花という意味のイタリア語「Fiore」の名を冠した限定車、500 Super Pop Fiore(チンクエチェント スーパー ポップ フィオーレ)のイラストを手掛けたのは、鳥取県在住のイラストレーター伊吹春香さん。レトロな雰囲気を基調に、可憐さや儚さ、切なさが詰まったオリジナリティのあるイラストを描く伊吹さんに、ご自身のクリエーションやフィアットとのコラボレーションについてお聞きしました。
— 伊吹さんがイラストレーターになったきっかけを教えてください。
子どものころから絵に携わる仕事がしたいと思っていました。最初は漫画家になることが夢だったんですが、中高生くらいでイラストレーターという存在を意識し始めて……。
初めての仕事は、20歳のときに知人の梨農家さんに依頼されたパッケージシールのデザインでしたが、正直仕事というよりお手伝いをするという感覚でした。当時は自分が本当にイラストレーターになれるなんて思っていなかったので、制作環境も整えておらず、アナログで描いた絵をwordでデザインして、家のコピー機で印刷した紙に両面テープと撥水シートを貼ってシールにするというものすごくアナログなことをしていて(笑)。でも今思えば、あれが最初の「イラストでお金をいただく」という行為でしたね。
その数年後、『イラストレーション』という雑誌の誌上コンペ“ザ・チョイス”で漫画家の江口寿史先生が審査員の際に応募、準入賞をいただき、それがきっかけで本格的にイラストの仕事をしたいと思うようになりました。
といっても、鳥取の広告代理店でDTPデザイナーとして働きながら副業でときどき依頼を受けて絵を描くような生活でしたが、去年思い切って退職。東京のビッグサイトで行われた「クリエイターEXPO」に出展して、イラストレーターとして本格的に活動を開始しました。
— イラストレーターとして、どのようなものからインスピレーションを得ていますか?
人と自然だと思います。
人の日常の営みを見るのが好きで、ふと目に留まった家の窓辺が植物できれいに飾られていたり、窓を開け放して玄関先を掃除している人を見たり、夕飯時に包丁のトントンいう音が聞こえたり、朝友達が化粧をしているところを見たり……そういうものに興味があって、見ているだけでわくわくしてきます。
また、自然のなかにある花や木の色がきれいだったり、空が広く感じたり、風が気持ちよかったり、ふといい匂いがしたり…そういう自然の美しさを感じるときも絵を描きたくなります。
— 鳥取で活動されていることはご自身のクリエーションに影響を与えていますか?
やっぱり自然がきれいなところでしょうか。人が少ないこともあって静かで、穏やかな感じです。そんな素朴な感じが絵柄にでているのかもしれません。海も山もあって、温泉もあって、刺激はないけど癒やしスポットは沢山あります。
昨年鳥取の定住にまつわるポスターの絵を描かせていただいたのですが、そのときはキャッチコピーも考えて、鳥取の良さとはなんぞやと考え直したんですけど、改めて自分はここの風土がとても好きなんだなぁと。もはや意識レベルではなく、毛穴レベルで無意識の内に影響されているんだと思います。
あと、たまに「都会への憧れを感じる絵」だと言われることがあるので、田舎にいることで“都会”という未知への憧れを持ち続けることができるのかもしれません。
— レトロな雰囲気の女の子を描かれることが多いですね。
明治・大正に活躍した竹久夢二や、現代の林静一さんなどの抒情的な絵の世界観が子どものころから好きで、自分もこんな絵を描きたいなぁという思いからだんだんと影響されてきました。かわいいな、おしゃれだなと反応するものがレトロな雰囲気のものが多いので、自然とそうなったんだろうなと思います。
— イラストレーターとして大切にしていることは?
当たり前ですが、自分の絵柄は保ちつつ、お客さまのご要望にしっかり応えていくことが大事だなと思っています。言われたままのことをするのではなくて、自分なりの解釈やエッセンスを加えていった方が喜んでくださることが多い気がするので。
正直プレッシャーもありますしまだまだ未熟な部分もあるのですが、そこは逆にあまり意識せずに楽しんで描いた方がいい結果になるように感じています。この心がけを忘れずにやっていきたいです。
あと、イラストとは全く関係ないようですが、日常生活を楽しもうとすることも大事な気がします。料理や掃除、洗濯とか……自分なりの「美」を意識しながら取り組むと気分も上がるし、結果的にやる気も出てくる気がします。
— 今回、500 Super Pop Fioreのイラストを依頼された時はどのように感じましたか?
