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マンガで学ぶ。女性が自分らしく生きるために必要なこととは?

女性のエンパワーメントをテーマにしたデジタルマンガ 全話公開 女性が自分らしく生きることを応援する、女性のエンパワーメントをテーマにしたデジタルマンガがイタリアを代表するカーブランドFIAT(フィアット)が取り組むプロジェクト「#ciaoDonna」(※)で展開されています。マンガの主人公と同年代の女性たちに感想を聞くと、現代を生きる女性の性をめぐるさまざまな社会課題が見えてきます。マンガを描いたイラストレーターの伊吹春香さん、監修を手掛けた産婦人科医の遠見才希子さん、公益財団法人ジョイセフの市民社会連携グループ長の小野美智代さんがこうした課題を解決するために今できることについて語り合いました。       性の問題について正しく知る機会がなかった大人たちにも読んでほしい デジタルマンガは全4話で、フィアットと公益財団法人ジョイセフが共同で制作し、17歳の女子高生、21歳の女子大生、28歳のキャリアウーマン、35歳の専業主婦の4人が1話ずつ主人公として登場し、それぞれの年代の女性の性、生き方を考えるストーリーが進みます。主人公と同年代の女性たちからは、「性について知ることがとても大切」(高校生)、「性にかかわる話題がタブー視されていることが原因にある」(大学生)「性教育の大切さを実感」(主婦)といった声が聞かれました。     遠見 日本では、性の問題を大人が子どもたちに考える機会をつくれていないという現状があります。17歳のストーリーの監修に携わりました。日本の学校の性教育の内容は国際的には遅れています。コンドームの使い方なども詳しく紹介するなど、性教育の基本的な内容を盛り込みました。大人は子どもたちに対して、上から目線ではなく一緒に考える姿勢が大切です。個人的には、女子高校生の問いかけに、保健室の先生が「教えていなくてごめんなさーい!!」と答える場面が気に入っています。 また、先生の「相談してくれてありがとう」「困ったときはいつでもサポートするわ」という言葉にあるように、大人たちが子どもたちの気持ちに寄り添い、何かあった時に味方になるといった姿勢を示してほしいと思います。性の問題について、自分自身も正しく知る機会がなかった大人たちのためのマンガでもあると思っています。 小野 女性をエンパワーするマンガです。この日本社会で生きていく中で、男女の意識の差、無意識の中に潜む根深いジェンダー観、それに起因するコミュニケーションの問題が女性を取り巻く問題の多くに起因しています。だから性別、年齢を問わず読んでもらいたいです。17歳のストーリーは、恋愛に関心があるないに関わらず、必要な知識として中学生にも読んでもらえたら。 遠見 実際、スマートフォンやインターネットの広がりで、低年齢のうちから性情報に触れる機会が増えました。性暴力は身近に存在することがあります。妊娠と出産は基本的に女性の体だけにしか起こりません。男性と女性には決定的な違いがあります。包括的性教育を行うと、性行動に慎重になって初交年齢が上がるという研究結果があります。 伊吹 最初のストーリーでは、主人公の女子高生に対して、保健室の先生が説教するような書き出しにしてしまい、遠見先生に言われてハッとしました。子どもたちと同じ目線で考える姿勢が大切だと知りました。こうした感覚がもっと世の中に広がればいいなあと考えて描きました。また、全体のストーリーを通じて、「なぜ男性がそう思ってしまうのか。男性側の視点に立つと男性なりの葛藤があるのでは」と感じました。現在、社会は変わっている部分と変わっていない部分がありますが、「ジェンダーレス」化は進んできています。洋服などもユニセックスなものが人気を集めているようにさまざまなところで変化は起きています。今回のストーリーに登場する男性はどういう心境だったのかといった男性バージョンをはじめ、男性を主人公にしたマンガも描きたいと思いました。       「性」を意識することなく生きるために。生き方のヒントを伝えたい 遠見 今の日本社会は変わってきていますが、女性である、ということだけでの生きづらさは、まだまだあると思います。どんな性でも生きやすい社会になればいいなと思っています。そのためには、社会の制度や仕組みを整えていくことが大切です。また、女性が仕事をするうえでは、妊娠する時期についてのプレッシャーがあるかもしれませんが、「産む選択」「育てる選択」の少なさも影響しているのではないかと思います。