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CULTURE

イタリアと日本の文化を愛するイラストレーター、ビオレッティ・アレッサンドロの“POP・PRETTY・FUNNY”なメッセージ

広告・キャラクターデザイン・挿絵・漫画・絵本など、幅広い媒体で活動しているイラストレーターのビオレッティ・アレッサンドロさんは、フィアットと同郷のイタリア・トリノ出身。幼少期から“絵描きになること”と“日本に住むこと”への想いを募らせ、27歳のときに偶然の出会いを機に日本で絵本を出版。2015年5月からは日本に移り住み、現在はフリーランスのイラストレーターとして活躍中です。そんなビオレッティさんに、自身の活動のテーマやイタリアと日本の文化について、そして同郷であるフィアットの印象を伺いました。   夢は“絵描きになること”と“日本に住むこと” ──まずは日本に移り住むことになったきっかけを教えてください。 18歳のときに初めて日本に観光で来て、それから27歳までトリノに住みながら、日本へ行き来していました。そんなある日、出版社の編集者の方と偶然出会って、「絵本を出版しませんか?」と声をかけていただいたんです。それがきっかけで、絵本の出版後にアーティストビザを取得することができて、2015年からは日本に住んでいます。   ▲ビオレッティ・アレッサンドロさん   ──小さいころから絵を描くことに興味はありましたか? はい。幼いころから絵を描くことは好きで、7歳ぐらいのときには「絵の仕事をしたい」「絵を描いて生きていきたい」って思うようになりました。   ▲インタビューマガジン『世田谷十八番』   ──ビオレッティさんの幼いころのエピソードで、おじいちゃんが持っていた70年代の日本の写真集を見たことがとても印象に残っているそうですね。 それも7歳のときです。“日の丸”が描かれた本がおじいちゃんの本棚にあって、気になって手に取ってみたら、日本の70年代の写真集でした。僕のおじいちゃんはトリノにある『ラ・スタンパ』という新聞社で仕事をしていて、ジャーナリストと出会う機会がたくさんあり、その中のひとりからいただいたそうです。それを見たとき自分は、「日本はなんて面白い国なんだ!」って思いました。   ──それがビオレッティさんにとって、日本に興味を持つ原体験だったんですね。 はい。そこからどんどん興味が湧いてきて、“絵描きになりたい”と“日本に住みたい”っていう気持ちが合わさり、日本で絵描きができないかなって。そのあとは16歳から日本語の勉強を始めて、先ほど言ったようにイタリアと日本を行き来しながら、2012年ごろに出版社の方と出会い、2014年に『みつけてアレくん!せかいのたび』という絵本を出版しました。     ──絵本の出版によって、念願の日本暮らしが叶った面も? そうですね。「これをきっかけに日本に住めるんじゃないか……」っていう気持ちは正直ありましたね。日本に住むようになって、観光で訪れたときよりももっと深く、“日本の1日”を感じられました。そこはイタリアの1日のペースとは違いましたけど、今ではイタリアと日本の考え方やライフスタイルを、うまく自分の中でミックスできているように感じます。   ──日本に来てフリーランスのイラストレーターとして活動する傍ら、デザイン事務所の勤務なども経て、独立されたのは2019年。そこからは漫画や絵本のみならず、さまざまなブランドやイベントにおける広告のイラストなども数多く手掛けていますよね。 自分としてはひとつひとつのお仕事を大切に、とにかく100%で描いてきました。なので、何かこの仕事がきっかけで注目を浴びた、という感覚はないですね。日本人らしく言えば“コツコツ一生懸命”取り組んで、自分が納得できるクオリティの作品を出すことをいつも心掛けてきました。   ▲スーパーマケット成城石井でのイラスト制作   ──ちなみにビオレッティさんの作風が確立されたのはいつごろですか? ちょっとずつのプロセスの積み重ねではあると思いますが、根本的な部分で言うと、昔から“線を繋ぐ”ことが好きだったんですね。そこから自分の中の個性をもっと生かせないかなって考えていくうちに、フォルムや体の作りが独特な、誰も描いたことのないキャラクターを描くようになりました。自分の中でそこはアーティスティックな部分で、ちょっとずつ進化して今に至ります。   ──イラストには“POP・PRETTY・FUNNY”という3つのキーワードがあるそうですね。 まず僕の絵をパッと見て、その印象をひとつの言葉で表現するならPOP。ただそれだけじゃなくて遊び心、つまりFUNNYな要素も加えて、PRETTYな絵になるように表現しています。   ▲2022年9月に発売した新作絵本『なぞなぞショッピングモールでおかいもの』   次のページ:【ビオレッティさんのDNAにあるイタリアとは?】 […]

