広告制作会社にお勤めの小島潤一(こじま・じゅんいち)さんにアートディレクターの目線で、13年間乗り続けている『500C』について語っていただきました。フィアットを選んだ理由やデザインの魅力について、自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺います。
今回ご登場いただく小島潤一さんは、日本でも有数の広告クリエイティブを手掛ける会社にお勤めの、アートディレクター。企業や商品、大型施設などのブランディングを取りまとめ、TVCMの企画からロゴ・パッケージ・空間まで多岐にわたる分野のデザインも手掛けてこられました。またプライベートでは1961年式の英国製ライトウェイトスポーツカーを長年所有しつづけてきたエンスージアストでもあります。
そしてもう1台の愛車が、2010年に50台限定で販売された、テックハウス グレーのボディに赤いソフトトップが組み合わせられた『500C VINTAGE(チンクエチェントシー ヴィンテージ)』。優れた審美眼や絶妙なバランス感覚、そして豊かな遊び心が要求されるお仕事につき、クルマ趣味の酸いも甘いも体験してきている小島さんが、新車で購入されてから13年間、なぜ『500』に乗り続けているのか、お話を伺いました。
小島さんの車歴は、誰もが知っている英国製の小さな名車からはじまったのだそうです。
「19歳のときに買って、6年乗りました。でもエンジンを降ろすことになりお金がかかりそうだったので、フランス製の洒落た小型ハッチバックに乗り換えたんです。でも、しっくりこなくて、半年ぐらいで国産オープンスポーツカーに。すごくダイレクトで、レスポンスもよかったし、ここでオープンの魅力を知りました。まわりにはヒストリックスポーツカーに乗っている知り合いがたくさんいて、こういうブレーンがいれば古いクルマに乗っても平気かな、と思って今の1961年式の英国製オープンスポーツカーに乗り換えたんです。30年ぐらい前の話ですね」
そのクルマが持つ独特の世界観と、全身で楽しさを感じられるドライビングフィールに魅せられてしまった、ということなのでしょう。でも、驚いたことに小島さんはそれから20年ほど、その小さなスポーツカー1台で過ごしてこられたのだとか。その間に結婚もされ、奥さまも“クルマっていうのはこういう(長く乗る)ものだ”と思ってこられたのだそうです。にも関わらず、2010年に突然『500』を購入されたのはなぜなのか、やはり気になります。
「小さいクルマが好きだし、昔から全般的にクラシカルなデザインのものが好きだったから、古い『500』もすごく好きだったんです。以前、かつての名車をモダンにデザインしなおしたようなクルマがいろいろなメーカーから出たじゃないですか。その流れの中でフィアットからも『500』がデビューして、『これはやばいな』と思ったんです。普段使いのクルマの必要性を感じていたから。でも、なぜか踏み出せなかったんですよ。そのあと、アンテナを張っていたらテックハウス グレーに赤いソフトトップのモデルが出て、昔の『500』のルーフをパタパタって開けるのに似ていて、即、買っちゃったんです。ショールームですぐに売り切れちゃうと思うっていわれて、ほとんど一目惚れの衝動買いですね(笑)」
ひとりのデザイナーとして、『500』のデザインをどうご覧になりますか?
「購入の決め手がデザインってくらい、かなりレベルが高いと感じますね。まったく隙がなく、旧型のコンセプトを継承しつつ、モダンにかわいくまとめている。昔の『500』もそうだけど、ヘッドライトのところからボディを1周する筋があって、そこから下がもっこりしている感じは今の『500』も受け継いでいる。日本車だったらこういうところにモールを入れて分けちゃうところなんでしょうけど、でも『500』はそこを面の構成による光の反射だけで表現している。そういうところが好きですね。内装が昔と同じボディ色のインストルメントパネルっていうのも、今のクルマではなかなかないじゃないですか。シートにあしらわれた白いパイピングとか、その洒落ている感じにも惹かれます。イタリアはデザインの国なんだな、と改めて思いますね」
オープンの『500C』を選んだのは、やっぱりオープンが好きだからですか?
「もちろんです。僕たちの仕事はここまでやれば“OK”っていうことがないから、平日は予想外に仕事の予定がみっちりになっちゃうんです。だから週末にオープンで走っていると、たとえ近所の買い物とかでも気持ちが開放されるので」
普段どんなふうに『500』に乗っているんですか?
「日頃は横浜の街乗りばっかりですね。月イチで開催されるマルシェに食材を買いにいって、そこでトートバッグいっぱいに買って帰ってきたり。『500C』って、そういうときの使い勝手は見た目以上にいいですよ。ハッチバックと比べると荷物の入るスペースが小さいと思っている人が多いですけど、実は開口部が狭いだけで容量はあまり変わらないんです。大きな荷物をドンと積むとかでなければ、積める量はほとんど同じなので不自由はないです」
『500』でどこかへ出掛けたりはしますか?
「年に5〜6回、三浦半島に行ったりはしますよ。母親の実家があって、幼い頃から馴染みがあるんです。昔からドライブは三浦半島ですね。家から1時間以内で行けるし、海もあるし丘もある。ヨットハーバーみたいのもいくつかあって、かなり開放感があるんですよ。あとゴールデンウィークと夏休みには、『500』で行ける範囲で旅行もします。いちばん遠くまで行ったのは京都の日本海側ですかね。あるときInstagramで琵琶湖の湖畔の“#あのベンチ”っていうのを見て、行ってみたいと思って。湖とそれを眺めるベンチと木とクルマをいっしょに写真を撮れる、撮影スポットなんです。そしたら、そこから京都の海沿いまでわりと近いことに気づいて。加えて、知多半島や岐阜にも行ったので、4日間で1,500キロくらい走りました。『500C』はロングドライブでもあんまり疲れないんですよ。それに、マニュアル操作でその気になってドライブすると結構元気よく走ってくれて、楽しいですよね」
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