女性のエンパワーメントをテーマにしたデジタルマンガ 全話公開 女性が自分らしく生きることを応援する、女性のエンパワーメントをテーマにしたデジタルマンガがイタリアを代表するカーブランドFIAT(フィアット)が取り組むプロジェクト「#ciaoDonna」(※)で展開されています。マンガの主人公と同年代の女性たちに感想を聞くと、現代を生きる女性の性をめぐるさまざまな社会課題が見えてきます。マンガを描いたイラストレーターの伊吹春香さん、監修を手掛けた産婦人科医の遠見才希子さん、公益財団法人ジョイセフの市民社会連携グループ長の小野美智代さんがこうした課題を解決するために今できることについて語り合いました。 性の問題について正しく知る機会がなかった大人たちにも読んでほしい デジタルマンガは全4話で、フィアットと公益財団法人ジョイセフが共同で制作し、17歳の女子高生、21歳の女子大生、28歳のキャリアウーマン、35歳の専業主婦の4人が1話ずつ主人公として登場し、それぞれの年代の女性の性、生き方を考えるストーリーが進みます。主人公と同年代の女性たちからは、「性について知ることがとても大切」(高校生)、「性にかかわる話題がタブー視されていることが原因にある」(大学生)「性教育の大切さを実感」(主婦)といった声が聞かれました。 遠見 日本では、性の問題を大人が子どもたちに考える機会をつくれていないという現状があります。17歳のストーリーの監修に携わりました。日本の学校の性教育の内容は国際的には遅れています。コンドームの使い方なども詳しく紹介するなど、性教育の基本的な内容を盛り込みました。大人は子どもたちに対して、上から目線ではなく一緒に考える姿勢が大切です。個人的には、女子高校生の問いかけに、保健室の先生が「教えていなくてごめんなさーい!!」と答える場面が気に入っています。 また、先生の「相談してくれてありがとう」「困ったときはいつでもサポートするわ」という言葉にあるように、大人たちが子どもたちの気持ちに寄り添い、何かあった時に味方になるといった姿勢を示してほしいと思います。性の問題について、自分自身も正しく知る機会がなかった大人たちのためのマンガでもあると思っています。 小野 女性をエンパワーするマンガです。この日本社会で生きていく中で、男女の意識の差、無意識の中に潜む根深いジェンダー観、それに起因するコミュニケーションの問題が女性を取り巻く問題の多くに起因しています。だから性別、年齢を問わず読んでもらいたいです。17歳のストーリーは、恋愛に関心があるないに関わらず、必要な知識として中学生にも読んでもらえたら。 遠見 実際、スマートフォンやインターネットの広がりで、低年齢のうちから性情報に触れる機会が増えました。性暴力は身近に存在することがあります。妊娠と出産は基本的に女性の体だけにしか起こりません。男性と女性には決定的な違いがあります。包括的性教育を行うと、性行動に慎重になって初交年齢が上がるという研究結果があります。 伊吹 最初のストーリーでは、主人公の女子高生に対して、保健室の先生が説教するような書き出しにしてしまい、遠見先生に言われてハッとしました。子どもたちと同じ目線で考える姿勢が大切だと知りました。こうした感覚がもっと世の中に広がればいいなあと考えて描きました。また、全体のストーリーを通じて、「なぜ男性がそう思ってしまうのか。男性側の視点に立つと男性なりの葛藤があるのでは」と感じました。現在、社会は変わっている部分と変わっていない部分がありますが、「ジェンダーレス」化は進んできています。洋服などもユニセックスなものが人気を集めているようにさまざまなところで変化は起きています。今回のストーリーに登場する男性はどういう心境だったのかといった男性バージョンをはじめ、男性を主人公にしたマンガも描きたいと思いました。 「性」を意識することなく生きるために。生き方のヒントを伝えたい 遠見 今の日本社会は変わってきていますが、女性である、ということだけでの生きづらさは、まだまだあると思います。どんな性でも生きやすい社会になればいいなと思っています。そのためには、社会の制度や仕組みを整えていくことが大切です。また、女性が仕事をするうえでは、妊娠する時期についてのプレッシャーがあるかもしれませんが、「産む選択」「育てる選択」の少なさも影響しているのではないかと思います。もっともっと選択肢が増えれば生きやすい社会をつくることができると思います。「今、これからどうしていくか」をいろんな世代の人で話し合っていきたいです。特に若い世代の声を大事にしたいですね。 小野 SRHR、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)は、すべての人が持っている権利です。日本はそれを自分ごととして考えることすら機会を十分に与えられているとは言えませんが、国際基準ではライフスキルの向上に、包括的性教育が有効だとされています。