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イタリア流エスプレッソの楽しみ方

イタリア人の毎日に欠くことのできない飲み物、それが「エスプレッソ」。19世紀末にイタリアで発明されたエスプレッソは、20世紀になると街中で飲まれるようになり、その後一般家庭にも広く普及しました。イタリアのBAR(バール)では、老若男女を問わずエスプレッソを楽しむ姿をよく目にします。そんなエスプレッソの知識や楽しみ方などを、イタリアのカフェ業界に長く携わる日本バリスタ協会インストラクター中川直也(なかがわ なおや)さんに伺いました。  旨味が凝縮されたエスプレッソの正体 「本場イタリアでは、エスプレッソの定義がしっかりと決められているのです」という中川さん。エスプレッソと呼ばれるのは、7gの極細挽きのコーヒー豆を使い、約9気圧の圧力をかけた90度ほどの熱湯で、25(±2.5)秒で抽出して、出来上がりが25(±2.5)mℓの液体のことだといいます。家庭でよく飲まれるコーヒーとの違いは、この独特な淹れ方にあったのです。 「コーヒー豆を使用するのは同じですが、エスプレッソとコーヒーは抽出方法がまったく違います。一般的なコーヒーは、フィルターで漉したドリップ式や、サイフォン式など。エスプレッソの場合は圧力をかけたお湯を使って抽出する方式なんです」 。 そして、エスプレッソを口に含むんだときに感じる「苦味」は “焙煎”や“豆の品種”や“豆のもつ成分”によるもの。「砂糖を焦がした時に苦味が出ますよね。それと同じように、コーヒー豆も焙煎することで苦味が出ます。カフェインやポリフェノールの苦味でもありますし、豆がもともと持っている“酸味”も関係しています。酸味は焙煎していくと徐々に減っていき、逆に苦味が出てきます」。  また、苦味の強いエスプレッソには、カフェインが多く含まれていると思われがちですが、実はそうではないという中川さん。「カフェインは水溶性なので、抽出時間が長く、使用するお湯の量が多いドリップコーヒーの方が多く溶け出します。一方、抽出時間が短く、使用するお湯の量も少ないエスプレッソに含まれるカフェインの量は少なめ。ドリップコーヒー1杯や板チョコ1枚の方が多いんですよ」。 エスプレッソに欠かせない「上質なクレマ」 美味しいエスプレッソの条件は、きめ細やかな“クレマ”があることだという中川さん。クレマとは、エスプレッソの最上層にできるクリームのような泡のこと。独特のとろみが感じられるクレマは、深い味と香り、そしてコクに影響を与えて楽しめます。 「きめの詰まったクレマだと、その上に落とした砂糖が一瞬止まるんです。また、きめ細かい泡だと砂糖を落とした後、クレマが復活します。それを口に含むと、20〜30分は余韻が残りますよ」。  そして、中川さんによると、エスプレッソカップにもイタリア人のこだわりが詰まっているとのこと。「エスプレッソカップの底は、ほとんどが卵型。乳化した液体を、卵型のカップの底に抽出することにより、全体がちょうどよく混ざり合うため、味に一体感が生まれるのです。これも、より美味しくエスプレッソを飲むためのイタリア人のこだわりですね」。  さらに、地域によってエスプレッソカップの特徴が異なると語る中川さん。「ワイングラスと同じように、縁が厚いカップは、味の感じ方が鈍くになります。そのため、軽やかな香りのエスプレッソが多い北イタリアでは、香りをより感じやすくするため、縁の薄いカップが主流です。一方、ビターなエスプレッソが多い南イタリアでは、苦味が立ちすぎないため、縁の厚いカップが多いのです」。ちなみに、カップの縁はイタリア北部から南部に向かうごとに厚くなり、縁の厚さ約1センチというエスプレッソカップもあるそうです。 本場イタリア流の楽しみ方 イタリア人の生活になくてはならないのがバールと呼ばれるカフェ。その数は、人口当たりで換算すると日本の約4倍だとか。そして、立ち飲みでのエスプレッソ価格は、1杯あたり1〜1.2ユーロほど。缶コーヒーを飲むような気軽な感覚で、イタリア人は1日に5〜6杯程のエスプレッソを楽しむそうです。「都心部で働くイタリア人は朝食代わりにまずはエスプレッソを使ったカプチーノを1杯、11時くらいに休憩しながらもう1杯飲みます。13時頃、ランチ後に1杯。さらに、15時から夕方にかけて1~2杯を飲みますね」。 英語の“express(急行)”という意味のほか、“あなたのための特別の1杯”という語源もあるとされるイタリア語のエスプレッソは、注文を受けてから一杯ごと、短時間で抽出します。そんなエスプレッソをより美味しく飲むコツは、カウンターに置かれたら、すぐに飲み切ること。「イタリア人たちは出来たてが一番美味しいとわかっています。なので、注文から35秒ぐらいで “プレーゴ(どうぞ)”とテーブルに置かれた瞬間、バリスタの手が離れるか離れないかのスピードで砂糖を投入し、さっと飲み干します。早い人だと、1分ぐらいしかバールに滞在しません」。 またバールでは、カプチーノ、マッキャートなどエスプレッソベースのドリンクを楽しむイタリア人の姿も。