もっともっと選択肢が増えれば生きやすい社会をつくることができると思います。「今、これからどうしていくか」をいろんな世代の人で話し合っていきたいです。特に若い世代の声を大事にしたいですね。 小野 SRHR、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)は、すべての人が持っている権利です。日本はそれを自分ごととして考えることすら機会を十分に与えられているとは言えませんが、国際基準ではライフスキルの向上に、包括的性教育が有効だとされています。私たちは、一人ひとりが自分の性や身体と向き合い、自分らしい選択ができるための啓発活動を行っています。ラブ(Love)、アクト(Act)、ディサイド(Decide)のやり方は人それぞれで、私たちは一人として同じ人はいません。私自身は「こんなに多くの人が、自分らしい選択をしている、アイレディ(I LADY.)に生きている人がいる」という大人のサンプルを見せることが一番の啓発だと思っています。これだけ情報が氾濫していると便利な一方で逆に迷ったり、悩んだりする若者が多いのも実態です。「自分の人生は自分自身で決める」という力、ライフスキルを身につけるために、自分らしく選択している多様な大人の生き方を見せてあげたいです。このマンガを通じて、さまざまな生き方のヒントを伝えたいですね。 伊吹 真剣に話し合うと難しい話についてもマンガだからこそフランクに話せることがあります。「女性らしさ」「男性らしさ」といった性を意識することなく、みんなが自分の生きたいように生きていくにはどうしたらいいか。みなさん、ふだんの生活のレベルでも生きづらい部分があると思います。お互いが悪気なく言っていることの中に、お互いの首をしめていることがあると感じています。でも社会は変わってきています。「今のままで世の中終わらない。変わっていくのだよ」ということをもっと知らせていきたいです。       「日本社会の事実を伝えている」 内容に共感   また、今回の漫画の主人公と同年代の女性たちに、デジタルマンガの感想や女性のエンパワーメントについて、課題解決に向けて実践していることを聞きました。     私立潤徳女子高校(東京都)の生徒のみなさんからは、17歳の主人公のストーリーについて、「性について知ることはとても大切」「男性もマンガの内容を知るべき」「自分は未成年で性交を行いたくない」といった感想が寄せられました。     女子大学生(21歳)は、日常生活の中で女性であることで嫌な思いをすることについて「そもそも性的なことがタブー視されていることが原因にあると考えている。性についてパートナーや友達ともオープンに話せるように自分自身が話しやすい人になるように努力している」といいます。     大学院生の村上芽生さん(27歳)は、同年代が主人公のストーリーについて「共感の嵐。日本社会の事実を伝えている。次世代のために、ジェンダー役割にとらわれず、自分の好きなことをするように行動を変えていきたい」と語ります。そのうえで「こうした考えや活動に賛同する企業の商品を私たちが選択する行動もあるのでは」と提案しています。     主婦の久冨祥子さん(35歳)さんは、「性教育の大切さを実感した。社会的な環境が女性の活躍を阻んでいる側面もある。子どもがどんな大人になりたいかを常に考え、親が変わっていくことを意識している」と話しています。     FIATマンガプロジェクトのページはコチラ     ※ #ciaoDonna フィアットは2018年春からすべての女性にエールを送るプロジェクト「#ciaoDonna(チャオ・ドンナ)」を進めている。イタリアでは親しい間柄で使われるあいさつの言葉「ciao」。そして女性という意味の「Donna」。この二つの言葉を組み合わせたメッセージは、年齢に関係なく、女性の活躍や飛躍、健康や楽しい暮らしなど、より楽しく充実した暮らしや未来をつくるために、女性のエンパワーメントを推進する活動を意味する。また、2011年から「Share with FIAT(シェア ウィズ フィアット)」を合言葉に、素晴らしい社会活動をしているさまざまな団体とコラボレーションをしながら、女性のエンパワーメントや子供たちの人権保護、動物愛護などの団体のサポートをしている。   #ciaoDonna公式Instagramアカウントはコチラ   遠見 才希子(えんみ・さきこ) […]

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フィアットが大切にしているシェアの気持ち「Share with FIAT」