私たちは、一人ひとりが自分の性や身体と向き合い、自分らしい選択ができるための啓発活動を行っています。ラブ(Love)、アクト(Act)、ディサイド(Decide)のやり方は人それぞれで、私たちは一人として同じ人はいません。私自身は「こんなに多くの人が、自分らしい選択をしている、アイレディ(I LADY.)に生きている人がいる」という大人のサンプルを見せることが一番の啓発だと思っています。これだけ情報が氾濫していると便利な一方で逆に迷ったり、悩んだりする若者が多いのも実態です。「自分の人生は自分自身で決める」という力、ライフスキルを身につけるために、自分らしく選択している多様な大人の生き方を見せてあげたいです。このマンガを通じて、さまざまな生き方のヒントを伝えたいですね。 伊吹 真剣に話し合うと難しい話についてもマンガだからこそフランクに話せることがあります。「女性らしさ」「男性らしさ」といった性を意識することなく、みんなが自分の生きたいように生きていくにはどうしたらいいか。みなさん、ふだんの生活のレベルでも生きづらい部分があると思います。お互いが悪気なく言っていることの中に、お互いの首をしめていることがあると感じています。でも社会は変わってきています。「今のままで世の中終わらない。変わっていくのだよ」ということをもっと知らせていきたいです。 「日本社会の事実を伝えている」 内容に共感 また、今回の漫画の主人公と同年代の女性たちに、デジタルマンガの感想や女性のエンパワーメントについて、課題解決に向けて実践していることを聞きました。 私立潤徳女子高校(東京都)の生徒のみなさんからは、17歳の主人公のストーリーについて、「性について知ることはとても大切」「男性もマンガの内容を知るべき」「自分は未成年で性交を行いたくない」といった感想が寄せられました。 女子大学生(21歳)は、日常生活の中で女性であることで嫌な思いをすることについて「そもそも性的なことがタブー視されていることが原因にあると考えている。性についてパートナーや友達ともオープンに話せるように自分自身が話しやすい人になるように努力している」といいます。 大学院生の村上芽生さん(27歳)は、同年代が主人公のストーリーについて「共感の嵐。日本社会の事実を伝えている。次世代のために、ジェンダー役割にとらわれず、自分の好きなことをするように行動を変えていきたい」と語ります。そのうえで「こうした考えや活動に賛同する企業の商品を私たちが選択する行動もあるのでは」と提案しています。 主婦の久冨祥子さん(35歳)さんは、「性教育の大切さを実感した。社会的な環境が女性の活躍を阻んでいる側面もある。子どもがどんな大人になりたいかを常に考え、親が変わっていくことを意識している」と話しています。 FIATマンガプロジェクトのページはコチラ ※ #ciaoDonna フィアットは2018年春からすべての女性にエールを送るプロジェクト「#ciaoDonna(チャオ・ドンナ)」を進めている。イタリアでは親しい間柄で使われるあいさつの言葉「ciao」。そして女性という意味の「Donna」。この二つの言葉を組み合わせたメッセージは、年齢に関係なく、女性の活躍や飛躍、健康や楽しい暮らしなど、より楽しく充実した暮らしや未来をつくるために、女性のエンパワーメントを推進する活動を意味する。また、2011年から「Share with FIAT(シェア ウィズ フィアット)」を合言葉に、素晴らしい社会活動をしているさまざまな団体とコラボレーションをしながら、女性のエンパワーメントや子供たちの人権保護、動物愛護などの団体のサポートをしている。 #ciaoDonna公式Instagramアカウントはコチラ 遠見 才希子(えんみ・さきこ)
自分の幸せはもちろん、みんなの幸せを求める時代をつくっていきたい。フィアットは「Share with FIAT」を合言葉に様々なNPO法人と連携し、女性のエンパワーメントの向上や健康の促進、動物愛護、子供たちの教育環境の醸成、災害時の人道支援、そして若者の育成などの社会貢献活動を行なっています。これは国連の提唱するSDGs(持続可能な発展)に通じるアクションでもあります。ここではフィアットのパートナーであるNPO法人の2020年の活動を振り返ります。 アショカ・ジャパン 社会問題に取り組むチェンジメーカーを発掘しサポート 地球のみんなで社会問題を解決していく。そんな世界の実現を目指す社会起業家ネットワークASHOKA(アショカ)。いま世界では子どもの違法労働や、社会的弱者の差別、地球温暖化など、じつに様々な社会問題が生じています。複数の要因が複雑に絡み合ったこれらの問題の解決には、本質を探り出し、根本的に変革することが必要です。