泡立てた牛乳を少量入れたマッキャートは日中でも頼む人がいる一方、泡立てた牛乳をたっぷりと入れるカプチーノはお腹に溜まるため朝に飲まれることが多いとのこと。そして、このイタリアン・カプチーノ作りにも、しっかりとしたルールがあるそうです。  「定義どおりに抽出したエスプレッソを使うこと、そしてそのエスプレッソを他のカップに移さないことがルールです。そうしないと移す前のカップに美味しい部分が残ってしまい、香りも抜けてしまうのです。150〜180ccのカップに、25ccのエスプレッソを注ぎ、そのなかに55度に温めた泡立て牛乳を注いでいきます。表面が全体的に茶色く、真ん中が白くなるのが理想です」。  厚み15mm程で作られることが多い、カプチーノの泡。その作り方にもコツがあるそうです。「ポイントは、牛乳を一気に泡立てること。牛乳の表面から少し奥に、スチームノズルの先端を入れて、バルブを全開にします。泡ができたら、スチームの勢いで生まれる渦に泡を巻き込み、泡を乳化させながらきめ細かくします。泡が分離しないうちに、カップの底に一直線に注いでいくと、きれいな模様が完成します」。  エスプレッソの美味しい飲み方 中川さんによれば、エスプレッソには「クレマがきれいな茶色になっているか」や「キャラメルやバニラのような焙煎香を感じるか」など、美味しさと判定する10項目以上の評価があるとのこと。「出来たてのエスプレッソは“クレマ”と“コーヒーの液体”が一体化していて、時間が経つほど二層に分離していきます。クレマが沈着化していくと質が悪くなるので、2分ぐらいで飲み切るのが理想ですね」。 「砂糖を入れるかどうかは、お好みで。砂糖を入れないエスプレッソならコーヒーらしさを、砂糖を入れて混ぜ合わせればエスプレッソの真骨頂である“チョコレートテイスト”を味わえます。そして、飲む前にもうひとつ。香りを十分にかいでから飲み、飲んだ後も水などを飲まずに余韻を感じると、さらに楽しめますよ」とエスプレッソ通ならではの楽しみ方を中川さんは教えてくれました。 エスプレッソを自宅で上手に淹れる方法 一般的に、淹れるのが難しいと思われがちなエスプレッソ。でも、実は自宅でも美味しく淹れられると語る中川さん。「マシンと抽出器具、どちらを使うにしても、大事なのは“豆の粗さ”。抽出器具で淹れる場合は、家庭用に挽いた細挽きのコーヒー豆を使います。色合いとしては、チョコレートブラウンのものを。それより深い色になると、焙煎されすぎて苦みが強くなってしまいます。また、数種類の豆を使って、味わいをふくよかにするのもポイントです」。  「また、エスプレッソマシンで淹れる場合は、まずはエスプレッソホルダーに挽きたての粉をセットします(ドーシング)。粉は2杯分で14gが目安です。次に、粉を均一にならすレベリングを行います。粉の密度が均一になっていれば、お湯が通過するときに、美味しさの成分をしっかりと抜き出せるからです。エスプレッソホルダー全体を手で叩いて、ホルダーの内部まで振動させ、全体を均一にさせるのがポイント。熱劣化しないように、素早く2〜3回叩きます。そのあと“タンパー”と呼ばれる器具を使って、表面を水平に押し固めるタンピングをします。  あとは、ホルダーの縁に付いた粉を払って、機械にセットしたら抽出するだけ。熱劣化しないよう、この一連の動きを素早く丁寧に行ってください」。 イタリアでは昔ながらの器具「クックマ(下写真左)」や直火式の「モカ(写真中)」を使って、自宅でエスプレッソを楽しむ方も多いとのこと。  その中で、今回はポピュラーな直火式エスプレッソメーカー「マキネッタ」を使ったエスプレッソの淹れ方も教えてもらいました。「水を入れる下部容器のエアバブルより下に水を入れたら、バスケットに入れた粉を軽く叩いて均一にします。粉を固める必要はありません。バスケットの縁に付いた粉を払い、ガス漏れを防ぐために蓋を固く締めることがポイントですね。3分ぐらい中火にかけて、液体がトロンと出てきたら弱火にしてください。液体が出る勢いが止まらないときは火から離し、抽出終了後に液体をスプーンでかき混ぜてカップに注げば完成です」。  なお、エスプレッソを淹れる際、中川さんがオススメするのがナポリを代表するコーヒーメーカー「KIMBO(キンボ)」のコーヒー豆。50年以上の歴史があるKIMBOは、ナポリの人々が楽しめるコーヒー豆を提供。南イタリアで最も有名なメーカーで、少しビターな味わいが特徴です。また、イタリアでは地域によって好まれるコーヒー豆の味わいが違うため“南イタリアで好まれるロースト感のある香り”や“北イタリアで好まれる華やかな香り”など、KIMBOでは何十種類もの豆を用意しているとのこと。「今回使用したのは、チョコレートやキャラメル、バニラ、ナッツを感じる“プレステージ”という種類。この豆は、多くの方に好まれる万能選手なんですよ」。  短時間で抽出でき、どの時間帯でも気軽に楽しめるエスプレッソ。イタリア人の毎日に欠かせないエスプレッソを、あなたの日常にも取り入れてみませんか?  中川直也さん イタリア国際カフェテイスティング協会(IIAC)認定講師、IIACマスタープロフェッショナルの称号を持つ。イタリアのカフェの業界に長く携わり、イタリア・エスプレッソ普及活動を積極的に行っている。日本バリスタ協会インストラクター。イタリアエスプレッソ協会(INEI)エスプレッソスペシャリスト。モンテ物産株式会社 KIMBOブランド顧問。株式会社AUTENTICO代表。 […]

