数ヶ月前までの猛暑が嘘のように、北の方から雪の便りも届く季節になりました。こうした季節の変わり目は、体調を崩さないよう生活習慣を見直したり、栄養のあるものを食べたりと、いつも以上に健康に気遣うようになりますが、それはクルマも同じです。
今回は本格的な冬が到来する前に、愛車のチェックすべきポイントや、手をかけてあげると安心なメンテナンスなどを、フィアット/アバルト横浜町田で主任メカニックとして活躍している、山本翔也さんにご紹介いただきました。
まずは、どんなクルマでも「ここは必ずチェックしておいた方がいい」というポイントから。
「夏の間にエアコンやナビなどの電装品で酷使したクルマで心配なのは、やはりバッテリーですね。気温が一気に下がることで、バッテリーの性能も急に落ちてしまうことが多いのです。普段あまりたくさん乗らないお客様、いつも短い距離しか乗らないお客様の場合も、バッテリーが十分に充電されない可能性が高いので、急にバッテリー上がりを起こしてしまうこともあると思います」(山本さん)
朝、出かけようと愛車に乗り込んだら、「あれっ、エンジンがかからない!」という最悪の事態になってしまうかもしれないということですね。バッテリーはボンネットの中に隠れているので、普段はあまり気にかけない人が多いと思いますが、どうやってチェックすればいいのでしょうか?
「最近のクルマは、昔のようにエンジンのかかりが弱くなったり、ライトがチカチカしたりといった、バッテリーの劣化に気づくための予兆のようなものがほとんどありません。それで余計に、気づきにくくなっているのです。
また、ボンネットを開けていただいても、最近のバッテリーはメンテナンスフリーのためカバーで覆われてしまっていたり、外から液量などがチェックできない状態のものがほとんどです。そのため、私どものようなプロがテスターを使って、バッテリーの性能をチェックするというのが確実な方法です」(山本さん)
なるほど、便利なような不便なような……ですが、そうすると、ガソリンを入れたついでにちょっとバッテリーのチェックをしてもらう、というのがいいのでしょうか?
「それがですね、エンジンをかけて走ってしまうと、バッテリーの電圧が上がるので、そこでチェックしても劣化には気づきにくくなってしまいます。なので、車検や定期点検の際にしっかりチェックしてもらって、バッテリーごとの交換時期の目安を守って交換するというのが確実だと思います」(山本さん)
交換時期は、クルマの使い方や駐車場所などの環境によっても変わってくるので、早めが安心とのこと。皆さんの愛車のバッテリーはどうでしょうか。もう何年も交換した覚えがないぞ、という人はぜひ冬になる前にチェックしてみてください。
続いてのチェックポイントは、タイヤです。
「タイヤはゴムでできているので、気温の変化にあまり強くないんですね。表面を見て、ひび割れがあったり白っぽくなっているのは、タイヤが劣化している証拠です。また、磨り減ったタイヤも危険なので、溝がしっかり残っているかを確認してください。スリップサインが出ているようなタイヤは、すぐに交換することをオススメします」(山本さん)
積雪地域では早めにスタッドレスタイヤへの交換を。できれば、関東など積雪が少ない地域でも、急な雪に備えたり、朝晩は橋の上など路面が凍結する可能性もあるため、スタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤに履き替えると安心です。
そして、雨や雪の日になくてはならないものといえば、ワイパー。
「やはりワイパーもゴム製品ですので、時間が経ったり、使っているうちに劣化してしまいます。1年に一度を目安に交換すると安心ですが、この夏は台風や豪雨が多くて酷使した人も多いと思いますので、ぜひ冬の前に交換してほしいですね。ヨーロッパ車では、雪に強い冬用のワイパーが装着されていることも多いのですが、ウインタースポーツなどで頻繁に雪国を走る方も、冬用ワイパーに交換しておくと安心だと思います」
「また、雪国では常識となっていますが、気温が下がるとウインドウォッシャー液が凍結してしまうこともありますので、凍結を防止したり解氷効果のある寒冷地仕様のウインドウォッシャー液を補充しておくといいですね」(山本さん)
ワイパーが劣化していると、フロントガラスの汚れが十分に拭き取れず、視界を妨げてしまったり、ガガガと異音がしたり、最悪の場合はガラスを傷つけてしまうことも。ウインドウォッシャー液には油膜を落とす効果など、安全運転を支える機能もあるので、ぜひセットでチェックしておいてほしいところです。