アショカではそうした取り組みを行う社会起業家を“アショカ・フェロー”として選出し、その取り組みが加速するようにサポートしています。 一方、世の中に次々に起こる社会問題に対し、その改善に取り組むチェンジメーカーの数は不足しているのが現状。そこでアショカでは、チェンジメーカーを育成する取り組みとして、12歳から20歳までの若者を対象に社会問題に取り組む人を支援する“アショカ・ユースベンチャー”を展開しています。同プログラムでは1年間の実験環境を通じて、彼ら・彼女らが向き合う社会の問題に、自らで解決策を見つけてアプローチする機会を提供しています。日本では2011年からアショカ・ジャパンとして活動を展開。2020年は新型コロナウイルス感染症という困難な事態が起こりましたが、アショカ・ジャパンではこの新たな問題に対する政府の対応に危機感を募らせ、不測の事態でも問題を見極めてアプローチできる人材の育成のため、ユースベンチャラーの数を増やす取り組みを強化。3年間で100人生み出すという、これまでの倍以上のペースに相当する野心的な目標を立ち上げました。 ユースベンチャラーの多くは他薦、すなわち積極的に発掘していかなければなりません。分野が特定されないなかで素質のある人材を見つけ出すのは至難のわざのようですが、そうしたなか人材発掘を進め、ユースベンチャーとして認定するかの可否を決めるパネル審査会を2ヶ月に1度ペースで実施。7月は2組、9月には3組、11月は2組を認定するなど、その数を着実に増やしています。このほか活動の認知拡大を図るアショカ・トークや、「社会を変える」をテーマとしたワークショップを学校で展開するなど、社会をより良くする活動に取り組む若者の発掘・支援や、若者が社会を変えるムーブメントを起こす活動に取り組んでいます。2021年も頻繁にパネル審査会を実施し、ユースベンチャラーを増やす取り組みを強化するなど、若者チェンジメーカーの育成に力を注いでいくとのこと。今後の活動に注目です。 ASHOKA JAPAN ルーム・トゥ・リード・ジャパン 低所得国で暮らす子どもたちに学習の機会を 「子どもの教育が世界を変える」を理念に、南アジアやアフリカなどの低所得国で暮らす低学年の子どもたちに識字(読み書き)教育を提供する活動や、中高生の女の子に高校卒業までの道のりを支える女子教育プログラムを展開しているRoom To Read(ルーム・トゥ・リード)。識字教育については、教育者のトレーニングに始まり、現地語で書かれた絵本等の教材の開発および流通、図書館の開設まで、現地のスタッフが政府と共同で行っています。また女子教育プログラムでは、男女不平等が残る社会背景の環境下で、彼女たちが学園生活を送りやすくする手助けをし、自らの意思を持って人生の重要な決断をするスキルを身につけるサポートをしています。具体的には、授業とは別にライフスキルを学ぶ教育プログラムの提供や、メンターと呼ばれる女性によるサポートで学業やメンタル面のバックアップなどを行っています。 2020年はコロナウイルス感染症の影響により、ルーム・トゥ・リードが支援を行っている16カ国では軒並み学校閉鎖となるなど、学習環境に弊害がもたらされました。コロナ禍はオンライン化への切り替えが困難なインターネットアクセスが限られる地域では特に深刻な問題となり、失業者が増えれば経済的な困窮に追い込まれ、子どもたちの学習継続が危ぶまれます。そこでルーム・トゥ・リードでは急遽、ラジオやテレビを通じて読み聞かせの授業を行ったり、教材の郵送による配布や、保護者に子どもたちの学習の継続を呼び掛けたりするなどして、子どもたちの学習環境が失われてしまわないように努めています。また、無数の島々で構成されリモート環境が発展していたインドネシアで展開していた遠隔教育の設備をグローバルに解放し、世界各地の子どもがオンラインで児童書や教材を読めるようにする方策にも取り組んでいます。 日日本においては2020年末、コロナ禍においても子ども達が学び続けられる活動「Action for Education 2020 – IMAGINE みんなのアクションで子ども達に教育を!」を展開中。これはみんなの力を合わせ、クリスマスの贈りものにコロナ禍にある子ども達3,000名に教育というギフトを贈ろうという取り組みです。また、去る11月28日にオンラインイベントを開催し、これまでリアルイベントとして行っていた支援者への活動の報告や、支援を受ける子どもたちにとっても励みとなる番組の提供を行いました。オンラインイベントには、ルーム・トゥ・リード・ラオス女子教育プログラム卒業生で、現在日本語を勉強中の大学生からの日本語によるメッセージや、女子教育プログラムのメンターの方や、支援を受けているタンザニアの子どもたちからのメッセージを紹介するなど、ルーム・トゥ・リードの活動が詳しくわかる内容となっています。 