自分の幸せはもちろん、みんなの幸せを求める時代をつくっていきたい。フィアットは「Share with FIAT」を合言葉に様々なNPO法人と連携し、女性のエンパワーメントの向上や健康の促進、動物愛護、子供たちの教育環境の醸成、災害時の人道支援、そして若者の育成などの社会貢献活動を行なっています。これは国連の提唱するSDGs(持続可能な発展)に通じるアクションでもあります。ここではフィアットのパートナーであるNPO法人の2020年の活動を振り返ります。     アショカ・ジャパン 社会問題に取り組むチェンジメーカーを発掘しサポート   地球のみんなで社会問題を解決していく。そんな世界の実現を目指す社会起業家ネットワークASHOKA(アショカ)。いま世界では子どもの違法労働や、社会的弱者の差別、地球温暖化など、じつに様々な社会問題が生じています。複数の要因が複雑に絡み合ったこれらの問題の解決には、本質を探り出し、根本的に変革することが必要です。アショカではそうした取り組みを行う社会起業家を“アショカ・フェロー”として選出し、その取り組みが加速するようにサポートしています。     一方、世の中に次々に起こる社会問題に対し、その改善に取り組むチェンジメーカーの数は不足しているのが現状。そこでアショカでは、チェンジメーカーを育成する取り組みとして、12歳から20歳までの若者を対象に社会問題に取り組む人を支援する“アショカ・ユースベンチャー”を展開しています。同プログラムでは1年間の実験環境を通じて、彼ら・彼女らが向き合う社会の問題に、自らで解決策を見つけてアプローチする機会を提供しています。日本では2011年からアショカ・ジャパンとして活動を展開。2020年は新型コロナウイルス感染症という困難な事態が起こりましたが、アショカ・ジャパンではこの新たな問題に対する政府の対応に危機感を募らせ、不測の事態でも問題を見極めてアプローチできる人材の育成のため、ユースベンチャラーの数を増やす取り組みを強化。3年間で100人生み出すという、これまでの倍以上のペースに相当する野心的な目標を立ち上げました。   ユースベンチャラーの多くは他薦、すなわち積極的に発掘していかなければなりません。分野が特定されないなかで素質のある人材を見つけ出すのは至難のわざのようですが、そうしたなか人材発掘を進め、ユースベンチャーとして認定するかの可否を決めるパネル審査会を2ヶ月に1度ペースで実施。7月は2組、9月には3組、11月は2組を認定するなど、その数を着実に増やしています。このほか活動の認知拡大を図るアショカ・トークや、「社会を変える」をテーマとしたワークショップを学校で展開するなど、社会をより良くする活動に取り組む若者の発掘・支援や、若者が社会を変えるムーブメントを起こす活動に取り組んでいます。2021年も頻繁にパネル審査会を実施し、ユースベンチャラーを増やす取り組みを強化するなど、若者チェンジメーカーの育成に力を注いでいくとのこと。今後の活動に注目です。 ASHOKA JAPAN     ルーム・トゥ・リード・ジャパン 低所得国で暮らす子どもたちに学習の機会を 「子どもの教育が世界を変える」を理念に、南アジアやアフリカなどの低所得国で暮らす低学年の子どもたちに識字(読み書き)教育を提供する活動や、中高生の女の子に高校卒業までの道のりを支える女子教育プログラムを展開しているRoom To Read(ルーム・トゥ・リード)。識字教育については、教育者のトレーニングに始まり、現地語で書かれた絵本等の教材の開発および流通、図書館の開設まで、現地のスタッフが政府と共同で行っています。また女子教育プログラムでは、男女不平等が残る社会背景の環境下で、彼女たちが学園生活を送りやすくする手助けをし、自らの意思を持って人生の重要な決断をするスキルを身につけるサポートをしています。具体的には、授業とは別にライフスキルを学ぶ教育プログラムの提供や、メンターと呼ばれる女性によるサポートで学業やメンタル面のバックアップなどを行っています。     2020年はコロナウイルス感染症の影響により、ルーム・トゥ・リードが支援を行っている16カ国では軒並み学校閉鎖となるなど、学習環境に弊害がもたらされました。コロナ禍はオンライン化への切り替えが困難なインターネットアクセスが限られる地域では特に深刻な問題となり、失業者が増えれば経済的な困窮に追い込まれ、子どもたちの学習継続が危ぶまれます。