CULTURE

大人気イラストレーターChocomooさんが描くFIATの世界

2月1日(金)から実施しているフィアットのテストドライブキャンペーン「EVERYONE LOVES FIAT」。同キャンペーンでフィアット車を試乗した人だけがもらえる「フィアット・meiji ザ・チョコレート オリジナルセレクトBOX」のデザインを手がけたのが、大人気のイラストレーターChocomoo(チョコムー)さん。 2018年の春からフィアットとコラボレーションをしているChocomooさんに、今回描いたデザインのこと、そしてこの1年間の思い出を語っていただきました。 バレンタイン感いっぱいのパッケージ 独創的なイラストで、ますます注目度が高まっているイラストレーターのChocomooさん。現在実施中(2019年2月28日まで)のテストドライブキャンペーンの試乗プレゼントのパッケージデザインについて話を伺いました。 「今回は、バレンタインシーズンということで、ギフトボックスとか手紙とか500とか。贈り物っぽいもの、ハッピーなものをデザインに描きました。蓋の中や箱の底などにもイラストを描いて、どの角度から見ても楽しめるようにしました。とてもかわいく仕上がったと思います。普段はモノトーンで描くんですけど、今回はバレンタインをイメージしてフィアットのロゴカラー(赤)を使いました。温かみのあるクラフト調の箱の色ともピッタリで、とても気に入ってます。また、イラストを描きながら、この箱の大きさがアクセサリーを入れるのにちょうどいいなぁと思って。チョコレートを食べた後、みなさんにもこの箱を使ってもらえると嬉しいです」 FIATは2018年の中心にあったコラボレーション 2018年は、ライブペイントをはじめ、フィアットの様々なイベントに登場したChocomooさん。この1年を振り返って、フィアットとの思い出をお話しいただきました。  「フィアットさんとは、いろいろな企画でご一緒させていただいたので、思い出がいっぱいです。“FIAT PICNIC 2018”で山梨県の富士山の麓に行ったり、いろいろなところでライブペインティングをしたり。地元・京都のイベントには、家族や親戚や友達も観に来てくれて。すごく楽しかったです。フィアットさんとのコラボレーションは、私の中で2018年の中心的なお仕事になりました」  なかでも『500 Super Pop Chocomoo Edition』のデビューは、特に印象に残っているとのこと。  「自動車のプロダクトのデザインに関わったのが初めてだったので、本当に嬉しかったです。“小さな美術館にいる感じ”というコンセプトでデザインしたんですけれど、その思いがうまくカタチになったと思っています。『500 Super Pop Chocomoo Edition』のデビュー後に知ったんですけれど、フィアットさんにとって、この500が日本でアーティストとコラボした初めての市販車だって。それを聞いた時、改めて“スゴいことだ!”って感じました。この500が誕生するまで、私のことを知らなかったフィアットファンの方が購入してくださったり、いまでもハッシュタグをつけてSNSにアップしてくださる方もいて。コラボレーションのスタートから1年経って、フィアットさんとのお仕事の大きさに、改めてビックリ。いまもまだ、興奮冷めやらぬ感じです。私の中で、今後もずっと語り継ぐ素敵なお仕事になりました」 思い出いっぱいのコラボレーション Chocomooさんにとって、フィアットとのコラボレーションは初めて尽くしだったとのこと。改めて、印象的な出来事をお聞きしました。  