より良い社会を目指すべく、人と自然と地球に優しいクルマづくりを続けるフィアットと、よりよい未来のために、循環型社会の構築を目指して活動する団体『MEGURIWA(めぐりわ)』。同じ未来を目指す2つのブランドは、初めてフィアットと走り出すオーナーの物語を描くフィアットの独自プロジェクト『#MY FIRST FIAT』で現在コラボレーションを行なっています。今回は、MEGURIWAというゆるやかなつながりの中で共に活動し、連動企画のキャンペーンでプロダクトをご提供くださった、pioneer plants(パイオニアプランツ)のモノづくりの姿勢とクリエイティビティで目指す未来について、ブランディング・ディレクターを務める奥田悠史さんにお話を伺いました。
“家の中でも、森の中でも”をコンセプトに、信州伊那谷のアカマツの無垢材を使ったモノづくりを行うパイオニアプランツ。立ち上げは2019年11月。以来、アカマツが持つ軽さと柔らかさを活かした持ち運びのしやすい“暮らしを身軽にする家具”を提案しているプロダクトブランドです。
“パイオニアプランツ”とは、裸地が植生を拓いていく際、最初に芽を出す先駆植物のこと。ブランド名の由来について「その土地にあった木を使って家具をつくる、ということの意思表明。何もないところに種が落ちて森への一歩目がはじまるように、私たちも森の未来を切り開いていく開拓者になりたいという意味が込められている」と語る奥田さん。山々の雄大な景色と森に寄り添う地域の人々に惹かれ、伊那谷でモノづくりに携わる道を選んだ奥田さんにとって、アカマツを使うことは挑戦であり可能性に満ちた取り組みだといいます。
「アカマツは軽くて柔らかな木質という特徴がある反面、幹の曲がりやねじれてしまうという特徴から建材には不向きということで市場価格が非常に安く、丸太のまま販売しても他樹種の半額以下で取引されています。私たちは家具職人として伊那谷に多く生育しているアカマツの特徴を活かしたプロダクトをつくることで、その価値を高めていきたいという考えからパイオニアプランツを立ち上げました。
そしてもうひとつ、アカマツを使う大きな理由に深刻な松枯れ病の問題があります。昭和中期に海外から入ってきた線虫を媒介して広がる現象なのですが、現在では日本中に広がり、ほとんどの地域でアカマツが群生する景色が見られなくなってきている中で、標高の高い伊那谷にもその兆候が見え始めています。松枯れ病によって枯れてしまった木には線虫がたくさんいるので、その場で処分しなければなりません。そんなアカマツを山の負債にするのではなく、枯れてしまう前にちゃんと資源に代える。そうすることで、地域の森や空気を守っていくということも大事にしているところです」
一般的な家具に使用される広葉樹と比べて強度が劣るアカマツを活かすべく、試行錯誤の末に完成したパイオニアプランツのプロダクト。軽量かつ白く美しい木肌と柔らかな触り心地を直に感じられる魅力的な家具が生まれた背景には、家具職人ならではの視点と発見がありました。
「アカマツは節と節の間隔が広いため、無節で美しい材を取りやすいという利点があります。割れの原因になってしまう節がないというのは家具をつくる上ですごくありがたいポイントです。長く使うごとに飴色に変わっていく経年変化を楽しめますし、あたたかく手になじむような触り心地を楽しんでいただける材だと思います。その柔らかな木質と軽さを活かすための試行錯誤を重ねる中で、強くしなやかなロープと組み合わせることによりお互いが支え合う構造を作り出すことに成功しました。柔らかな素材同士を組み合わせると硬いものと同等、場合によってはそれ以上に強くなるというのは非常に大きな発見でしたし、木を切るときに使うロープが家具の開発を助けてくれたというのがコンセプトとしてとても面白いと感じました」
『リスのテイラー兄弟のバッグ』や『オコジョのロッティさんのスツール』など、思わず声に出したくなるユニークな商品名。ここに登場するのは、すべて日本アルプスに生息する動物たちなのだとか。“家の中だけでなく外にも持ち出せる家具”というコンセプトを伝えるとともに、“豊かな暮らしづくりを通して豊かな森をつくりたい”という理念と環境問題に向き合う姿勢がネーミングにも息づいています。
