ウインタースポーツ好きの方にとって心躍る季節です。スキー場で楽しむのはスキーやスノーボードはもちろん、ゲレンデで食べるごはん、いわゆる「ゲレ食」を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。カレーやラーメン、蕎麦などさっと手軽に食べられる、シンプルなメニューが主流ですが、ロケーションと相まって最高においしいですよね。
しかし、近年の「ゲレ食」は進化を遂げて、各店の創意工夫が光る手の込んだ料理がトレンドに。おいしいゲレ食No.1を決めるイベントも開催されているほどです。そして、お客様にゆっくりと召し上がっていただくという、ゆとりのある食事スタイルもセットになっています。
今回はそんなワンランク上のゲレ食を38年にわたって提供してきた老舗ピッツェリア「ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ岩原本店」をご紹介します。
ピッツェリア ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ岩原本店は、新潟県の越後湯沢・岩原スキー場にあります。湯沢エリアは新潟県の内陸部に位置し、降雪量が多い地域として知られ、数多くのスキー場が点在。都心からも約2時間半というアクセスの良さも相まって、ウインタースポーツを楽しむ人たちに人気のスポットです。
今回は冬場のドライブでも頼りになる一台、フィアットの限定車「PANDA CROSS 4×4(パンダ クロス フォーバイフォー)」で、岩原スキー場を目指します。
高速道路を降りてからスキー場までの一般道は、スノーコンディションであることも珍しくありません。スタックしやすい雪道に加えて、坂道が続くことも多く、ドライバーにとっては少し不安に感じることも……。
岩原スキー場への最後の道程はつづら折りの急坂になっていますが、PANDA CROSS 4×4は、そんな不安を払拭するような、安定した力強いパフォーマンスを披露。4WDの駆動形式と6速マニュアルトランスミッションの組み合わせによって生まれる走破性は、フィアットのラインナップの中でも随一です。
岩原スキー場に到着し(ちなみに岩原スキー場の駐車場は全日無料!)、クルマを降りてゲレンデへと歩いていくと、目的地である「ピッツェリア ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ岩原本店」が見えてきました。建物の外も中も、一般的なゲレンデのレストランとはまったく異なる、おしゃれで落ち着いた雰囲気です。
出迎えてくれたのは、オーナーの辻伊佐男さん。イタリアンとの出会いや、ゲレンデという場所にお店を構えた理由などをお聞きしました。
― どのようにしてイタリアンの道に入ったのでしょうか?
辻さん:今から40年以上前のこと、アフリカを旅した帰りに立ち寄ったパキスタンで、とあるイタリア人に出会いました。お互いに旅することや人と会うことが好きだったという共通点があり、すぐに意気統合。4年後に彼の地元であるイタリアに行く約束をして、その場をあとにしました。そして4年の月日が経ったころ、実際に会いに行ったんです。
彼が住んでいたのは、ミラノから車で約30分。スイスの国境近くに位置する「コモ」という町でした。コモ湖という大きな湖が有名で、自然の多いリゾートエリアです。
そして彼はピザとパスタを提供する庶民的なピッツェリアを営む料理人だったんです。わたしは最初、彼のお店で皿洗いの仕事を手伝い、そのまま彼の家に居候することに。これがイタリアンの道に入るはじまりでした。
— 料理の修行のために、イタリアに渡ったわけではなかったのですね。
辻さん:そうです。イタリアンのシェフを目指す人たちは、ミラノやローマ、ナポリなど、イタリア各地の有名なレストランを転々としながら、自分に合った料理のスタイルを見つけていくことが一般的だと思います。
私の場合は、真逆の土着型。北イタリアのコモに住むイタリア人の家庭に入り込みながら、料理を含めて現地の人々と同様のライフスタイルを長く経験しました。なので、一般的な料理人のスタイルとは大きく異なるかもしれません。
— 料理はどうやって覚えていったのでしょうか。
辻さん:コモのお店では、スタッフは仕事が終わってから食事をとっていました。わたしの仕事は皿洗いだったので、余ったソースやピザをこっそり残しておいたんです(笑)。仕事が終わると、それらを味見して、さまざまなメニューの味を覚えていきました。
料理を作るシェフは数人いたんですが、彼らの出身地が北か南かによって微妙に味付けが違っていました。同じイタリアでも地域によって味に違いがあることは非常に興味深かったのを覚えています。
そして毎週、店の休みには友人が周辺のレストランに食事に連れて行ってくれました。そのおかげで、カジュアルなピッツェリアから高級店まで、さまざまな本場のイタリアンの味を勉強することができました。
— なぜゲレンデでピッツェリアをはじめたのですか?