「初めての撮影で500を運転したことが、とても印象に残っていますね。撮影スタッフを乗せて、渋谷とか表参道とかを走るって、なかなか緊張したんですけれど、とてもおもしろかったです。他にも、フィアットとReebokのコラボキャンペーンの撮影も、ライブペインティングも楽しかったし。ひとつに絞れないですね(笑)。私のファンの方が『500 Super Pop Chocomoo Edition』を購入してくれたり、遠方からイベントに駆けつけてくれたりしたことも、とても嬉しかったです」   「“FIAT PICNIC 2018”も、いい思い出ですね。オーナーのみなさんが自分のフィアットに乗ってきて、テントで過ごしたり、交流したり。ペットとドッグランに行って、飼い主さんたちが仲良くなるのに似ている感じがして。みんなが笑顔で楽しそうだったのが、とても印象的でした。私も、オーナーの方といろいろお話ししたり、触れ合ったりして、とても楽しかったです」 オーナーとクルマの距離が近いブランド 500と出逢ってから1年。Chocomooさんの中で、フィアットに対する思いに大きな変化があったとのこと。 「今回のコラボレーションのお話をいただいた時、500に会わせてもらったんですけれど、最初は“丸い”っていう見た目のイメージが先行していて(笑)。でも、会うたびにドンドン愛着が湧いてきましたね。例えるなら、ペットみたいな感じ。なので『500 Super Pop Chocomoo Edition』の実車を見たときは、本当に感動しました。フィアットオーナーさんって、目的地までクルマを運転しているというより、クルマを目的地へ連れて行っているという感じがして。クルマも一緒に楽しませているみたいな。愛車に対して、深い愛情を持っているファンの方が多いことに、すごく感動しました。フィアットをひと言で表現すると「家族」っていう感じ。オーナーさんと愛車との関係もそうですし、オーナーさん同士の間にもファミリー感があって。そういった雰囲気が、とてもいいなぁと。フィアットは、オーナーとクルマとの距離感がすごく近いブランドだと感じています」   精力的に活動するChocomooさんに、今後の目標についてお聞きしました。  「いままでに作ったことのない大きな規模のデザインや、映像作品にもチャレンジしたいですね。あと、個展も開催したいと思っています。フィアットさんとのお仕事の中で、トリプルコラボをはじめ、いままでに体験したことのなかったことをいろいろ経験できて、とてもおもしろかったですし、刺激的でした。これからも枠にとらわれず、ひとつの作品を通して、そこから繋がりが出来て広がっていくような作品作りができたらいいなぁと思っています」  アパレルやお菓子をはじめ、活躍の場をさらに広げるChocomooさん。『500 Super Pop Chocomoo Edition』オーナーのみなさんも、フィアットとのコラボレーションを通じてファンになった方も、今後の彼女の活躍に大注目。これからもChocomooさんから目が離せませんね。 EVERYONE LOVES FIAT 試乗キャンペーン実施!2月1日(金)〜2月28日(木)の期間中、正規ディーラーにてご試乗いただいた方を対象に、「フィアット・meiji ザ・チョコレート オリジナルセレクトBOX」をプレゼントいたします。(プレゼントは多数ご用意しておりますが、品切れの際はご了承ください) バレンタインシーズンに、大好きなフィアットと走ろう!お気に入りのフィアットに出逢えるこのチャンスをお見逃しなく!詳しくはコチラ […]

NEWS

POPの共演〜Chocomooエディション発売!