ルーム・トゥ・リード・ジャパン スマイリングホスピタルジャパン 病気の子どもたちが本物のアートに触れ、前向きな気持ちになるように 重い病気と闘う子どもたちに本物のアートと触れ、ワクワクしてもらいたい。そして前向きな気持ちで病気と闘ってもらいたい。そんな想いからマジシャンや音楽家、美術家などアーティストとともに病院を訪れ、子どもたちに本物のアートに親しんでもらう活動を行っているスマイリングホスピタルジャパン。全国の30の病院および14の施設に、年間で計500回以上訪問し、子どもたちの笑顔を引き出しています。しかし今年はコロナウイルス感染症の拡大により、病院への訪問が叶わなくなってしまいました。子どもたちはいま、両親との面会時間まで大幅に短くなってしまい、病室でほとんどの時間をひとりで過ごしながら、病気と闘っているのです。 こういう時期だからこそ、子どもたちに笑顔になってほしい。そうした思いからスマイリングホスピタルジャパンでは、訪問活動の代わりに、アーティストの方と協力して塗り絵や紙芝居セット、ステッカーといったアクティビティのプレゼントを行ったり、YouTubeの『スマイリングちゃんねる』で動画配信を行ったりしています。スマイリングちゃんねるでは、マジックや音楽遊び、実験など、子どもたちが観るだけでなく、一緒に手を動かして楽しめる動画を提供しています。すでにその数は計70作以上に! スマイリングホスピタルジャパン代表理事の松本惠里さんは「病院にはいつ訪問できるようになるか見通しが立たない状況のなか、アクティビティの提供や動画配信を通じて、病院とも子どもたちともつながり続けることが大切だと思っています」と活動を続けていくことの重要性について話してくださいました。スマイリングホスピタルジャパンでは、寄付による支援のほか、ホームページやFacebookのシェアや、アーティストの動画編集のサポートなど様々なかたちで協力してくださる方を募集しています。また、スマイリングホスピタルジャパンをフィーチャーした本が2021年2月に英治出版から登場する予定も。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。 スマイリングホスピタルジャパン ピースウィンズ・ジャパン 災害の緊急支援から復興まで幅広くサポート 自然災害や紛争、貧困などで生活の危機に瀕した人々を支援する国際NGO、ピースウィンズ・ジャパン。これまでに世界33の国や地域で活動を繰り広げ、数多くの人々に支援の手を差し伸べてきました。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大や、各地で起こった自然災害への対応で古今東西、支援活動を繰り広げました。ピースウィンズ・ジャパンが運営する空飛ぶ捜索医療団ARROWS(アローズ)は、1月に中国・武漢へマスクなどの物資支援を開始したほか、長崎に停泊中のイタリア籍クルーズ船や、集団感染病院へ医療支援などを行い、コロナという見えない敵と対峙しました。このほか令和2年7月に日本を襲った豪雨への緊急支援、さらには世界各地での衛生啓発や緊急支援など、幅広い分野で活躍しています。
毎年10月11日は国連が定めた「国際ガールズ・デー」。この日にちなんで女の子の権利やエンパワーメントを広く知ってもらうためのイベントやアクションが世界各地で行われます。女性に人気のイタリアのカーブランド「FIAT」(フィアット) と公益財団法人ジョイセフは、女性のエンパワーメントについて分かりやすく学ぶことができるデジタルマンガを制作、公開しました。「FIAT」を展開するFCAジャパン・マーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセさん、ジョイセフの市民社会連携グループ長の小野美智代さん、マンガを描いたイラストレーターの伊吹春香さんの3人が女性のエンパワーメントについて語り合いました。 女性が自らの意思で人生を選択することの大切さを知ってほしい 小野 女性が「自分の人生を自分で決める」ことが、私たちジョイセフが行っている「I LADY.」(アイレディ、注1)のコンセプトです。今回のデジタルマンガの制作プロジェクトでは、女性が自らの意思で人生を選択することの大切さを伝えるとともに、日本ではバッシングされがちな性教育についても抵抗なく学んでほしいという思いを込めました。 ティツィアナ このプロジェクトは、1年前の伊吹さんとの出会いから始まりました。フィアットが進めている「#ciaoDonna」 (チャオ・ドンナ、注2)のプロジェクトで、女性の性についてもっと丁寧に伝えていきたいと考えていました。ちょうどそのころ、伊吹さんのイラストをインスタグラムで見てとても格好いいと思い、マンガ制作をお願いしました。マンガをみんなの共通言語として、女性同士のつながりができるようにしたいです。 