実際に『500e』に乗るようになってからはいかがですか?
「楽しいですね。『500 TwinAir』もそうですけれど、ステアリングを切った瞬間にクルマ全体で曲がっていくようなハンドリングが、『500e』にもあるんです。日本のコンパクトカーには、こういうテイストのクルマはないですよね。しかも重心が低いのが、クルマの挙動からよくわかる。なにげなく曲がっただけで気持ちいいんですよ。こんなことを言ったら怒られるかもしれないですけれど、乗る前には、足周りもぜんぶチューニングしようっていろいろ想像していたんです。でも、今はどこにも手を入れる気にならない。オリジナルのまま乗って納得できているクルマって、実は初めてなんです」
加速はいかがですか?
「力強いですよ。加速力も『アバルト595』のベースモデルくらいある感覚ですね。とくに40〜50km/hぐらいまでがすごく速いから、街中でいちばん使う領域でモタつくことがない。パワーというよりトルクがある。アクセル操作に対する反応のリニアさも、内燃機関のクルマでは勝てないぐらいです。1人で乗っても大人4人で乗っても、走っている感じがさほど変わらない。力不足をまったく感じないんですよ。モーター駆動の瞬発力とか力強さってすごいな、って思います。ストレスがないんです」
電気自動車が嫌いだったのに、意外な展開でしたね。
「そうですね。僕、さっき“ケチをつける”っていう言い方をしましたけれど、実はそれって僕の仕事病みたいなもので、いい見方ばかりしていると本質がわからなくなってしまうから、わざと悪いところ、ダメなところを探す習慣がついちゃっているんですね。でも『500e』はケチつけるどころか悪いところが何もないくらいなんですよ(笑)」
走行距離は、どのくらいですか?
「納車から約半年が経って、走行距離は4,700kmぐらいですかね。僕は通勤を含めて1ヶ月に平均1,000kmぐらい走るんですけれど、ほかのクルマと併用しながらなので、『500e』に乗っていることが多いのがわかりますよね。クルマには、仕事で使う道具とするクルマと自分が楽しむために乗るクルマと、2種類あると思うんです。『500e』は仕事で近郊へ行ったり来たりするためと、バッテリーで走るクルマに乗っていることをアピールするために買ったつもりだったんです。けれど、乗っているとすごく楽しいから、ちょっと余計にひと回りするようになっちゃったところもありますね」
実用性はどうでしょう?
「家族といっしょに買い物に行ったり、送り迎えのために乗ったりもしているんですけれど、僕にとっては十二分です。ホームセンターの買い物とかももちろん楽にこなせるし、4人がちゃんと乗れて移動できるし、ボディの大きさを考えたら、どちらかというと広いですよね。よくできているな、と思います。自宅と会社で6kWの普通充電ができるようになっていて、大体50%まで充電するのに4時間ぐらいですかね。朝、50%ぐらいで会社に着いて昼過ぎには満充電になっているので、日常生活のうえでは何の問題も心配もない感じです。利用の仕方をちゃんと考えれば、電欠を怖がる必要はいっさいありません。僕の使い方と合っているのかもしれませんね。それに暖機しなくてもよくて、電源を入れたらすぐに走り出せるし。地味なことだけど、そういうところも快適です」
ほぼ大絶賛ですね。
「そうですね。メーカーさんを喜ばせようと思っているわけじゃないんですけど、褒めるところしかなくて逆に困惑しているっていうのが正直な気持ちで、今もまだ戸惑っている最中です(笑)」
『500e』に乗るようになってから、なにか変わったことはありますか?
「大きな声ではいえないんですけれど、『500e』に乗るまでは、どのクルマよりも先をいきたい自分がいたんですよね。もちろん限度はわきまえていますけれど、前に前にという走り方でした。でも『500e』に乗るようになってから、人の後ろでもかまわないというか、流れみたいなものを尊重する走り方に変わりました。なぜかというと、最初は“バッテリーが減っていく量”が気になって仕方なかったんですよ。それで電費を気にしながら走るようになったら、高速道路でも一般道でも流れに逆らわず、流れの中で緩やかに加速して穏やかに停まるっていうのを繰り返すのがいちばん効率的だし、精神的にもいいっていうのがわかったんです、この年になって(笑)」
「しかも、どのクルマに乗るときもそういう走らせ方をするようになりました。意識が変わったんでしょうね。実はサーキットの方でも、気合いと根性でコンマ1秒を削るっていうのではなく、自分なりにスポーツドライビングをどれくらい楽しめるかっていうことに意識が向くようになりました。そしたら、その方がラップタイムがいいんですよ(笑)。力が抜けているからなんでしょうね。クルマの走らせ方、走らせているときの気持ち、楽しみ方。そういうものが変わったのは『500e』のおかげだと思いますね」
『500e』、すごい影響力ですね。
「実は仕事にも活きていまして(笑)。世界情勢の影響で材料が高騰した上に、円安になってさらにシビアになって、僕たち製造業はかなり厳しい状況になってきたんです。ところが、『500e』の乗り方じゃないです けれど、経済の全体的な流れを自分が先走って見に行くっていうより、ちょっとおおらかな気持ちで景色を見るような感じに、自分が自然と変わってきたんですよ。そうすると逆に潮目が見えるというか。おかげで堅調に推移するようになりました。もちろん『500e』からの影響だけではないんでしょうが、いろいろと考え方を変えてくれたという点で“おかげさま”っていう言葉が自然に出てきますね」
「なんだかフィアットにしてやられたっていう感じです」と笑う保坂さんですが、『500e』から素晴らしい影響を受けているのは確かなようです。電気自動車については前向きではなかったクルマ趣味人が、最後に「内燃機関のクルマと電気自動車。それぞれの存在意義や存在価値を考えて、偏らずに接していくのが大切だなって思えるようになりました」と話してくださったのが、とても印象的でした。
Text:嶋田智之
Photos:吉見幸夫
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【INFORMATION】
フィアット/アバルト大阪東
住所:〒577-0063 東大阪市川俣1-4-33
営業時間:10:00 – 18:30
定休日:水曜日、第2・第4火曜日
TEL:06-6784-1009
HP:http://www.alfaromeo-hakko.co.jp/showroom/osakahigashi/index.html
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