今回の新『Topolino』は実に68年ぶりのネーミング復活ということになります。いっぽうで、そのエクステリアデザインは『Nuova 500』の雰囲気を漂わせています。
ただしレトロなムードにふけっているわけではありません。開発ポリシーはきわめて新しいものです。『Topolino』は“都市における持続可能なモビリティを実現し、都市をリラックスできる遊び場に変える”という、従来のクアドリサイクルには見られなかったミッションを宣言しています。そのうえで『500 Topolino』や『Nuova 500』で繰り返し謳われた広告キャッチコピー“Piccola grande vettura(小さく、偉大なクルマ)”という、ブランドが大切にしてきたものを確実に引き継ごうとしています。フィアット・ブランドを擁するステランティス・グループの超小型EV用プラットフォームをベースにしつつ、ここまでオリジナリティ溢れるモデルを作ってしまったのには脱帽するしかありません。
『Topolino』は、まずイタリアとフランスで予約が開始されます。イタリアでの価格は9,890ユーロ(約152万円)から。フィアットは、わずか3クリックで購入を完了できる“TVのサブスクリプションや交通機関の定期券を購入するのに近い”超シンプルなウェブサイトを予告しています。デリバリーのスタートは2023年末に予定されています。
名車の愛称を引き継いだゆえのプレッシャーもありそうです。実際、早くもイタリア人の間では『Nuova 500』や前述のビーチカーをイメージさせるルックスに「キュート!」という声が上がるいっぽうで、先代との違いに戸惑いを隠せない人もいます。だが、過度な心配はナンセンスでしょう。2007年に現在の『500』が発表されたときも、2011年に現行『Panda(パンダ)』がデビューしたときも、多くのイタリア人は先代や初代と比較して当惑したものです。それがどうでしょう。2台は十数年にわたるロングセラーとなり、『Panda』に至ってはイタリアにおけるベストセラーとして快走中です。『Topolino』がライト・クアドリサイクルの世界で似たような奇跡を起こせるかは、楽しみのひとつです。
最後にもうひとつ。南ヨーロッパでは、なんと小型車を載せたトレーラーを牽引して走るキャンピングカーを見かけます。それは、目的地で小回りの効くモビリティとして使うためです。今回、フィアットは『Topolino』の発表にあたり、モーターボートのリアデッキに載せたシーンをリリースしています。高級リゾートにおける、セレブたちのお洒落なマストアイテムになる、という展開も夢ではなさそうです。
Text:大矢アキオ Akio Lorenzo OYA
Photo:Stellantis / Akio Lorenzo OYA/Bertone
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