若い頃から熱心なクルマ好きで、車歴にはスポーツ志向の強いクルマが多かったという保坂光男(ほさか・みつお)さん。現在も、サーキット仕様のクルマやスーパーカーを所有する保坂さんが『500e』に魅了された理由について、自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。
『500e(チンクエチェントイー)』は118psの最高出力と220Nmの最大トルクを発揮する42.0kWのモーターをフロントに搭載し、車両重量1,320kg〜1,360kgの車体を走らせます。最高速度は150km/hに制限され、0-100km/h加速タイムは9.0秒。スポーツモデルというわけではありませんが、『500 TwinAir(チンクエチェント ツインエア)』の0-100km/hが11.0秒であることを考えると、走りっぷりはなかなかのものといえるでしょう。
そのパフォーマンスは、スピードと慣れ親しんできたドライバーの目にはどう映るのでしょう?
今回お話を伺う保坂光男さんは、若い頃から熱心なクルマ好き。20代の頃は日本のスポーツモデル、それもカスタマイズを加えてパフォーマンスを高めたクルマで走りを楽しむドライバー。息子さんとのキャンプのために大柄な本格的SUVへと路線を変えていた頃もありましたが、30代ではドイツの、40代ではイタリアの、高性能モデルを乗り継いできています。そして50代となった現在は『500e』、サーキットを楽しむための『アバルト595』、さらにはいわゆるスーパーカーをも所有するエンスージアストです。
「ずっと仕事を一生懸命がんばってきたのですが、それもこれもクルマ好きをなんとか続けたいがためでした」
車歴にあるのは、基本的には速いクルマ、高性能なクルマばかり。普段使いとして『500 TwinAir』に乗られていたこともありますが、それも程なくして『アバルト595』へと代わります。そうした極めてスポーツ志向の強い方が、なぜ電気自動車の『500e』に関心を持ったのでしょう?
「普段乗るつもりで『500 TwinAir』からアバルトに乗り換えたんですけれど、あまりに楽しすぎてサーキット専用にしてしまったんですね。それに僕は精密な部品加工を生業にしていて、リチウムイオン電池のための部品も作っているんです。バッテリーの製造には以前から関与していたので、手元に電気自動車やハイブリッドカーが1台ある方がいい。それならフィアットのEVがいいな、と思ったんですよ。だから最初は“体裁”ですね(笑)」
電気自動車そのものに興味があったわけでは……?
「なかったです(笑)。むしろ逆で、自分のライフスタイルには合わないと思っていました。ガソリンを爆発させて走るクルマが大好きだから、電気自動車っていうものにケチをつけてやろうぐらいの意地悪な気持ちもあったほどです。電気自動車っていうものにはほとんど期待はしていませんでした。ところが『500e』は、それをことごとく裏切ってくれるという……(笑)。この15年ぐらいの間に買った中で、いちばん乗り心地がよくて、いちばんスマートに走ってくれて、いちばん何の不安もなくて、いちばん運転しやすいクルマ。それが『500e』なんですよ。どこに行っても絶賛してしまう自分がいる(笑)。そして、推したいクルマのひとつになってしまった。電気自動車嫌いが電気自動車にはまってしまった。そんな感じです」
単に電気自動車というだけなら、ほかにも選択肢はあったと思うのですが?
「僕は、日常で乗るクルマには条件があって、コンパクトな作りであることが絶対なんです。でも、いくつかコンパクトな電気自動車に試乗してみたのですが、何かピンと来なかったんですね。そんなときに『500e』がデビューして、これは都合がいいぞ、と(笑)」
それは『500 TwinAir』や『アバルト595』で慣れ親しんだ世界観にあるクルマだから、ということですか?
「それはありましたね。実は実車を見る前に予約をしちゃったんですけれど、実車にはまったく違和感がありませんでした。ただ、自分が『500』に乗ってきたり『アバルト595』を持っているせいか、味というかクセというか、そういうところが強いのかと思っていました。けれどいい具合に洗練されていて、初めての人でも自然に運転できるクルマに仕上がっているんですよ。フィアットが電気自動車を作るとこうなるのかっていう、いい意味でのギャップは大きかったですね」
次のページ:【モーター駆動の瞬発力や力強さってすごいな、って思います】
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
FIATの最新情報をお届けします。