そこでルーム・トゥ・リードでは急遽、ラジオやテレビを通じて読み聞かせの授業を行ったり、教材の郵送による配布や、保護者に子どもたちの学習の継続を呼び掛けたりするなどして、子どもたちの学習環境が失われてしまわないように努めています。また、無数の島々で構成されリモート環境が発展していたインドネシアで展開していた遠隔教育の設備をグローバルに解放し、世界各地の子どもがオンラインで児童書や教材を読めるようにする方策にも取り組んでいます。     日日本においては2020年末、コロナ禍においても子ども達が学び続けられる活動「Action for Education 2020 – IMAGINE みんなのアクションで子ども達に教育を!」を展開中。これはみんなの力を合わせ、クリスマスの贈りものにコロナ禍にある子ども達3,000名に教育というギフトを贈ろうという取り組みです。また、去る11月28日にオンラインイベントを開催し、これまでリアルイベントとして行っていた支援者への活動の報告や、支援を受ける子どもたちにとっても励みとなる番組の提供を行いました。オンラインイベントには、ルーム・トゥ・リード・ラオス女子教育プログラム卒業生で、現在日本語を勉強中の大学生からの日本語によるメッセージや、女子教育プログラムのメンターの方や、支援を受けているタンザニアの子どもたちからのメッセージを紹介するなど、ルーム・トゥ・リードの活動が詳しくわかる内容となっています。 ルーム・トゥ・リード・ジャパン     スマイリングホスピタルジャパン 病気の子どもたちが本物のアートに触れ、前向きな気持ちになるように   重い病気と闘う子どもたちに本物のアートと触れ、ワクワクしてもらいたい。そして前向きな気持ちで病気と闘ってもらいたい。そんな想いからマジシャンや音楽家、美術家などアーティストとともに病院を訪れ、子どもたちに本物のアートに親しんでもらう活動を行っているスマイリングホスピタルジャパン。全国の30の病院および14の施設に、年間で計500回以上訪問し、子どもたちの笑顔を引き出しています。しかし今年はコロナウイルス感染症の拡大により、病院への訪問が叶わなくなってしまいました。子どもたちはいま、両親との面会時間まで大幅に短くなってしまい、病室でほとんどの時間をひとりで過ごしながら、病気と闘っているのです。   こういう時期だからこそ、子どもたちに笑顔になってほしい。そうした思いからスマイリングホスピタルジャパンでは、訪問活動の代わりに、アーティストの方と協力して塗り絵や紙芝居セット、ステッカーといったアクティビティのプレゼントを行ったり、YouTubeの『スマイリングちゃんねる』で動画配信を行ったりしています。スマイリングちゃんねるでは、マジックや音楽遊び、実験など、子どもたちが観るだけでなく、一緒に手を動かして楽しめる動画を提供しています。すでにその数は計70作以上に!     スマイリングホスピタルジャパン代表理事の松本惠里さんは「病院にはいつ訪問できるようになるか見通しが立たない状況のなか、アクティビティの提供や動画配信を通じて、病院とも子どもたちともつながり続けることが大切だと思っています」と活動を続けていくことの重要性について話してくださいました。スマイリングホスピタルジャパンでは、寄付による支援のほか、ホームページやFacebookのシェアや、アーティストの動画編集のサポートなど様々なかたちで協力してくださる方を募集しています。また、スマイリングホスピタルジャパンをフィーチャーした本が2021年2月に英治出版から登場する予定も。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。 スマイリングホスピタルジャパン     ピースウィンズ・ジャパン 災害の緊急支援から復興まで幅広くサポート   自然災害や紛争、貧困などで生活の危機に瀕した人々を支援する国際NGO、ピースウィンズ・ジャパン。これまでに世界33の国や地域で活動を繰り広げ、数多くの人々に支援の手を差し伸べてきました。今年は新型コロナウイルス感染症の拡大や、各地で起こった自然災害への対応で古今東西、支援活動を繰り広げました。ピースウィンズ・ジャパンが運営する空飛ぶ捜索医療団ARROWS(アローズ)は、1月に中国・武漢へマスクなどの物資支援を開始したほか、長崎に停泊中のイタリア籍クルーズ船や、集団感染病院へ医療支援などを行い、コロナという見えない敵と対峙しました。このほか令和2年7月に日本を襲った豪雨への緊急支援、さらには世界各地での衛生啓発や緊急支援など、幅広い分野で活躍しています。   […]

LIFESTYLE

「女性のエンパワーメント」デジタルマンガで分かりやすく学ぶ