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ライフスタイルを何倍も楽しくしてくれるボクたちの500X

フォトグラファー、映像クリエイターとして活躍する木澤洸哉(きざわひろや)さん。そんな木澤さんとFIATとの出会いは勤務先。会社の社長がコンパクトな輸入車が好きで、社用車の1台にPandaがあり、仕事で乗っているうちに、FIATの魅力にハマったそう。そして、ご自身でもPandaを購入しようと思い立ち、ショールームを訪問。そのときに、一目惚れしたのが500Xだったそうです。 ご夫婦揃って500Xに一目惚れ 「500Xのデザインのよさ、乗った時のオシャレ感、運転する時のワクワク感、すべてに一瞬で魅了されてしまいました」。  本命はPandaだったため“ちょっと乗ってみようかな”という軽い気持ちで500Xに試乗した木澤さん。しかし、ご本人はもちろん、奥様も一目惚れし、翌日には500X購入の契約書にサインをしていたと、その日の様子を笑いながらお話ししてくれました。  500Xはエスプレッソのような存在 アバター ブルーのボディカラーが美しい500Xが納車されたのは2018年3月。それからは、仕事に、プライベートに、と500Xを毎日運転しているといいます。そんな木澤さんの趣味はコーヒーだそうで、並々ならぬこだわりをお持ちです。  「昔からコーヒーが大好きで、自分で淹れ方を研究したり、コーヒーのことを勉強するためにカフェで働いていたこともあります。ボク的に、500Xをコーヒーに例えるとエスプレッソ。イタリア車ということもありますが、オシャレだし、美味しい苦味もあるし、刺激的な感じが共通していると思いますね」と、コーヒー通ならではの面白い例えをしてくれました。 「以前は、国産車に乗っていたのですが、自分で運転している感覚が薄い気がしていました。何か物足りないというか、乗せられている感じがするというか。それに対して500Xは、すごく自分で操っている感じがするんです。これこそが、ドライブの醍醐味。500Xは運転するたびに、ボクをワクワクさせてくれます」。  インテリアもお気に入りポイント デザイン性やドライブしている時のワクワク感もさることながら、500Xの魅力は他にもたくさんあると語る木澤さん。その中でも、特にお気に入りなのがインテリアとのこと。  「500Xのインテリアの雰囲気が、とても好きです。インストルメントパネル周りのデザイン、ボディと同色のアバター ブルーのパネルとブラウンレザーのシートとの相性抜群の色使いなど、パッケージングとしての美しさを感じます。それと、いろんなところに描かれている500のロゴマークも高揚感を与えてくれます」。  500Xのデザイン性の高さは、フォトグラファーや映像クリエイターとして美的センスに長けた木澤さんの審美眼を満足させてくれているようです。 500Xはキャンプでも大活躍! 木澤さんのもうひとつの趣味がキャンプ。500Xラゲッジルームにキャンプ道具一式を積み込み、ご夫婦で様々なアウトドアフィールドに出かけるそうです。  「荷室も広いので、キャンプ道具がバッチリ入ります。アウトドアでゆったりとした気分で味わうコーヒータイムは、至福のひとときですね」。  また、アウトドアの様子をInstagramにアップするという木澤さん。“私もキャンプを始めたくなりました”というコメントもたくさんいただくようになり、キャンプ友達も増えたそうです。  なかでも、特に反応が大きかったのが、500Xに作ったベッドスペースの話題だったとのこと。  「“どうやって作ったの?”“作り方を教えて欲しい”“私も作りたい”など、たくさんのコメントが届きました。このベッドは、パイプやスノコなどをホームセンターで買ってきて自作したもの。500Xのリアシートを倒して、二人分のベッドスペースを作りました。とても、ゆったり寝られますよ」と話す木澤さん。この自作のベッドを作ってからは、キャンプに行った際、テントではなくて車中泊が多くなったとのこと。以前、長野へキャンプに行った時も、500Xがホテルに早変わりしたそうです。  気分が上がる大満足のスタイル&機能 500Xオーナーになってから、以前より行動範囲も友達関係も広がったという木澤さん。ライフスタイルも、だんだんと変わったそうです。  「ドライブで、遠出することが増えましたね。機能面では、ACC(アダプティブクルーズコントロール)が付いているので、長時間の運転もラクだし、遠出しても疲れが少ないんです。今度は500Xと一緒に何しようかなって、いつも考えています」。  「僕の趣味や新しい挑戦を、500Xが応援してくれている感じがしています。大好きなコーヒーを飲むと気持ちがアップするのと同じように、500Xを見ていたり、インテリアに触れたり、ドライブしたりすると、自然とワクワク感が湧いてくるんです」。  コーヒーとキャンプと500X。大好きなものに囲まれる、幸せなライフスタイルを体現する木澤さん。これからも500Xと一緒に、趣味の世界がますます広がっていきそうです。 洗練のデザインと進化した走り。アーバンSUV『500X』 詳しくはこちら […]