辻さん:それはよく聞かれる質問です。「なんで湯沢までピザを食べに行かなきゃいけないの?」とも聞かれました(笑)。簡単に言うと、自分のやりたかったお店の条件に合致する場所が「ゲレンデ」だっただけのことです。
冬場は人が来るけど、夏場は人が来ない。スキー場とはそんな場所。なので、ビジネス的には、とてもリスクのある場所です。「お店を出すなら東京に」と言われたこともありますが、コモの地がそうであったように、自分の性に合ってるのは“自然の中”なのかなと思っています。
ここのお店がオープンした1980年代、日本で窯焼きのピザをやっている人はかなり少なかったと記憶しています。窯焼きでピザをつくるのには条件があるんです。まず、薪が必要。大量の薪を調達して、保管もしなければならない。煙の問題もある。今と違って、昔はピザ作りに欠かせないバジルすら売っていなかったので、自分で育てなきゃいけなかったんです。そうやって、お店に必要なことを並べていった結果、ここに落ち着きました。
おまけに、湯沢地区はお米もおいしいので、イタリア料理の定番「リゾット」を作るのにも好都合。だから、私にとってゲレンデは“最高の場所”だったんです。
― お店の内装も素敵です。イメージなどはあったのですか?
辻さん:店内は、北イタリアにある木造りの山小屋のような、どこか懐かしい雰囲気の小さな宿をイメージしています。
このお店の名前「ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ」は、イタリア語で“絵描きの宿”という意味になります。わたしがコモで働いていたお店が「リストランテ アル・ピットーレ」という名で、そのお店があった小さな村の村長が絵描きだったことから名付けました。私自身も絵が好きですし、旅行した先々で買ったさまざまな絵画を壁に掛けています。
― 近年の「ゲレ食」についてはどのように思われていますか。
辻さん:かつてスキーブームの頃には、みんなスキーをひたすらに練習していました。だから、ゲレンデでの食事も、さっと食べられるカレーや麺類が良かったのでしょう。でも、いまやレジャーの中の食文化もすこしずつ変わってきており、「スキーの時もどうせならおいしい料理がたべたいよね」と、料理の質を求める人が増えているように感じます。
ゲレンデという場所で、“ゆっくりとおいしい食事を楽しんでほしい”というスタイルを、昔から続けているピットーレは少し特殊かもしれませんが、これからもお客さんとレストラン両者の意識が高まっていけば「ゲレ食」はますますおもしろくなりそうですね。
ではお待ちかね、ピッツェリア ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ岩原本店で楽しめる、自慢の料理をいただきます。どのメニューもおすすめとのことですが、なかでも人気の3品をご紹介いただきました。
Pittore(ピットーレサラダ)
まずは、定番のピットーレサラダ。地元新潟で採れた新鮮な野菜のみを使用しています。味付けはシンプルに、塩とオリーブオイルとバルサミコ酢のみ。素材本来の旨みが堪能でき、野菜ってこんなにおいしかったんだと感動するはず。ボリュームたっぷりなので、気の置けない仲間とシェアして。
Lasagne al Forno(ラザニア)
ピットーレ特製のベシャメルソースとミートソース。そこにチーズの旨みがマッチしたラザニアも大人気のメニューです。薪窯で焼かれたラザニアは、食欲をそそる香りもごちそう。ひき肉もゴロゴロ入っており、食べ応えのある一皿に仕上がっています。
Bismarck(ビスマルク)
ピットーレに来たら、窯焼きのピザは外せません。ナポリのピザより、じっくり時間をかけて発酵させ、少し長めの時間で焼き上げるくのがピットーレのピッツァの特徴です。メニューには20種類近くのピザが並び、一押しはビスマルク。
しっかりと練った生地の上にトマトソースとチーズをのせて焼きあげ、そこに生卵を落とし、最高のハムと名高い“ブリアンベッラ”をのせます。仕上げに香り高いトリュフバターをかけてできあがり。半熟の卵を割り伸ばして口に運べば、もう言葉はいりません。
ゲレンデという場所で、ラ・ロカンダ・デル・ピットーレが一年を通してオープンできているのは、おいしい料理を味わってもらいたいという辻さんやスタッフたちの想いがお客様に届いているからに他なりません。
ウインタースポーツ好きの方ならずとも、四季折々この味を体験するためだけに訪れる価値があるお店です。ぜひ「ゲレ食」目当てのドライブをしてみてはいかがでしょうか。
【取材協力】
ピッツェリア ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ岩原本店
新潟県南魚沼郡湯沢町岩原スキー場内
TEL:025-787-3940
平日(月~金)11:00~14:30(LO)15:00(close) 17:00~20:30(LO)21:30(close)
土曜・日曜・祝日 10:30~14:30(LO)15:00(close) 17:00~21:00(LO)22:00(close)
定休日:無休(一部休みあり)
*ディナータイムの遅い時間のご予約が無い場合、早めにクローズする場合がございます。遅い時間にご来店の場合は、お電話でお確かめください。
*各店舗情報につきましては、掲載時(2021年1月現在)の情報となります。新型コロナウイルス感染拡大防止措置により、変更となっている場合がございますのでご留意ください。また、外出の際はウイルス感染予防策を講じていただき、安全にご配慮いただきますようお願いいたします。
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