人気アーティストのアルバムジャケットやお菓子のパッケージ、LINEやiMessageのスタンプ、日本国内のみならずアジアでも精力的に活動するイラストレーター・Chocomoo(チョコムー)。 世界中から注目を浴びつつある彼女の、モノクロでありながらポップさとFUNが溢れる世界と、ポップアートそのもののようなクルマFIAT500がコラボした「500 Super Pop Chocomoo Edition」が5月26日から全国のフィアット正規ディーラーで100台限定で販売されます。   日本人アーティストとして、はじめてFIAT500との公式なコラボを果たしたChocomooさんに、デザインへの意気込み、そして自身のコダワリなどについて語ってもらった。       「2016年ごろから、なぜだかクルマに関わる機会が増えてきたんです。なにしろ、これまで立体物に描くことすらあまりしてこなかったのですが、ちょうどこのころ、韓国ソウルのセレクトショップから「クルマのライブペインティングをして欲しい」という依頼が来たんです。なんとそれが黄色いFIAT500X。特にクルマに詳しいという方ではなかったので、あれ? なんだか丸っこくてカワイイなあ、あ、FIATっていうんだ…。というのが私とFIATとの出会いでした。」     国内外で活躍するChocomooさん。その後も、沖縄で軽トラックをつかったメッセージアートや、アメリカのロスではプランターと化したクルマとの出会いなどと、その後もクルマとの不思議なつながりが続き、ついに今回のFIAT500 Super Popでのコラボに至った。   「お、これは完全に「クルマの風が吹いている」って感じがしました(笑)。何かの思し召しなのかもしれませんね…。」   愛くるしく、楽しさ溢れる作風で人気のChocomooワールド。そのイラストはモノクロを基調としている。今回のスペシャルエディションもその世界観を踏襲しブラック&ホワイトのモノトーンをベースにしている。       「私の絵のほとんどがモノクロなのは、決して色の世界が嫌いというわけではなく、むしろ、わたしの絵を見た人が、自分なりの世界、つまり各々が自由に自分の好きな色を想像できるようなものであって欲しいと思っているからなんです。 たとえモノクロでも気分が明るくなったり、楽しい世界や気持ちを想像をしてもらいたい、そう願うからこそのコダワリなんだと思います。」   そんなChocomooさん。FIAT500というキャンパスにインスパイアされることがとても多いという。   「ある意味、イラストという平面の世界の人間なのですが、平面以上に空間という概念を大切にしたいと常々思っているんです。ボディの曲線あふれる立体感、なぜだかスッと入っていける佇まい、そしてクラシックなんだけど個性的なインテリア。なんだかとても楽しい空間を構成している500を目の前にした時、なお一層その思いが強くなりました。 だから、自分を表現するキャンパスとして考えた時、とてもワクワクしました。 ちょうどこのお話をいただくすこし前に、あのアンディ・ウォーホルのアートカーの実物とそのメイキング映像を見る機会があって、まさに大きな衝撃を受けていたところだったんです。だからFIAT500なんて世界的な名車をキャンパスに、私の世界を表現できるなんて本当に幸せなことだと思っています。」   実際に500に触れてみた上で受けたインスピレーションや、そこから生まれたデザインのみどころについて聞いてみた。     「可愛くて、でも十分な空間があって、運転しやすく使いやすくて実用的。外も中もなんだかとにかく楽しそうな雰囲気いっぱいの500を、私なりに“もっと”楽しくしたいというのが大きな目標。わたしの絵も楽しんでもらいたいのはもちろんなのですが、500という空間の中で、それがどう最大限に活きるか活かせるかが重要だと思っています。だって、いつも付き合える、長く付き合える、気軽で居心地のいい空間であり続けることって、とても大事なことだと思うんです。」         「私のイラストはニューヨークのグラフィティに大きな影響を受けています。いわゆる美術学校といった正規の教育を受けたのではなく、本当に思うがままに絵を描き続けてきたので、どちらかというと描き込みの密度が高いという傾向があると思っています。でも、最近はすごく「余白」についてこだわるようになってきていて…。そうした“今”の感覚を活かしつつ、Super Popの室内空間を演出したいと思っています。」         音楽が大好きで友達と訪れたニューヨークがキッカケとなり、イラストレーターとしてブレークしたChocomooさん。実はイタリアにはまだ足を踏み入れたことがないという。   「このお話とは全く関係なく、たまたまそのニューヨークへ一緒に行った友人と、今度はイタリアに行こうって話をしていたところなんです。さっきの“風”の話じゃありませんけど、こういう流れの中ですから、きっとまたいろんな素敵な出会いがある気がします。これまでが「黒の時代」、イタリアから帰ってきたら「色の時代」なんて言われて作風が変わったりして…。(笑)」   強くはじけるような感性と、明るい作風そのままの素敵なChocomooさんの笑顔は、FIAT500同様、楽しさにあふれていました。   そんな、ちょっとシックで楽しさいっぱいのChocomooワールドx FIAT500。どんな楽しさと驚きが散りばめられているのでしょうか。 […]