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ドライブのお供に! カフェのこだわりコーヒー3選

運転の合間のブレイク、長距離ドライブのお供や、ドライブデートの差し入れなど、「ドライブ」と「コーヒー」は切っても切れない関係にあります。缶コーヒーも良いけれど、せっかくならこだわりのコーヒーを調達して、ドライブのひとときを充実させたいもの。 今回は車での来店にもおすすめのパーキングメーター&コインパーキング近くのカフェにフォーカス。ドライブの気分を盛り上げてくれるコーヒーをご紹介します。     イタリアを旅した気分で、本格派エスプレッソを バリスタの阿部圭介氏が「本場イタリアのバールを再現したい」と、広尾にオープンした「ピエトレ・プレツィオーゼ」。南イタリア・サレルノから取り寄せたコーヒー豆を使い、イタリア製エスプレッソマシンで淹れた本格イタリアンコーヒーを提供しています。 おすすめは、もちろんイタリア人がこよなく愛する「エスプレッソ」。寒い季節は温かい「カフェ・チョコラータ」も◎。使っている豆は日替わりなので、訪れるたびに違う味を楽しめます。店内は南イタリアをイメージした開放的な空間で、「バンコ」と呼ばれるスタンディング用カウンターがあり、テイクアウトだけではなく、本場さながらの雰囲気でコーヒーを味わうこともできます。車を停めてサクッと店内でエスプレッソを一杯、長居は無用!というのがイタリア流。お店の前にパーキングメーターがあるので、ぜひドライブの途中に気軽に立ち寄ってみませんか?   ピエトレ・プレツィオーゼ 営業時間:午前11時〜午後11時(日曜定休) 東京都港区南麻布TTCビル 1F 電話:03-6277-1513 駐車場:お店の前にパーキングメーター有 http://www.pietrepreziose.jp     ドライブが華やぐ、話題のドーナツ&コーヒー コーヒーと一緒においしいスイーツも一緒にテイクアウトしたい。そんなときは麻生十番の「ダンボドーナツアンドコーヒー」へ。カップに大きなドーナツをセットした、フォトジェニックなスタイルで若い女性を中心に人気を集めているお店です。 店内に入ると大きなエスプレッソマシンと色とりどりのドーナツがお出迎え。コーヒーは世界で一台しかないオリジナルカスタマイズのエスプレッソマシンで抽出しています。コーヒー豆は京都ARABICAから仕入れたオリジナルブレンドを使用。豆の味をしっかりと感じられる力強い味わいのコーヒーはドライブのリフレッシュにぴったり! ドーナツはお店で粉からこねて揚げたこだわりのひと品で、大きな見た目とは裏腹にふわもちの軽い食感です。 カラフルなドーナツとピンクのキュートなコーヒー用カップがドライブを盛り上げてくれること間違いナシです。   ダンボドーナツアンドコーヒー 営業時間:午前9時〜午後7時(無休) 東京都港区麻布十番2-17-6 電話:03-6435-0176 駐車場:お店の前にコインパーキング有 http://www.dumbodc.com     ニューオープンのコーヒーショップで癒しの一杯を ドライブの休憩がてら新しいお店をチェックするなら、2018年9月19日にオープンしたばかりの下北沢「Time heals(タイムヒールズ)」へ。お店のネーミング通り、癒しのひとときを提供したいという想いが込められています。 コーヒーは京都のKANONDOで焙煎された豆のオリジナルブレンドを提供。涼しくなるこれからのシーズンのドライブには「ホットカプチーノ」がおすすめ。コーヒー豆のしっかりとした味わいに、なめらかなミルクフォームが溶けあうほっとする味わいです。 思わずテイクアウトしたくなるおしゃれなバッグは、ドライブデートの差し入れにも喜ばれそう。スイーツも取り揃えているので、一緒にテイクアウトしてみてはいかがでしょうか。   Time heals 営業時間:午前9時〜午後9時(日・月曜は午後7時まで/火曜定休) 東京都世田谷区代沢2-29-1MART下北沢Ⅱ 電話:03-5432-9045 駐車場:お店の前にコインパーキング有 https://www.timehealscompany.com/   ※掲載されている内容は2018年10月12日現在の情報となります。詳しくは各ショップにお問い合わせください。 […]

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コーヒーブレークをちょっと楽しく〜ヒスイ色のマグカップ「Fire-King」

