の子どもたちに向け、学習機会を与える等の活動を行っています。
7億5000万人。この数は、何を表していると思いますか?
世界には文字の読めない人、つまり文盲者が、今もなお7億5000万人いるといわれています。これは、日本人口の約6倍もの数です。彼ら彼女たちは文字が読めないゆえ、貧困の連鎖から抜け出せずにいます。一方で、もしも貧しい国に産まれた子どもたち全員が文字を勉強し、学校を卒業できたら、1億7100万人が貧困から抜け出せるともいわれているのです。
文字を勉強しないことでおこる経済損失は、世界規模で年間、1兆2000億ドルと算出されています。また、文字が読める母親のもとに産まれたら、子どもが5歳以上まで生き残る確率は50%といわれています。
世界の文盲人口のうち、2/3は女性です。ルーム・トゥ・リードでは、さまざまな開発途上国において、読み書き能力の育成と、教育における男女格差の是正に重点を置いたプログラムを通して、教育の促進と実現を目指しています。
例えば、支援が必要な国々に図書館を建設し、教師や司書のトレーニングを行います。そこに通う子どもたちは、2年生が終るころには皆、文字がすらすらと読めるようになっているのです。
この日、赤坂アークヒルズ・カフェで開催されたレセプションには、FCAジャパン マーケティング本部長ティツィアナ・アランプレセも参加し、乾杯の音頭をとりました。彼女は、冒頭の挨拶でこう話しました。
「フィアットでは、世界がよくなるための活動“Share with FIAT”の一環として、子どもや女性が幸せに生きることのできる社会の実現をサポートしています。そのためには、まず、未来を担う子どもたちへの教育が重要だと考えています。ぜひ、共にこの活動をサポートし、盛り上げていきましょう」
今回、初来日した新CEOギータ・ムラリさんによる挨拶では、心温まるストーリーが紡がれる一方、統計学者出身の彼女にふさわしく、明確なデータや数値が盛り込まれた内容に、誰もが引き込まれました。
「開発途上国の子どもたちが学校で勉強を続けることができれば、文盲と貧困の連鎖を一世代で断ち切ることができます。なぜなら、私自身がその実例であるからです。
児童婚の風習が残るインドで生まれ育った私の母は、とても賢かったため、13歳で高校を卒業し看護師になりました。その後、アメリカに渡り、統計学者として博士号を取得したのです。母が教育に大変熱心だったため、私への教育も当たり前のように与えられてきました。しかし、私の人生の方向性が変わったのも、今この活動ができているのも、母がアメリカに渡るという決断をしたからなのです」
「これは、私たちが生きているあいだに文盲をなくす、という大胆なゴールのために、解き放たれた可能性が活かされているというひとつの大きな実例だと思います。
無理難題のように聞こえるかもしれませんが、確実に実現できるゴールです。これまでも私たちは、子どもたちに教育の機会を与えてきました。現地の政府や他のNGOと協力することで、活動の場を広げています。
実際、2000年から2018年末までに、1660万人の子どもたちに教育の機会を与えることができました。ですから、この文盲という難題に対して、それを過去のものにすることができると信じています。
子どもの教育が世界を変えるのです。私は、皆さんと一緒なら世界を変えることができると信じています」
このゴールの実現のため、ルーム・トゥ・リードでは毎年この時期に、「Action for Education(アクション・フォー・エデュケーション)」を合い言葉に、ひとりひとりが問題意識を持ち、行動へとうつすためのキャンペーンを開催しています。
会場に集まった、ルーム・トゥ・リードの理念や活動に賛同する皆さんは、ティツィアナやギータさんの言葉に、熱心に耳を傾けていました。
このレセプションを通して、自分たちが支援している団体の活動内容を詳しく知ることができると同時に、同じ想いでつながり合う支援者同士、情報交換をしたり、ネットワーキングをしたりと、会場は和やかな話し声や笑いに包まれ、終始、温かな雰囲気でした。
10年前からルーム・トゥ・リードを支援し続けている今西由加さんは、こう話します。
「10年前、ジョン・ウッド(ルーム・トゥ・リード創設者)の本に出合い、彼のパッションに大変共感しました。ちょうど、何か社会貢献をしたいと思っていたところでしたので、それ以来、サポートをしています。
支援者皆さんの志が高く、さまざまなシナジーが生まれるので、私にとってもすごく刺激になりますし、12歳の子どもにとっても大変良い影響があると感じています」
同じく、10年以上前にジョン・ウッドの本を読み、この現状を何とかしたいと考え、支援をはじめたという松本秀幸さんは、「自分のできることを、限られた時間のなかでし続けてきました」と話します。支援者ひとりひとりが、今、それぞれにできることをする。それこそが長く続けるための重要なポイントなのだそうです。
“旅するピアニスト”こと永田ジョージさんと、ボーカリストのレイチェル・フクシマさんは、ナット・キング・コールの名曲『Smile』をデュエット。演奏がはじまると、会場の熱気は一気にピークへ。美しく繊細なピアノの旋律と、透明感溢れるボーカルに、会場は感動の渦に包まれました。音楽を通じて、世界や人との繋がりを実践している永田さんは、6年ほど前からルーム・トゥ・リードを応援しているのだそう。
FCAジャパンのティツィアナは、フィアットがルーム・トゥ・リードをサポートする理由についてこう言います。
「私たちは、share(シェア)とgive back(お返し)という気持ちでサポートしている」のだと。
ルーム・トゥ・リードとフィアットが目指す “自分の幸せだけでなく、みんなの幸せを求める時代”を実現するためには、今こそ、私たちひとりひとりがアクションするときなのではないでしょうか。
ひとつひとつのアクションは小さくとも、それぞれの「一歩」は、大きな意味を持ちます。
この素晴らしい活動が、さらに社会に広がることを願わずにはいられません。
2017年のルーム・トゥ・リードイベントレポートはこちら
Text:富岡麻美
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