日本からイタリアへ自由に旅行ができなくなってから1年近く経過し、「生活にイタリアがちょっと足りない〜」とイタリアが恋しくなっている方も多いのではないでしょうか。そんな方にお勧めしたいのが、ドライブ中にイタリアソングを聴くこと。イタリア生まれのフィアットを運転しながら、イタリアの名ポップを聴けば、イタリアでドライブしている気分になれますよ!
そんなフィアットでのドライブにお勧めのイタリアソングを選曲したのは、フィレンツェにあるFMラジオ局でイタリア人たちと生放送番組を続けて9年目を迎えるレギュラーパーソナリティーの小林真子です。番組ではアーティストをゲストに迎えることもあり、そのおかげでイタリア人ミュージシャンの知り合いも多い私が、イタリア人たちとあれこれ相談しながら、「イタリアで運転している気分を味わえ、なおかつ日本人の感性にも合いそうな曲」にこだわって選んでみました。
選曲は古き良きイタリア音楽から最近流行の曲まで幅広いジャンルに渡っているので、「この曲、懐かしい!」と思う方や、逆にそんな曲をむしろ新鮮に感じる世代の方もいるかもしれません。聴いているうちに「早くイタリアに行きたい!イタリアでドライブしてみたい!」という気持ちが沸いてくるようなイタリアソングをお楽しみください。
01. Ornella Vanoni – L’appuntamento (1970年)
イタリアの田舎生活を描くドキュメンタリー番組「小さな村の物語 イタリア」(BS日テレ)のテーマソングとして日本ではお馴染みの『L’appuntamento(ラップンタメント=逢いびき)』。耳にした途端、イタリアに瞬間移動した気持ちにさせてくれる曲は、朝の出発にぴったり。
歌っているオルネッラ・ヴァノーニは、ミラノ出身のイタリアを代表するポップミュージックの女王。現在86歳の彼女は、なんとまだ現役歌手なんです!2018年には新曲もリリースし、全国ツアーも敢行しました。全国ツアーでは幸運にもフィレンツェ公演へ行ったのですが、83歳になったオルネッラが熱唱する「逢いびき」は、年齢を重ねた歌声に深みが増していて感動的でした。彼女はおしゃべり好きでコンサートの間ずっと弾丸トークを続け会場を常に沸かせていたのですが、会場からひときわ歓声が上がったのはこの言葉。”Se si é curiosi non s’invecchia!”=「好奇心旺盛なら年を取らない!」86歳現役歌手のオルネッラが言うと説得力がありますね!
02. Takagi&Ketra – L’esercito del Selfie ft. Lorenzo Fragola, Arisa (2017)
キャッチーで耳に残りやすいメロディーとダサかわいいレトロなミュージックビデオが人気を呼び、2017年にメガヒットした『L’esercito del Selfie(レゼルチト・デル・セルフィー=セルフィー軍隊)』。音楽プロデューサードゥオのタカジ&ケトラが人気歌手ロレンツォ・フラゴラとアリサをフィーチャーした曲で、SNSに振り回される現代を風刺している歌詞がユニーク。イタリアの夜の街路をノリノリでドライブ!そんな気持ちにさせてくれる曲です。
03. Lucio Dalla -4 Marzo 1943 (1970年)
イタリアのテノール歌手エンリコ・カルーソーに捧げた『カルーソー』はオペラ歌手パヴァロッティも歌ったことで日本でも有名になった曲ですが、その作曲者であるのがルーチョ・ダッラ。ボローニャ出身で2012年に68歳で亡くなるまでイタリア国内外でシンガーソングライターとして活躍し、イタリアでは知らない人はいないほどの存在。
数多くのヒット曲を出したルーチョ・ダッラの曲の中から選んだ『4 Marzo 1943(=1943年3月4日)』は、朝の日差しの中を運転中にかけたくなるようなほがらかなリズムの曲。レミオロメンの『3月9日』は友人の結婚式の日取りでしたが、こちらの『3月4日』はルーチョ本人の誕生日なんです。
04. Gino Paoli – Sapore di Sale (1963年)
『Sapore di Sale (サポーレ・ディ・サーレ=塩の味)』は、夏の定番名曲。イタリアの夏と言えば海ですが、この曲を聴けば頭の中はイタリアのさんさんと降り注ぐ太陽の光と真っ青な海でいっぱいに。真夏の天気のいい日のドライブでこの曲を流せば、イタリアの海外線を走っているような錯覚を覚えます。
歌っているジーノ・パオリは、北イタリアのモンファルコーネ出身でイタリアポップ音楽の大御所。前述のオルッネラ・ヴァノーニと同い年の86歳で過去にはオルネッラと一緒に歌ってもいますが、彼も現役で活躍中です!