オシャレな若者たちや外国人が数多く訪れる東京原宿。中でも人気のキャットストリートを歩いていると、ふと見上げたショーウインドーにあったマグカップが目に入った。   ちょっとレトロなデザインと、青磁っぽくもあるグリーンのマグカップはFire-Kingという。1941年にアメリカで生まれた耐熱ガラス食器のブランドだと店主に教えられた。   世はサードウェーブと言われる空前のコーヒーブーム。こだわりの自家焙煎の喫茶店や注文焙煎の豆店、書店には多くのコーヒー特集号が賑わい、バリスタなんていう言葉も珍しくなくなった。その流れによる影響もあるのだろう。器であるカップ類にも注目が集まりつつある。     さて、ちょうど友人の誕生日プレゼントを物色していた私が、このマグカップに目がとまったのは、他でもない彼の愛車のFIAT500のボディカラーにそっくりだったのだ。   このHAPPY! という2009年の限定車には、現行FIAT500がオマージュしたNuova500がデビューした1957年の純正色、Verde Chiaro(ヴェルデ・キアーロ〜「明るい緑」の意味)をオマージュした「ビンテージグリーン」がラインナップされていて、それがまさにFire-Kingの色に非常に似ている。   翡翠(ヒスイ)を意味するジェダイ(Jede-ite *ジェードともいう)と呼ばれるグリーンは、このブランドのイメージカラーにもなっている。そもそもヒスイという宝石は、美しさ、強さにおいて一目を置かれ金よりも珍重された歴史もあり、中国や日本はもちろん、欧州各国や中南米などまさに古今東西で愛されている色。初期のNuova 500をレストアしてる人でもこのグリーンにする人は多い。     このジェダイの他にも、Fire-Kingには様々な企業ノベルティものも数多く存在しており、世界中にもたくさんのファンがいる。ネットオークションなどでも数多くみかけることができるが、なにより、日本で最もオシャレなエリアにこうしたビンテージFire-Kingのお店が存在していることからも、その愛されっぷりは想像に難くないだろう。   ちなみにFire-Kingは一度1986年にその歴史の幕を閉じているのだが、2011年になんと日本で復活を果たしている。しかも、オリジナルが大量生産品だったのに対し、当時の雰囲気残しつつ、今度は日本の職人の丁寧な手仕事で蘇らせている。     香りも味ももちろん大切だが、ちょっと一息つくときに、ヒスイ色のカップからコーヒーが透けて見える姿もなかなか味わい深い。   さっと飲み干すエスプレッソもいいけど、読書でもしながらゆったりのんびり楽しむコーヒータイムも捨てがたい。そんな本当にちょっとしたことだけど、「楽しむ」心が溢れるテーブルの彩り。Fire-Kingはそんな小さなアイテムであることは間違いない。 […]

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CIAO! LIFE〜シンプル&コンパクトに楽しむアウトドア

気楽にできるの? アウトドア 街の本屋やTV、ブログなどを賑わす“アウトドア”なモノやコトたち。都会を走るクルマまでがSUVやヘビーデューティー感溢れる大型四駆も増加の一途です。しかし、実際に「アウトドアをエンジョイしよう!」となると、やってみたいのは山々だけど、準備がね…。 道具がね…。 というようにまだまだ敷居が高いと感じる方も多いのもまた事実。 たしかに、大掛かりなキャンプや凝ったBBQをしようと思えば、それなりの装備や準備が必要になりますし、そうなると、事前のきちんとした計画も必要になりますよね。 本格キャンプやBBQはもちろんとっても楽しいのですが、その楽しさの原点とは、思い立ったが吉日!ではありませんが、スッと腰を上げて行動に移せるかどうかが重要なポイントではないでしょうか?     興奮と喜びは“外にある” そんなわけで、ちょっと手軽なアウトドアの楽しみ方を求めて、日本のキャンプシーンの第一人者、石角直樹(いしかど なおき)さんを訪ねました。彼は、関東で人気のファッショナブルタウン、二子玉川にあるビンテージランタンとオイルランプの専門店「viblant」(ビブラント)のオーナーです。その土地柄、若いカップルや最近では女性のお客さんも多いとか。取材当日も、かわいいアウトドアグッズやランプを求める姿が絶えませんでした。     石角さんは、かつては米国のアウトドアグッズの名門コールマン社の日本法人で、多くの直営店のプロデュースを手がけるなど、その筋では有名なアウトドアのひと。 ちなみに石角さんの結婚式はもちろん“アウトドア”だったそうなのですが、会場となった御殿場のキャンプ場には、彼を慕う全国のキャンパーたち200人余が集結し、屋外にバージンロードから祭壇まである本格的な結婚式をつくりあげたという伝説までお持ちです。   「キャンプって、プロのライセンスがないじゃないですか?プロとアマの線引きがないですよね。この緩さがたまらない…。もちろん、あの空気感とか、朝起きた時の爽やかさとかね。普段見られない物も見ることができます。