毎年10月11日は国連が定めた「国際ガールズ・デー」。この日にちなんで女の子の権利やエンパワーメントを広く知ってもらうためのイベントやアクションが世界各地で行われます。女性に人気のイタリアのカーブランド「FIAT」(フィアット) と公益財団法人ジョイセフは、女性のエンパワーメントについて分かりやすく学ぶことができるデジタルマンガを制作、公開しました。「FIAT」を展開するFCAジャパン・マーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセさん、ジョイセフの市民社会連携グループ長の小野美智代さん、マンガを描いたイラストレーターの伊吹春香さんの3人が女性のエンパワーメントについて語り合いました。   女性が自らの意思で人生を選択することの大切さを知ってほしい   小野 女性が「自分の人生を自分で決める」ことが、私たちジョイセフが行っている「I LADY.」(アイレディ、注1)のコンセプトです。今回のデジタルマンガの制作プロジェクトでは、女性が自らの意思で人生を選択することの大切さを伝えるとともに、日本ではバッシングされがちな性教育についても抵抗なく学んでほしいという思いを込めました。   ティツィアナ このプロジェクトは、1年前の伊吹さんとの出会いから始まりました。フィアットが進めている「#ciaoDonna」 (チャオ・ドンナ、注2)のプロジェクトで、女性の性についてもっと丁寧に伝えていきたいと考えていました。ちょうどそのころ、伊吹さんのイラストをインスタグラムで見てとても格好いいと思い、マンガ制作をお願いしました。マンガをみんなの共通言語として、女性同士のつながりができるようにしたいです。   小野 こうしたテーマについて、文字では読みたくないと思う人もマンガにはすっと吸い込まれて気が付いたら読み終えています。言葉よりも絵の方が、共感を得られる場合も多いですね。マンガを通して、すべての女性が、自分の意思で自分の人生を切り開き、心から笑顔で過ごしていけるよう、「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)についても理解が深まっていけばと思っています。   伊吹 鳥取で主にレトロな雰囲気の女の子のイラストを描いています。鳥取のメーカーで、独自のフィアット専用シフトノブを製作されている会社の方から、「フィアットのイメージに合う」と依頼を受けて、“フィアットと女の子”という組み合わせの絵を描いていました。それが今回のプロジェクトへとつながりました。「女性のエンパワーメント」という言葉は、まだ広くは浸透していませんが、マンガだとその言葉を知らなくても、知ってほしい内容が伝わるなあと感じました。       女性の「性」に対する問題意識を持つきっかけに   ティツィアナ 実は伊吹さんもこのプロジェクトでマンガを描く中で、エンパワーメントを考えるご自身の旅が始まったそうですね。   伊吹 私自身も、女性のエンパワーメントについて問題意識を持つようになりました。これまでの自分であれば、望まない妊娠をしてしまった人は、「性に対して知らないことが悪いのでは」という考えがどこかにありました。このプロジェクトでストーリーを一緒に考える中で、「知らないことが悪いことではない」「知らない人たちをサポートしていく気持ちを持っていかなければならない」と思えるようになりました。自分自身も描きながら、強くなりました。   小野 ティツィアナさんが「日本の性教育の状況をなんとかしたい」と、海外の性教育について教えてくださいましたね。   ティツィアナ 女性は一緒になるといろいろなことを話すことができますが、日本では、性、セクシュアリティについて話題にすることは、少しタブーだったり恥ずかしさもあったりしてなかなかオープンに話すことができません。私たちは、もっとオープンに自分のセクシュアリティについて話した方がいいと思っています。また、海外の性教育と比べると日本の性教育は十分とは言えません。望まない妊娠をするなど自分の人生の選択を自分で決められなくなってしまう心配もあります。       4つのストーリー、4人の女性が登場   小野 こうした意味で今回のマンガのストーリーは、みなさんがきっと、自分自身の問題として読んでくださると思います。伊吹さんが描いた4つのストーリーでは、それぞれ年齢の違う4人の女性が登場します。         伊吹 第一話の主人公は17歳の女子高生です。保健室の先生と女子高生の会話がメーンです。キーワードは「知ること」です。