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LIFESTYLE

世界の海を股にかけた男〜マリンイラストレーター高橋唯美

周囲を大海原に囲まれた海洋国家日本…。しかし、ヨットやクルーザーなどを楽しむマリンレジャーの世界では、欧米諸国がリードしています。船舶の設え、マリーナなどの設備、そこでの時間を楽しむためのソフトウエアまで、まだまだ学ぶべき点があるようです。 イラストレーターであり、ジャーナリストとしても活躍する高橋唯美(たかはし ただみ)さんは、ヨット雑誌の最高峰「Sail」から招かれ、活動の場をアメリカのマサチューセッツ州に移したほどの経歴の持ち主。 どこか温かで、スマート…しかしスケールモデルのような緻密さを備えたその作風は、マリンレジャーで世界的な評価を受け、「Tadamiの愛称で各国のヨット、ボート関係者から愛されてきました。40年にも及ぶキャリア、200近いメーカーの訪問と350を超えるヨットやボートへの試乗など、まさに日本の第一人者と呼べる方です。     文字通り世界の海を股にかけてきたTadamiさんは、現在も江戸の香りが残る東京は八丁堀の運河のほとりで忙しい毎日を送られていますが、自宅兼事務所ビルは、裏口からそのまま愛艇に乗り込むことができるという素晴らしいロケーションで、クルージングや釣りを生活の一部として楽しむ、さすがのボートライフを送っていらっしゃいます。       たどり着いた、小さなボートでの楽しみ 小型のディンギーから100ft超の豪華クルーザーまで、長年世界の船に乗り、描いてきたTadamiさんがたどりついた愛艇は意外にも小型ボート。ボストンホエラーの17ftというモデルが現在の東京における相棒です。 「大きな船は船体だけではなくて維持費、ランニングコストいろいろかかるじゃないですか。また、80ftとかになってしまうと、一人じゃ無理。クルーが必要になるわけです。そうなると、人間関係とかマネージメントとかが面倒くさくなる。よく、大型船のオーナーさんがクルーを連れて飯に行ったりするのを見るんですが、結構気を遣ってるんですよね。大変だなあって思います。まぁ、私の人間の小ささですかね(笑)。遊びくらい好き勝手にやりたいから、一人で自由に取り回せるのになっちゃうんです。 そういうTadamiさん、沖縄の西表島と広島にもやはり、同サイズのコンパクトなボートを一艇ずつお持ちだそうで…。 「よく、小さいの3つ分で大きいのをひとつ持ったほうがいいじゃない?と言われます。でも、そのマリーナ1か所を中心とした遊び方しかできなくなっちゃうでしょ。今のようにしておくと、東京湾、瀬戸内海、沖縄…と、まったく異なった世界が楽しめるじゃないですか。 楽しい時間、心豊かな暮らしをエンジョイするという点で、彼はすでに日本人離れしているのかもしれません。     コンパクトさに込められたプライドとは… Tadamiさんは、フィアット500のファン。そのコンパクトさにこそ魅力があると言います。 「仕事で国産のボートに乗るようになってからですね。フィアット500が一層好きになったのは…。ボートに限った話ではないと思うんですが、国産のボートって小さいなりの作りしかしないんですよ。それにとても腹が立っていたんです。だって、小さいってことですでにハンデがあるわけだから、それを補う何かを与えてやってほしいんです。ちょっとリッチな感じのインテリアでもいいし、居心地のよい雰囲気でもいい…。