とてもビックリしました! もともとは同じ鳥取で、独自のフィアット専用シフトノブを製作されているラフィータ(La FIT+a)さんというメーカーのお仕事で“フィアットと女の子”という組み合わせの絵を描いていたんですが、それをSNSで見ていただいたのがきっかけで今回のお話へとつながりました。こんなことが本当に自分の身におこるのかと最初は信じられませんでした(笑)。私が昔から好きなお花のモチーフ、そして女の子の絵を描かせていただけて、こんなに幸せなことはないなぁと感謝しかありません。
フィアットは、以前から鳥取の街中でたまに見かけるたびに、かわいいな〜、フォルムもレトロな感じでいいな〜と憧れていましたので、こんな風に関わらせていただいてとても嬉しいです!
— 3人の女の子は、それぞれどのようなイメージで描きましたか?
今回、500 Super Pop Fioreはイタリアンガーデンがテーマということで、白=ジャスミン、緑=グリーンカーネーション、赤=ゼラニウムとそれぞれのお花を設定して描かせていただきました。
白のジャスミンの女の子は、花言葉の「温和」から、優しくてほんわかした表情や雰囲気に。この女の子は常に微笑んでいて、滅多に怒らないタイプ。でも好き嫌いはハッキリしていてちょっとわがままな部分もある子、というイメージを勝手に作り上げています。
緑のグリーンカーネーションの女の子は、「癒し」という花言葉から落ち着いた雰囲気の知的な女の子をイメージしました。おそらくこの子の家はとても洗練されていて、かなりくつろげる空間を作り出しているんじゃないでしょうか。口数は少なめでポーカーフェイスですが、実は思いやりがある子です。
赤のゼラニウムの女の子は「君ありて幸せ」という花言葉から、そんなことを惜しげもなく言えるような女の子はきっと素直で情熱的な女の子だろうなというイメージで、明るくて情熱的な雰囲気を出しました。おそらくすごくポジティブで細かいことは気にしないタイプだと思います。たぶん声が大きめです。
といった感じで、絵には直接関係ないような設定が自分の中にはありました。ぜひ、それぞれの女の子が500に乗って過ごす日常をご想像ください。
— こだわったところ、見てほしいところは?
花がテーマということもあり、花の描き方にこだわりました。背景にパターンとして使用されるという前提だったので、目立ちすぎずかつ単調にならないよう一つずつ向きを変えたり、大きさを変えたり…植物らしさを出すためにわざとラインをくずしてみたり。元々植物の絵を描くのは好きだったので、とても描いていて楽しかったです!
また女の子のイラストは500の写真と掛け合わされるデザインだったので、ポーズを決めるのに苦労しました。一人一人の性格の違いが仕草や表情で表現できるよう心がけたので、そういったところも意識して見ていただけたら嬉しいです。
— フィアットにはどんな印象がありますか?
とにかく、おしゃれ!フィアットは本当に外観も内装もおしゃれで可愛くて、以前から気になっていました。とくに500のあのシルエットが好きです。何とも言えない丸み、ムダなものがないシンプルな美しさ、コクのある感じの色味……本当に憧れです。特にイラストを描かせていただいてからはなぜか街中で見かけることが増えて、え、あんな色もあったの? あ、あのクルマはフィアットじゃない!? と発見する度に楽しんでいます。
また、先ほどお話にあったラフィータさんの愛車の500には乗せていただいたことがあります。内装がとてもかわいくて、インストルメントパネルの色がボディーカラーに合わせてあるのが統一感があってすごくいいなぁと思いました。コンパクトで小回りも利きそうなのに、中は広々してて…羨ましい気持ちでした(笑)。
— フィアットに乗るならどの車種に?
500C(チンクエチェント シー)です。天気のいい日にオープンカーで運転したら本当に気持ちいいだろうなぁって。ひとまず地元の山陰海岸沿いや大山にドライブに行きたいです!
色はボサノバ ホワイト/レッド、またはパソドブレ レッド/ アイボリーのどちらかで非常に迷います。全般的に500の色味の感じが本当に好きなので、どれにしてもお気に入りになるとは思いますが。
こんな車に乗れたら毎日のお出かけが本当に楽しくなりそうですね。近い将来愛車として迎えられるよう頑張ります!
伊吹春香(イラストレーター)
1990年生まれ、鳥取県出身・在住。東京の短大卒業後、鳥取に戻り広告代理店でデザイナーとして勤務。2019年4月からイラストレーターとして独立。広告やショップカード、パッケージデザイン等を多く手掛ける。
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