小野 こうしたテーマについて、文字では読みたくないと思う人もマンガにはすっと吸い込まれて気が付いたら読み終えています。言葉よりも絵の方が、共感を得られる場合も多いですね。マンガを通して、すべての女性が、自分の意思で自分の人生を切り開き、心から笑顔で過ごしていけるよう、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)についても理解が深まっていけばと思っています。 伊吹 鳥取で主にレトロな雰囲気の女の子のイラストを描いています。鳥取のメーカーで、独自のフィアット専用シフトノブを製作されている会社の方から、「フィアットのイメージに合う」と依頼を受けて、“フィアットと女の子”という組み合わせの絵を描いていました。それが今回のプロジェクトへとつながりました。「女性のエンパワーメント」という言葉は、まだ広くは浸透していませんが、マンガだとその言葉を知らなくても、知ってほしい内容が伝わるなあと感じました。 女性の「性」に対する問題意識を持つきっかけに ティツィアナ 実は伊吹さんもこのプロジェクトでマンガを描く中で、エンパワーメントを考えるご自身の旅が始まったそうですね。 伊吹 私自身も、女性のエンパワーメントについて問題意識を持つようになりました。これまでの自分であれば、望まない妊娠をしてしまった人は、「性に対して知らないことが悪いのでは」という考えがどこかにありました。このプロジェクトでストーリーを一緒に考える中で、「知らないことが悪いことではない」「知らない人たちをサポートしていく気持ちを持っていかなければならない」と思えるようになりました。自分自身も描きながら、強くなりました。 小野 ティツィアナさんが「日本の性教育の状況をなんとかしたい」と、海外の性教育について教えてくださいましたね。 ティツィアナ 女性は一緒になるといろいろなことを話すことができますが、日本では、性、セクシュアリティについて話題にすることは、少しタブーだったり恥ずかしさもあったりしてなかなかオープンに話すことができません。私たちは、もっとオープンに自分のセクシュアリティについて話した方がいいと思っています。また、海外の性教育と比べると日本の性教育は十分とは言えません。望まない妊娠をするなど自分の人生の選択を自分で決められなくなってしまう心配もあります。 4つのストーリー、4人の女性が登場 小野 こうした意味で今回のマンガのストーリーは、みなさんがきっと、自分自身の問題として読んでくださると思います。伊吹さんが描いた4つのストーリーでは、それぞれ年齢の違う4人の女性が登場します。 伊吹 第一話の主人公は17歳の女子高生です。保健室の先生と女子高生の会話がメーンです。キーワードは「知ること」です。望まない妊娠を防ぐためにも17歳には、避妊の常識として知ってほしい内容をお伝えしています。第二話の主人公は21歳です。自分に自信が持てないため、付き合っている男性に嫌われたくないという思いから、何でも彼の言うことに合わせてしまいます。彼から「避妊をしたくない」と言われても合わせてしまいます。キーワードは「自信」です。 ティツィアナ 今の時代、女性は自由で強くなるべきなのに、付き合っている相手との関係ではすごく弱くなっています。仕事でもボスに対してなどで同じようなケースが見られます。このように女性が弱くなってしまう点を補うにはどうずればいいかをきちんと考えるべきだと思います。 小野 この21歳の女性のストーリーはステレオタイプによる男女の恋愛観がテーマです。ぜひ男性にも読んでもらいたいです。男性も一緒に行動を変えていかないと世の中は変わらないです。 伊吹 第三話の主人公は28歳のキャリアウーマンです。キーワードは「戦う」です。仕事での上昇志向は強いものの、30歳を目前に結婚などについて周囲からのプレッシャーがあることを感じています。私も30歳近くになってアラサーと呼ばれた時、女性としての期限があるような気にさせられた経験があります。 小野 最後の第四話は、男女のパートナーシップ、夫婦関係について考えさせられます。 伊吹 主人公は35歳の主婦です。この家庭は、夫婦のコミュニケーションがうまくいっていないケースです。男性も子育てや家事のことを当たり前にするという世の中の常識ができていたら生まれていない「すれ違い」を描きました。 ティツィアナ ここでは夫婦が素直になって思っていることを言える環境、話し合い、理解し合うことが大事ということも伝え、結末はとてもポジティブな内容になっています。しかし、実際の社会では毎日、世界のどこかで自分のパートナーに殺されるなどの被害に遭っている女性がいます。こうした被害をなくすためにも、女性のエンパワーメントを考えることがとても大切です。 フィアットの「 #ciaoDonna 」(チャオ・ドンナ)のサイトで公開