ツインエア エンジンの魅力は、実に多岐に渡って濃厚です。『500 TwinAir Dolcevita(チンクエチェント ツインエア ドルチェヴィータ)』をあらためて走らせてみて、つくづく感じました。
まずはそのサウンドです。ポロポロポロポロ……と表記すればいいのか、その2気筒エンジンならではの独特のリズムが理由もなく楽しさを感じさせるのです。こちらは水冷だし排気量も違うので古い『500』とは異なる響きもあるのですが、雰囲気がだいぶ似ているのもどこか嬉しいところ。そして回転を上げていくと音色が野太く変化していき、これまた不思議と気分が高揚させられたりします。アイドリングから高回転域まで、21世紀に誕生したパワーユニットにしては珍しく、ハッキリとした振動を伝えてきます。けれどそれが不快なモノには感じられず、むしろ楽しいことをしようとそそのかされているような、そんな感じ。仲間といっしょに遊んでいるときのような感覚というかなんというか、とにかくおもしろいくらいに有機的な味わいのあるエンジンなのです。
トルクの豊かさも、数値以上に感じられます。最大145Nmですから莫大な力強さというわけでもないのですが、それでも発進の段階からまるで不満も不自由も感じさせない力を沸き立たせ、2,000rpmくらいでピークに達してから、それが3,500rpmくらいまで持続します。だからアクセルペダルを深く踏み込まなくてもスルスルと加速していき、穏やかに走っているつもりでも交通の流れに乗り遅れることがありません。高速道路での巡航もまったく同じで、小さいエンジンであることをほとんど感じさせません。
ゆるゆると走るのが、とても心地いいのです。それでいて回転を上げて元気よく走ろうと試みると、さすがに“馬鹿っ速”とまではいいませんが、スペックから想像するより遙かにたくましくスピードを得ていくし、ピンピンと跳ね上がるような鋭さがあるとまではいえないけど、スポーティな走りもちゃんと受けつけてくれたりします。ワインディングロードなどでは、気筒数が少ないことでエンジン重量も軽めだから、当然のごとく鼻先の動きも軽やかで、“曲がる”という行為がまた楽しい。ハンドリングのよさにも効くエンジン、といっていいでしょう。
しかも、燃費がまた素晴らしい。WLTCモードで19.2km/L、市街地モード14.4km/L、郊外モード19.7km/L、高速道路モード22.0km/h。それらの数字、比較的容易くマークできちゃいます。さほど気にせず走っていて、燃費計が20km/Lを越えていることなど珍しくもありません。高速道路をゆっくり巡航していたときにふと気づいたら27km/L台まで数字が伸びていて、唖然とさせられたこともあったくらい。ムキになって燃費走行を試みて28km/Lまで伸ばし、パーキングエリアに入ってたいして意味のない証拠写真を撮り、今も残しています。
とにかくキャラクターがしっかりあって、走らせて楽しく、多方面にわたって柔軟性を発揮してくれるエンジン。僕はツインエア エンジンに対してそういう印象を持っていて、今回の試乗でもそこを確認しておきたかったのでした。
個人的には以前から「いずれツインエア エンジンを積んだ『500』をアシにしたい」と思っているところもあって、おそらく同じような気持ちでおられる方も少なくないでしょう。でも、その“いずれ”はラストミニッツ。もはや全国のショールームにあるクルマが新車で買えるすべて、という状況です。2023年の12月28日(木)までの期間で『Grazie TwinAir』というキャンペーンも行われています。ツインエア エンジンが気になっている方、ショールームを訪ねるなら今、まさに今このタイミングです。これから先のカーライフを後悔しないで過ごすためにも……。
Text:嶋田智之
Photos:神村聖
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