「家具づくりをする上で、私たちは“ゴミを出さない”ということをすごく意識しています。ゼロにするのは難しいのですが、森の動物を商品名に使うなら森のゴミにならないようになるべく少なくしていきたい。今、安いものほど処分が難しくなっていたり、最終的な選択肢が埋め立て以外なくなってしまっている中で、パイオニアプランツの家具は最終的に燃やして処分が出来る造りにしています。もし壊れてしまったら薪として使うことも出来ますし、手間がかかりません。また、商品によっては回収を受け付けリプロダクト化しています。」
「もうひとつ、私たちがつくる家具の特徴に、トレーサビリティ(追跡可能性)があります。伐採された木の生育環境や作業工程に携わる方々の存在をすべて明確にする。それにより、どこかの工程にだけ負担をかけるようなことは出来なくなります。負担をどこにも押し付けずに安く買えるモノをつくることは難しいのですが、そこに対して私たちは、すべての情報をオープンに出来るモノづくりで可能性を担保する。いずれそれが価値になる社会を目指していきたいですし、そうやってつくられた家具を手に取ることが、サステナビリティの一歩になるというメッセージを発信していきたいと思っています」
ここで今回『#MY FIRST FIAT』にご提供いただいた『クマのオーウェンさんのイス』と『フクロウのアイビーさんのトレイ&レッグ ラージ』について、奥田さんに伺ったオススメの使用シーンをご紹介します
<クマのオーウェンさんのイス>
「まずみなさんに驚かれるのが、この軽さ。約2キログラムで、木のイスとしてはかなり軽量。片手で持てる軽さなのでストレスなく運ぶことが出来ます。オススメの使用シーンは、ずばり自然の中。海なら砂浜に、山なら木々の合間に設置して腰掛けてもらえたら、自然から生まれた資源を使ったプロダクトを使う心地良さを感じていただけると思います」
<フクロウのアイビーさんのトレイ&レッグ ラージ>
「こちらの家具の特徴は、高さが2段階に切り替えられること。チェアと組み合わせてローテーブルとして使うのはもちろん、ウッドデッキのような直に座れる場所に置けば、その場をくつろぎのスペースに変えてくれるアイテムです。自然素材のリノリウムを使用した天板は汚れや水に強く、脚から外してトレイ単品で使うことも出来ます」
モノづくりで地域の自然を支え、新しい家具の楽しみ方と魅力を提案するパイオニアプランツ。アカマツの価値を高めていくと同時に、今後さらに目標とすることが2つあると奥田さんは目を輝かせます。
「まずひとつが、伊那谷とは別の地域の材を使った商品開発。たとえば、長野県の中でも標高が高い土地では白樺、新潟ではブナと、地域によってそれぞれに特色を持つ木が生育しています。パイオニアプランツ=アカマツではなく、さまざまな地域と連携してプロダクトを製作出来れば面白いだろうなと考えています。地域性というところでは、今回の企画にご縁を繋げてくださったMEGURIWAさんとの親和性も感じていますし、地域の小さな経済や循環をすごく大事にされている姿勢には、本当に励まされています。もうひとつの目標に、企業への木質化の提案があります。環境改善の文脈も含めて木質化に参画する企業も増えていますが、その際CO2を排出しながらタンカーで運ばれてきた海外の木を使うのではなく、地域資源・地域産業に貢献するような提案をしていけたらと考えています」
クリエイティビティを通して、地域に貢献しモノづくりの未来を変えていく。自然に親しむきっかけをくれるプロダクトは、日々の暮らしにポジティブな変化を与えてくれそうです。この機会に、ぜひパイオニアプランツの家具と理念に触れてみてくださいね。
Text by野中ミサキ(NaNo.works)
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