望まない妊娠を防ぐためにも17歳には、避妊の常識として知ってほしい内容をお伝えしています。第二話の主人公は21歳です。自分に自信が持てないため、付き合っている男性に嫌われたくないという思いから、何でも彼の言うことに合わせてしまいます。彼から「避妊をしたくない」と言われても合わせてしまいます。キーワードは「自信」です。   ティツィアナ 今の時代、女性は自由で強くなるべきなのに、付き合っている相手との関係ではすごく弱くなっています。仕事でもボスに対してなどで同じようなケースが見られます。このように女性が弱くなってしまう点を補うにはどうずればいいかをきちんと考えるべきだと思います。   小野 この21歳の女性のストーリーはステレオタイプによる男女の恋愛観がテーマです。ぜひ男性にも読んでもらいたいです。男性も一緒に行動を変えていかないと世の中は変わらないです。   伊吹 第三話の主人公は28歳のキャリアウーマンです。キーワードは「戦う」です。仕事での上昇志向は強いものの、30歳を目前に結婚などについて周囲からのプレッシャーがあることを感じています。私も30歳近くになってアラサーと呼ばれた時、女性としての期限があるような気にさせられた経験があります。   小野 最後の第四話は、男女のパートナーシップ、夫婦関係について考えさせられます。   伊吹 主人公は35歳の主婦です。この家庭は、夫婦のコミュニケーションがうまくいっていないケースです。男性も子育てや家事のことを当たり前にするという世の中の常識ができていたら生まれていない「すれ違い」を描きました。 ティツィアナ ここでは夫婦が素直になって思っていることを言える環境、話し合い、理解し合うことが大事ということも伝え、結末はとてもポジティブな内容になっています。しかし、実際の社会では毎日、世界のどこかで自分のパートナーに殺されるなどの被害に遭っている女性がいます。こうした被害をなくすためにも、女性のエンパワーメントを考えることがとても大切です。         フィアットの「 #ciaoDonna 」(チャオ・ドンナ)のサイトで公開 […]

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自分らしさが選択できる社会のために。I LADY.の活動とその思いを聞く。

自分らしい人生を、自分で決められるように I LADY.は、女性が心身ともに“健康”に生きられる社会を目指す、ジョイセフによるプロジェクト。健康といっても色々な健康があるけれど、I LADY.が活動の中心としているのは、性と生殖に関する健康。日本は医学が進んでいる先進国ではあるけれど、「性」の問題についていえば、それを取り巻く社会環境や人々の意識には、“遅れている?”と感じる部分も。その背景には、性はデリケートな問題なのでメディアで取り上げられることが少なく、社会の関心が向きづらい事情もあるのでしょう。そこで女性のいのちと健康を守ることを掲げている国際協力NGOのジョイセフが立ち上がり、I LADY.という活動を通じて、性や生殖面における女性の健康や権利にフォーカスしているというわけです。今回はそのI LADY.をけん引するジョイセフの小野美智代さんに、お話をうかがいます。     日本では、10代の中絶より40代の中絶の方が多い。   「性と生殖」の健康というのがあまりピンと来なかったので、具体的にどういう問題があるのか聞いてみました。すると、出てきたのがこの例え。あまり報道されないことですが、40代の中絶は10代より多いそうです。どういうことかうかがいました。 「中絶というと若い子たちという印象が強いと思います。わたしも6年ほど前に臨床の現場で人工妊娠中絶を施す産婦人科医からこの話を聞いたときは驚きました。40代というと不妊治療の話は聞きますが、中絶の報道はあまりされていませんね。中絶の理由を聞くと、わたしはてっきり婚外交渉とかかと思ったら、実際には多くが夫の子。たとえば長男長女が大学生になっていて、もう恥ずかしくて産めないとか、世間体があるとか、経済的な理由、子どもが20歳まで現役で働いて養う自信がない……など。産めないならなぜ避妊しなかったのか?と聞くと、夫がしてくれなかったという答えが返って来ることが多いようです。もちろん、妊娠は女性と男性の両方に起因するものだけれど、女性は自分のことなのに人任せにしてしまう。I LADY.ではこうした問題に着目し、自分の体のことは自分で守るという判断や行動を広めようという活動を行なっています。