たとえば、星空は街でも見られるけど、天の川を肉眼で楽しめるのはキャンプ場まで足を運ばなければならない。街中で流れ星をずーっと目で追うなんてことはなかなか難しい。それ以外にも、夜の動物との出会いも楽しくて、テントサイトのゴミ箱をあさりにくるタヌキとかね(笑)。鹿はすごいんです。近づいてくると、テントにでっかい影が映ってびっくり(笑)。とにかく、日常にはない何かに出会える楽しみがいっぱいあるんです。それがキャンプの醍醐味かな…。」   「思い立ったらすぐにやる」そんなクルマでのアウトドア・ライフ そんなキャンプの様々な楽しみを語る石角さんが、気軽に楽しめるドライブ&アウトドアをいくつか提案してくれました。     「たとえば、シングルバーナーという手に乗りそうな小さなコンロがあります。これとパーコレーターさえあれば、どこでも美味しいコーヒーを楽しめるんですよ。」     ホワイトガソリンのシングルバーナーは、非常にコンパクトで、持ち運びもカンタン。それだけではなく、気温の低下や風にも影響を受けません。なにより、本格感があるにも関わらず、実はかなりお手軽だったりします。 「さらに、折り畳みのチェアとコンパクトなテーブルがあれば、風景のよいところでのんびりと休みながらの贅沢なコーヒーブレークが楽しめます。ちょっとした行楽や道中の合間の道草でも楽しめたりするのでオススメです。 ちなみに車内で楽しむのもいいのですが、折りたたみのチェアなんてあるといいですよね。また、コットというキャンプ用の折り畳みベッドがあるんですが、ものによってはベンチとしても使えたりするものもあるし、ちょっとした昼寝にも使えたりと便利なんですよ。」 こういったグッズは、いずれも軽量でコンパクトなので車内でもまったく場所をとりませんからクルマに積みっぱなしという手もあります。     キャンプ場じゃなくても、アウトドアは楽しめる さて、アウトドアを楽しむためのツールは本当にたくさんの種類があります。そんなキャンプ用品のどんなところに魅力があるのでしょうか。 「やはり、コンパクトさと丈夫さですよね、なんといっても。あとはシンプルさ。シンプルだから壊れにくいし、修理すれば長く使えます。コールマンのランタンなんて100年前のものが現在でも普通に使えるわけなんですが、それは何より構造がシンプルなことが大きいと思うんです。これが例えばオイルランプだと構成部品が10点くらいしかない。コールマンのランタンだってせいぜい50点あるかないか。だから、誰でもカンタンにメンテが可能で長く使い続けられる。自分と同じ歳の道具で遊べるって、あんまりないでしょ…?」 そんなコダワリをみせる石角さんは、オリジナルの商品を開発、販売もしている。     「たとえば素材。うちのバッグ関係はコットン、つまり厚い帆布なんですが、いろんな道具を運ぶバッグとして使うには、当然丈夫でないといけないし、火に弱くてもいけない。だから帆布を使います。でも帆布のバッグは普通のミシンでは縫えませんし、縫製もしっかりしなければなりません。こうした要求すべてが連動して結果、機能と風合い、つまりモノとしての存在感がどんどんよくなっていくんですよ。こういうコダワリが出てくると、現場で使う道具の素材もできるだけ揃えたくなるんですよね〜。イスとテーブルのフレーム素材が違ったりしたら、やっぱりちょっと気になって仕方ない(笑)。」     石角さんのテントのセッティングはその美しさに定評があるのですが、きっとこうしたひとつひとつの道具の素材に対する気配りや選定、そして配置が成しうるものなのでしょう。 こうしたコダワリは、「心地よい空間を作るためには何が必要か?」ということを追い求めてきたからこそ生まれた結果なのでしょう。彼のお店が最近の若い子たちを惹きつけているのも、シンプルで長く愛せて飽きない。だからより愛着が増す…といった道具たちはもちろん、そのスタイルにどこか本能的な価値を見出しているのかもしれませんね。     プラスアルファにみる「楽しさ」 さて、この日はちょっとした荷物も飲み込んでくれ、しっかりと悪路も都会も走れる「気軽な四駆」フィアット500Xでお邪魔したのですが、このクルマを初めて見た石角さんが、隅々までチェックして大きく頷きました。     「本格的なクロカン四駆も好きなんですけど、やっぱりパッと乗れる、パッと出かける気軽さというのは本当に大事だと思うから、こういうタイプのSUVを見るとワクワクしちゃうんです。たとえば、大晦日に“そうだ、初日の出を見に行こう!”って寝袋とチェアを積んで、元旦の朝3時に出かけてクルマの横で朝日を眺める…。そんな簡単なことでもいいと思うし、なにより楽しそうじゃないですか? このくらいの広さがあれば遊びの道具もそれなりに詰めちゃうわけだし、それでいうと毎月テーマを決めて出かけちゃうと思うんですよ。2月は雪山でスノーボード、3月なら野草摘み、4月はベタだけど桜、6月ならホタルを見に行こう!とか。だから、こういうクルマを見ると、年中いつでもアウトドアで遊べるというイメージが湧いちゃうんですよね。」     チンクエチェントの系譜でありながら、新しい装備や駆動形式といったプラスアルファを持つ500X。新しいものとレトロフィーチャーの組み合わせが織りなす独特の雰囲気は、写真のようなレトロなウォータージャグとも不思議なマッチングをみせてくれます。     是非、次回は小さなクルマ、楽しいクルマで行く気軽だけど本格的な「アウトドア〜実践編」。つまり、ちょっとしたプラスアルファがもたらしてくれる「楽しさ」をご紹介頂きます。お楽しみに!     ビンテージランプ&アウトドアギア viblant 東京都世田谷区玉川2−15−13ヴァレンナ二子玉川2-A […]