素材やちょっとした造りとか、小さな物にこそ魂を込めてほしいと…。その点、フィアット500って、小さいという可愛いさと、シンプルだけど、みすぼらしさを微塵も感じさせない魅力を持っているじゃないですか。コンパクトであってもプライドを持って乗れるように仕上げてあるってすごいと思います。まさにあのサイズを武器にしてるとさえ思えますよね。 そんなTadamiさんが世界的なマリンイラストレーターになるきっかけは、クルマへの憧れからはじまっています。 「自動車のデザイナーになりたくて育英高専へ行ったんですね。2年後輩に由良卓也(日本を代表するレーシングカーデザイナー)君がいます。当時の製図の先生がベルギー人のすごく厳格な人で、図面に日付とか縮尺とか名前とかサインするときでさえ、必ず60度の角度で書くように指示されるんです。定規当てるよりはやいから、僕はフリーハンドでやっちゃうんだけど、そこに全部赤が入る(笑)。こりゃ向いてないな、やっぱりイラストが好きだなと確信しました。     やがてその作風は「平凡パンチ」の編集者の目に留まり、自動車のカスタムに関する連載や鈴鹿1000㎞レースのイラストルポなどを手掛け、ついにイラストレーターとしてデビューを飾ります。そして2年後、現在につながるヨット・ボート専門誌での活躍となっていきます。     セクシーさとモノづくり 自動車同様、ボートの世界でも大人気のMade in Italy。Tadamiさんは彼らのモノづくりをこう語る。 「なんともいえないセクシーさですかね。船はもちろんのこと、いろんなものやちょっとしたことにそれを強く感じますね。若いセクシーさもあれば、成熟した魅力もある。無からあそこまでセクシーなものを作り出す能力ってすごいですよ。船の世界でいうと、デッキ(甲板)のニスの塗り方ひとつにすごいコダワリがあったりするんです。 セクシーという表現は、ややもすると日本人にとっては刺激が強すぎるかもしれないが、まったくどう表現したらいいものか、日本語には適切な言葉が見当たらない…。 強いて言い換えるとするならば、なんともウキウキするようなというか、「楽しい」のちょっと先にあるオトナな感覚とでもいおうか…。もっとカワイイとステキとダンディといろんなものが混ざったものだったりする。     デッキのニスではないけれど、現行500にもいくつものセクシーさが息づいている。 「ボディの四隅やフェンダーのカーブなどはさすがだなと思わせるものだし、車内でいえばたとえばハザードスイッチなんかもそう。日本車やドイツ車のそれは文字通り緊急時のボタンでしかないんだけど、このわざわざクリア厚盛りにされたハザードスイッチは、完全に赤のアクセントとしてダッシュパネルの主役になっている。 しかも、ボディと同色のこのパネルの凹みに加担している微妙なRとか…。単に凹ませたんじゃなく、左右から緩やかになっている部分などまさにセクシーとしか言う他ない。この妖しさがイタリアンというか500の好きなところですね。」 こうした小さなオシャレの積み重ねが、Tadamiさんのいう「セクシーさに繋がっていき、シンプルなオトナの世界と可愛げのある若々しい世界の混ざり合う独特の空間を作り出しているのかもしれない。     「やっぱり、小さいけど、カワイイけど、でもやっぱりオトナなんだよなあ。500って…。 楽しい時間を知り尽くした達人がふとつぶやくその表情には、彼がはじめて乗り物の「顔」を意識させたという500同様、やわらかな笑顔が満ちあふれていた。 […]