こうした概念を表したセクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR=性と生殖に関する健康と権利)という言葉がありますが、I LADY.の活動の軸はまさにこれにあたります。わたしたちは、Love Yourself(=自分を大切にすること)。Act Yourself(=自分から行動すること)。Decide Yourself(=自分らしい人生を、自分で決められること)。というキーメッセージを発信し、これを実践できる人を増やしたいと思っています。SRHRの知識や意識を持つことは、自分の人生をよりよく生きる力になるライフスキルだと思っていまして、その普及を目指しています」。     自分に関わる問題ではあっても、人に委ねてしまったり、社会の空気に飲まれてしまったり、 “自分”を周りに合わせてしまう人が多いなか、そこに自分の意思に向き合って自分で選んで決断しようと。自分をもっと大切にしようよと。そういう意識を広めているわけですね。 「日本では、世間の空気に流されることや、自分を出さないことやNOと言わないことが美徳とされているところがあると思います。遠慮という言葉もあります。それ自体を否定はしませんが、時には自分の権利を主張して、流されないようにすることも必要だと思います。まずは気持ちの上で、自分自身を大事にするという意識を大切にしていただきたいですね」。     そうした考えを広めるI LADY.の活動にとって、理想とする社会とはどのようなものでしょうか? 「自分の人生は自分で決める。そういう生き方をしている人を、わたしたちは“I LADY.に生きている”、”I LADY.な人”と呼んでいますが、いまI LADY.に生きるアクティビストは、著名人を含めて155人位います。自分なりの人生を実践している人が100人いるとすれば、その生き方は100通りあるということです。若者たちの自殺が多い日本。先進国で若者の自殺が多い国は珍しいのに、わが国では大人になりたくない若者が年々増えている。そうした時代だからこそ、わたしたちが理想とするのは、I LADY.に生きる人たちが溢れる社会。自分のライフスキルが備わった人たちが増えていくことが理想だと思います。自らの生き方を自分で決め、イキイキとしている方が増えれば、そこに触発されて、自分らしさ=自分の個性に向き合う人が増えていく。他人とは違う自分のことを肯定できるようになって、自己肯定感が高まれば、自然と元気になって生きることが楽しくなる。他者の個性を認め、尊重することが当たり前になると思います。多様性やダイバーシティという言葉をあちこちで聞くようになった今、真の意味でお互いを認め合い、元気を交換し合えるような輪が広まっていくことにも繋がると思うんです」。     最近のI LADY.の取り組みについて教えてください。 「I LADY.に生きているアクティビストを増やして、その方々を皆さまに紹介していくというのが私たちのひとつのミッションです。年を通じてジョイセフが大切にしている記念日がふたつあり、ひとつは3月の国際女性デー、もうひとつは10月の国際ガールズデーです。そこでイベントを開催しアクティビストに登壇してもらい、啓発活動を行なっています。また、ウェブサイトでインタビュー記事を発信したり、【パジャマでおしゃべり】というYouTube企画で対談したりして、彼らがどのようにI LADY.に生きてきたかを発信しています。直近では、9月26日の“世界避妊デー”に、参加無料のオンラインイベントを実施し、9月28日には安全な中絶/流産を選ぶ権利に目を向ける“インターナショナル・セーフ・アボーションデー”というのがあるのですが、それに合わせてアクティビストたちと安全な中絶について考える機会を設定しています。最近は新型コロナウウイルスの影響で実施できないリアルイベントが多いので、オンラインの活動にも力を注いでいます」。     小野さんご自身がそうした活動を取り組まれるようになったきかっけについて教えていただけますか。 「わたしは旧家の初孫で、女の子として生まれてきて、親族にがっかりされたんです。母は男の子を産まなければというプレッシャーを感じていました。結局男の子は生まれず2人姉妹なのですが。でも親族皆が可愛がってくれ、差別されたというわけではなく寵愛を受けて育ちました。一方で、わたしは物心ついた頃から祖父から、うちの跡取りだから婿を取るんだぞと言われ続け、その陰で嫁である母には男の子を産んでくれと言っていたことがわかりました。なぜ男の子じゃなければいけないのか。まだ性差やジェンダーという言葉がわかっていなかった頃に、わたしにはそういう意識が芽生えたのだと思います。