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おいしいイタリア〜自宅で手軽にナポリ式カッフェ「クックマ」

大好評・バリスタ中川直也さんとのバール連載、4回目は自宅で飲める本格派カッフェを伝授していただきます。ドリップコーヒーとはまた違う濃厚な味わいのカッフェ・ナポレターノ。簡単なのにとてもおいしくできるので、思わずほしくなっちゃいます!       バールをこよなく愛し、なじみの店に何度も足を運ぶのがイタリア人の日常ですが、もちろん自宅でもカッフェを楽しみます。各家庭に直火式のマキネッタが必ずあり、しかも「家族2〜3人用」「家族で大量に飲む大人数用」「来客用」など大きさ違いで数個あるのが普通だといいますから、コーヒーがいかに暮らしに溶け込んでいるかがよくわかります。 マキネッタは以前こちらの記事でもご紹介しましたが、今回登場するのは、イタリアの中でもとくにコーヒーに強いこだわりを持つナポリ人が愛用する昔ながらの器具、クックマです。     「イタリア全土で近代的なモカ・マキネッタが使われているのに対し、ナポリ人だけは昔ながらのクックマを愛用しています。一日にバールや家で7〜8杯のコーヒーを飲むナポリ人ですが、その半分以上は自宅で飲むわけですから、クックマの使い方やレシピにもかなりのこだわりがあります。親から伝わる一子相伝的なものでもあるので、誰もが“うちのコーヒーが一番!”と思っていますね」と中川さん。     ナポリ人も納得のクックマは今から約170年前、19世紀前半に発明されたといいます。「サイフォンと同時期に誕生した器具です。20世紀になりイタリアでエスプレッソが発明されるまでの数十年で、フィルターコーヒーよりもより抽出効率が高い方法が発明されてきましたが、ナポリ人は古き良きものを大切にしますから、そういった面でもクックマを愛し、その器具を今でも使っている自分たちに誇りを持っているのだと思います。ナポリの文化を守り続けているんだ、という自負を感じます」 ではさっそく、クックマを使ってナポリ式カッフェを淹れてみましょう。     まずは内側の容器(穴あきのもの)に粉を入れます。今回は3杯用のクックマなので規定量は15〜17g。「18gぐらい使うとシロップのようなとろみ感が出て、ナポリ人が家庭で味わうようなカッフェ・ナポレターノになります。15gだといわゆるレギュラーコーヒーより少し濃い目かな、という感じ。お好みですが、まずはナポリ風を味わってみて」     容器の脇を軽く10回ほど叩いて、粉を均一にならします。指でぎゅっと押し込むと抽出しづらくなり、濃く出すぎたり苦味ばかりが強調されたりするので、軽くならす程度でOK。「もしご自身で豆を挽く場合は、グラインダーの粗さ表示を細かい設定にしてください。確実なのはイタリアの粉パックを使うこと。クックマやモカ・マキネッタに合うようになっていますから。イタリアではそもそもドリップコーヒーを飲みませんから豆を自分で挽く人もいないのです」     均一にならしたら、フタを閉めます。フチの部分に粉がくっついているとフタがきちんと閉まらず、うまく抽出できなくなるので、その部分についた粉は指できれいにはらってから閉めましょう。     注ぎ口がないほうの容器に熱湯を注ぎます。内側にラインがあるのでそれを越えないように。「温度は90〜95℃くらい。熱湯だと苦味や酸味が際立ってしまいますが、少し冷ますと脂質や糖質が溶けつつも、高温による苦味・酸味成分が出すぎないため、バランスのいいイタリア人好みの味に抽出できます。沸かした湯を冷たい容器に注げばちょうど適温になりますね」     先ほどのお湯の中にコーヒー粉を入れた容器を入れ(写真左)、残りの容器(注ぎ口の付いたもの)をすぐにはめます。 持ち手を持ってすっと上下をひっくり返し、その上にフタをのせたら、あとは5分ほど待つだけ。     ところで、最後にのせたフタは単なる飾りなのでしょうか? 「その通り。上容器のお尻の部分を隠してエレガンテに、カップに注ぐときもエレガンテに、という役割です」・・・エレガンテ! なるほどそれもイタリアらしいですね。 抽出が終わったら、濃さが均一になるよう容器の中で軽くまわします。香りを逃がさないよう上容器を付けたままカップに注ぎましょう。     おいしいカッフェ・ナポレターノのできあがり。