05. Frankie HI-NRG MC – Quelli Che Benpensano (1997年)
イタリアにラップミュージックを広めたラッパーの一人、フランキー・ハイエナジー・エムシー。フィアット本社のあるトリノ出身で、1990年台初頭のイタリアンのヒップホップブームの初期から活躍し、後にブームが広がるイタリアのヒップホップ音楽のパイオニアの一人とされています。社会へのメッセージを歌った『Quelli Che Benpensano(クエッリ・ケ・ベンペンサノ=常識的な人)』のミュージックビデオは、まさに今回のテーマ「ドライブ」!運転中ずっとラップを口ずさんでいるMVですが、ラップもイタリア語だとなんだかイタリアにいるような気分になってくるから不思議です。
06. Matia Bazar – Vacanze Romane (1983年)
タイトル通り「Vacanze Romane(ヴァカンツェ・ロマーネ=ローマの休日)」を楽しんでいる気分を味わえるこの歌。歌っているマティア・バザールは1975年ジェノバで結成され、その後もメンバーを入れ替えながら現在も活動しているイタリアのポップバンド。彼らの曲は80年台に日本でも多くのCMソングとして起用されているので一度は耳にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
07. Paolo Conte – Via con me (1984年)
しわがれ声がしぶく、見た目もとてもダンディーなパオロ・コンテはスプマンテで有名なアスティ出身。元弁護士というユニークな経歴の現代イタリア音楽を代表するシンガーソングライター。私がイタリア人の友人から初めてプレゼントされたイタリアのCDが、このパオロ・コンテだったのですが、イタリア人たちが外国人に紹介したいと思うくらいイタリアで愛され続けているアーティストです。イタリアやフランスで様々な文化勲章も受賞していますが、彼も御年84歳で現役バリバリです!イタリアのミュージシャンたちはいやはや本当にお元気ですね。
パオロ・コンテの名曲の数々の中から選んだ『Via con me(ヴィア・コン・メ=私と一緒に行こう)』は、パオロ・コンテのピアノ弾き語り曲ですが、特に黄昏時から夜にかけてのドライブ中におすすめ。イタリアで、予約しているレストランへ美味しいディナーに期待に胸を膨らませながら向かうようなシチュエーションを体感できます。
08. Il Genio – Pop Porno(2008)
ささやくような歌い方が印象的なイル・ジェニオは南イタリアのレッチェ出身で、2007年ミラノで結成したエレクトリック・ポップデュオ。タイトルが刺激的な『Pop Porno(ポップ・ポルノ)』はデビューシングルで、たちまちイタリアで大ヒットとなりました。イル・ジェニオはカヒミ・カリイの『Una giapponese a Roma(ウナ・ジャッポネーゼ・ア・ローマ=ローマの日本人)』をカバーしているので、オリジナルと聴き比べしても面白いです。
09. Bandabardò – Se mi rilasso collasso ft. Stefano Bollani, Caparezza, Carmen Consoli, Max Gazzè, Daniele Silvestri (2018年)
バンダバルドは1993年フィレンツェで結成のフォーク・ロックバンド。ボーカルのErriquez(エリケス=本名エンリコ・グレッピ)が先月60歳で病気で亡くなるという悲報があったばかりで、コロナ後のコンサート再開を心待ちにしていたファンは悲しみに暮れました。
『Se mi rilasso collasso(セ・ミ・リラッソ・コラッソ=リラックスしたら倒れる)』は、2018年にバンド結成25周年を記念してバンダバルドの1998年のヒット曲『Beppeanna』をリニューアルした曲で、ステファノ・ボッラーニ、カパレッツァ、カルメン・コンソリ、マックス・ガッゼ、ダニエレ・シルヴェストリといったイタリアの人気アーティストたちをフィーチャーしています。イタリアのフェスタでよくかかる曲ですが、そんなイタリアのナイトシーンに紛れ込んでイタリア人たちと踊っている気分になれる曲です。
10. Diodato – Fai Rumore (2020年)
昨年2020年のサンレモ音楽祭(イタリア最大の音楽の祭典)にて「ファイ・ルモーレ(=音をたてろ)」で優勝し、一躍イタリアを代表する歌手の一人に躍り出たのがイタリアの若手シンガーソングライター、ディオダート。
サンレモ音楽祭で優勝する以前にディオダートのライブを聴く機会があったのですが、心地よい甘さを含んだ透明感のある伸びやかな生の歌声は会場中のイタリア人女性たちの心をたちまち虜にしてしまいました。
ちなみに『Che vita meravigliosa (ケ・ヴィータ・メラヴィリオーザ=なんて素晴らしい人生)』のミュージックビデオは東京で撮影されており、イタリア人の目線で撮影された東京がスタイリッシュなので必見です。
11. Francesco de Gregori – Buona Notte Fiorellino (1975年)
ローマ出身のフランチェスコ・デ・グレゴリは、1969年から活躍をしている、イタリアで最も偉大なシンガーソングライターの一人。前述のルーチョ・ダッラら多くのアーティストたちともコラボレーションしています。
この曲はタイトルの『Buona Notte Fiorellino(ブオナノッテ・フィオレッリーノ=小さなお花、おやすみなさい)』の通り、就寝前の軽いドライブなどにお勧め。静かな夜のイタリアをドライブしている気分に浸りながら今日一日もけっこういい日だったな」なんていう気持ちにしてくれる歌です。
懐かしの曲から最新曲まで、イタリアで時代を超えて愛される11曲、いかがでしたか?日本人にとってはなかなか触れることのないイタリアの音楽ですが、これを機にぜひ他の楽曲にも興味を持っていただけるとうれしいです。
Buona musica a tutti!(ブオナ・ムージカ・ア・トゥッティ!=皆さん、素敵な音楽を!)
小林真子(こばやし・まこ)
フィレンツェ在住。元静岡朝日テレビ報道記者リポーター。2012年よりフィレンツェで一番古いFMラジオ局Controradioにてレギュラーパーソナリティーを務める。イタリアの労働ビザを取得して起業、イタリア製アイテムのオンラインショップ「AmicaMako(アミーカ・マコ)」を経営。ライターとして「週刊新潮」「ITALIANITY」等でイタリア関連の記事やコラムも執筆。イタリア18州、世界約40カ国を周遊、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校留学など海外滞在豊富。FM大阪「ON THE PLANET」イタリア担当として不定期出演中。
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