また、車内の快適性を保つために欠かせないエアコンですが、以前より風が弱くなった気がする、イヤなニオイがする、という人は要注意。夏の間の高温多湿によって、エアコンフィルターにカビや雑菌が繁殖しているかもしれません。そこに、外から吸い込んだ砂塵やホコリ、虫や落ち葉などが詰まると、エアコンの性能も落ちてしまうことに。愛煙家の方や、ペットを飼っている方もエアコンフィルターが汚れやすい傾向があります。
これから冬になると、感染症にもさらなる注意が必要。エアコンフィルターを新品に交換して、いつも車内をきれいな空気で満たしたいですね。
さて、年末年始の休暇を使ってロングドライブを計画している人に、山本さんからアドバイスをいただきました。
「まずバッテリー、オイル、冷却水の3つは必ずチェックしてほしいですね。オイルは走行距離5,000kmを目安に交換を推奨しています。距離を走らない人でも、年に一度は交換するとエンジンへの負担を軽減できます。定期点検に出していただければ忘れることがないですね」
「また、タイヤの空気圧もしっかり確認して合わせてほしいところです。走っても走らなくても、タイヤの空気は少しずつ抜けていってしまうので、少なくとも1ヶ月に一度はエアチェックをしてください。空気圧は500の場合は、タイヤサイズにもよりますが、フロントが2.2、リヤタイヤが2.0を推奨しています。取り扱い説明書に書かれていると思います。
そして、500ならではのポイントとして、空気圧を合わせた後に、メーター内にあるリセットボタンを押していただきたいのです。そうすると、空気圧が著しく低下した際に警告ランプが点灯するようになっていて安心です」(山本さん)
タイヤの空気圧のリセット手順は以下の通り。
・メーター内の「メニュー」画面で「リセット タイヤ」という項目を選び、決定を押す。
・次に「イエス」を選び、決定を押す。
・すると「コンフォート」という画面が出て、決定を押すと完了。
これで、空気圧の異常を検知した場合に知らせてくれるわけですが、もしタイヤ空気圧の警告灯がついても、焦りは禁物。速度を控えめにし、急ハンドルや急ブレーキをしないよう丁寧な運転で、なるべく早くエアチェックをするようにしましょう。
さて、500XやPandaならではの注意点は何かあるのでしょうか。
「基本的なチェックポイントは、500と同じだと思います。ただ500Xは、車重が少し重くなることや、ご家族で乗られたり荷物を満載にするなど、相対的に重量が増えがちです。たくさん走られる方だと、タイヤやブレーキパッドなどが減りやすくなったりしますので、早め早めのチェックがオススメです」(山本さん)
また、ごく稀にではありますが、冬になるとボンネットの中の暖かさを求めて、子猫が入り込む場合があります。もし気づかずにそのままエンジンをかけてしまうと……。そうした事故を防ぐため、乗り込む前にボンネットをバンバンと叩いて、「出発しますよ」と猫に知らせることを習慣にするといいですね。
・バッテリーの性能が落ちていないか。
・タイヤのゴムが劣化していないか。溝がすり減っていないか。
・スタッドレスタイヤやオールシーズンタイヤに履き替えるとより安心。
・ワイパーのゴムが劣化していないか。雪国で使う方は冬用ワイパーに交換を。
・寒冷地仕様のウインドウォッシャー液を補充する。
・エアコンフィルターを新品に交換する。
・オイルは走行距離5,000km、または年に一度を目安に交換する。
・タイヤの空気圧は月に一度はチェックする。
・乗り込む前にボンネットをバンバンと叩いて猫に知らせる。
とてもわかりやすく、すぐにできるチェックポイントを教えていただきましたが、いかがでしたでしょうか。自分で全てやるのは自信がないかなという方は、お近くのフィアット/アバルトディーラーで点検を。山本さんのような、フィアット車を知り尽くしたプロフェッショナルが、お客様ひとりひとり、1台1台に必要な点検やメンテナンスを見極めて、確実に愛車の状態を整えてくれるはずです。ぜひ、お気軽にお訪ねください。
【取材協力】
フィアット車のメンテナンス&サポート体制について、こちらの記事でもご紹介!
Text:まるも亜希子(カーライフ・ジャーナリスト)
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