ジョイセフに来るきっかけもジェンダーやSRHRに興味があったからです。以前は大学の職員をしたのですが、アジアに旅行した時、カンボジアで出会った友達が2年後に出産で亡くなってしまったのです。当時、出産で亡くなるという理由がわからず質問したのですが、明確な答えは返ってきませんでした。日本では病院で出産するのが一般的ですが、当時カンボジアでは自宅で出産するのが当たり前で、彼女は3日間陣痛で苦しみ、お腹の子とともに亡くなってしまったんです。それで大学でカンボジアの出産事情を調べた時に、ジョイセフに出会いました。ジョイセフが国連人口基金の世界人口白書を日本語訳しており、そこでカンボジアや途上国では多くの女性が出産で亡くなっている現実を知ることになりました。またそれが女性の平均寿命を短くしていることも。そこからこの分野に関心を持ち、ジョイセフに入りたいと思うようになり、3年半後に募集があったので入ったのです」     気持ちいいことを人に伝える   ジョイセフでは、世界に妊娠や出産で命を落とす女性がたくさんいるという現実に目を向け、「ホワイトリボンラン」というチャリティラン・イベントを国際女性デーに開催していますが、これは途上国で女性のいのちと健康を守る活動へのチャリティを行なうと同時に、日本の参加者の女性にも走るという機会を通じて健康を促進する活動だと思います。これもランニングを愛好されている小野さんご自身の体験から発展した活動なのですか? 「わたしが走ることになったのは、東日本大震災の時に出会ったある女性のひと言からでした。避難所で被災者の声をヒアリングし、困っていることがないか聞いて回っていた時に、67歳の女性からどこから来たの?と聞かれ、静岡県と伝えたら、静岡や中部地方は東海地震が起こると言われているけど、対策は取っているかと逆に聞かれたんです。その女性は津波で娘さんを亡くし、残された3人のお孫さんを育てていました。わたしは当時、37歳。亡くなられた娘さんと同い年だったんです。そんな偶然もあり、“あんた子供いるの?””と聞かれ、3歳の娘がいますと答えたら、何かあった時にその子を抱えて走れる、逃げられるくらいの体力をつけておきなさいと言われたんです。お嬢さんと3人の息子は、逃げている時に第二波が来て、7才の子は自力で屋根の上に登れた。5才の子も上がった。お母さんは2才の子を抱えていて7才の子に渡せた。でも自分の身体を上げることができず、体力がつきて第二波で流されてしまったんです。7才と5才の子供は、目の前でお母さんが流されていく姿を見ていたそうです。その話が衝撃的で……。今のわたしは娘を連れて逃げられないと思ったし、健康にも体力にも自信がない。もし明日地震がきたら自分も娘も助からないと本気で思いました。それでわたしはそのことを地元の友人に話し、一緒に運動することを始めたんです。週に1回のウォーキングから始まり、ジョギングをやるようになった。そうしたら明らかに運動する以前よりも健康になり、体力に自信もついて、風邪もひかなくなった。わたしでも変われたので、これを子育て中の母親たちに勧めたいと思い、HiPsというコミュニティを作りました。毎月、満月の日に集まって走って、参加費100円を被災地に寄付するのです。それをホワイトリボンランに移行したのは、わたしが二人目を出産して育休中のとき。国際女性デーが3月8日にあって、ちょうど満月ジョグの日でした。いつもやっている100円寄付を、ジョイセフを通じて途上国の女性を支援しようとtwitterやFacebookに投げかけたら、静岡だけでなく、それが全国に共感が生まれ連鎖した。自分が気持ちいいことを人に伝えたら、それが全国に広がった。いいことを共有するって、こういうことなんだって実感したのです」。     そのホワイトリボンランにはフィアットも出展し、写真を撮ってポストした参加者にミモザの花を配布したりしましたね。最後に今後の展望を教えていただけますか。 「フィアットにはすごくシンパシーを感じています。フィアットのお客さんって、自分のやりたいことを自分で選んでいる女性だと思いますが、ジョイセフのファン、支援者も同様で。ジョイセフは大きな国際組織でないのでそこまで知られていないと思うのですが、ファンの方は自分でこの小さな団体を選んで支援してくれているんです。女性がイキイキしている社会は、フィアットとジョイセフが共通して目指しているところなので、これからも連携して、一緒に活動できる機会を増やしたいです。一人ひとりがLove, Act, Decide yourselfするI […]