簡単なのにとてもおいしいです! このコーヒー2杯分に、65℃程度に温めたホットミルクを加えれば、コクと優しさのあるカッフェ・ラッテも簡単に作れます。バニラやチョコのアイスと合わせれば、食後や夏のデザートにぴったりのアッフォガートに。 「夏にぴったりといえば・・・」と、中川さんが手早く作ってくださったもう一品は、淹れたてのコーヒーで作るカッフェ コン ギアッチ。「コーヒー withアイス、つまりアイスコーヒーです(笑)。氷さえあればいいので、僕も夏場はよく作ります。甘味も加えずにこのまま味わってみてください」     ワイングラスに氷を6〜7分目まで入れておき、できたてのカッフェ・ナポレターノを注ぐだけ。「できたてを急冷させるので甘味も酸もきれいな状態のまま。香り、味ともにぎゅっと閉じこもるんです。じんわり冷ますとおいしくないんですよね」 注いだら、グラスをまわすかマドラーでステアすれば完成。     「たとえばコンビニで買うアイスコーヒーは、苦味ばかりが立って甘味が少ない。コーヒーの旨味である糖質や油分がちゃんと溶け出していないから薄っぺらい味にしかならないんです。カッフェ・ナポレターノで作ったら、ひと味違うでしょう?」ひと味どころか・・・これ、本当においしいです! ワイングラスで飲むことで香りがさらに際立つし、夏のひとときを優雅に演出してくれる効果も。 自宅で簡単に作れるカッフェ・ナポレターノ。この道具があるのとないのとでは、暮らしの質が変わってしまうはず・・・そう思えてしまうコーヒー器具でした。次回は、カッフェ・ナポレターノで作るカクテルレシピをご紹介。クックマがますますほしくなっちゃうこと請け合いです。どうぞお楽しみに!   ***   フィアット松濤 ショールーム内のFIAT CAFFÉでも、クックマで淹れた「カフェナポレターノ」が飲めます。お気軽にどうぞ。 […]

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おいしいイタリア〜エスプレッソをもっと楽しむ。「イタリアエスプレッソデー」

イタリアのバール文化を紐解き、楽しみ方をお伝えする中川直也さんとの新連載。2回目は、イタリア人が一日に何度も飲むエスプレッソ。本場の味とは? そして正しい飲み方とは? 知っているようで知らない本物のエスプレッソ、その魅力をお伝えします。       エスプレッソの歴史を知ろう! 日本でもすっかりおなじみになったエスプレッソ。カプチーノやカフェモカなども含めれば、日々多くの方が味わっていることでしょう。とはいえ日本でエスプレッソドリンクが広まったきっかけは、チェーン展開されるアメリカ・シアトル系のコーヒーショップ。つまり、イタリア発祥である「本物のエスプレッソ」がみなさんに広く知られるのはまだこれからといえるかもしれません。 エスプレッソが誕生するひとつの転機となった舞台は、1800年代のイタリア。当時ナポレオンが発した大陸封鎖令によりフランス植民地で砂糖やコーヒー豆が極端に不足していました。すでにカフェ文化が台頭していたイタリアでは閉店を余儀なくされる店も現れたとか。そんな中、スタンダールやゲーテも立ち寄ったという1760年創業の「アンティコ・カフェ・グレコ」の3代目オーナーが、カップを小さくし豆の量を減らして価格も下げるという苦肉の策で試練に立ち向かいます。 結局、小さめのカップ(=デミタスカップ)で飲むスタイルは多くの客に受け入れられ、フランス領全土にこの流れが広がっていきました。その後、19世紀前半から中頃にかけては、より抽出効果の高い新しい方法として、サイフォン、フレンチプレス、ナポリ式クックマが登場。20世紀のエスプレッソ抽出へと、道は続いていったのです。 そして1901年、高圧力で濃厚なコーヒーを淹れる方法としてルイジ・ベッツェラが新しいタイプのマシンを開発、その特許を買い取ったデジデリオ・パヴォーニが1906年4月のミラノ万博に出品し、世界で初めて「Caffè Espresso」と表記したのが現在のエスプレッソの直接の起源といわれています。     世界初の「Caffè Espresso」が登場した1906年4月〜のミラノ万博を記念して、国際カフェテイスティング協会(IIAC)イタリア本部では毎年4月16日付近の週末を「イタリアエスプレッソデー」と制定(日本では、1906年のミラノ万博一般公開日にあたる4月16日を毎年「イタリアエスプレッソデー」としています)。     「長い歴史を持つコーヒー文化の中では、エスプレッソは比較的新しい飲み方です。イタリアのエスプレッソは豆の量から抽出の温度、圧力等々、細かな規定がありますが、それが決まったのもほんの20年ほど前。はやりすたりはイタリアにもありますし、おいしいカッフェの1つとして発展してきた中でスタイルとしての変化もあったでしょう。そんな中、イタリアは昔から培われた経験をもとに完成された味わいを守ろうとしています。実際に飲んでみて「これはイタリアンエスプレッソの定義に当てはまるキャラクターだ。適切な焙煎、ブレンド、抽出により、奥行きのある香りや味わい、余韻が感じられる」などと思える理想的な方向性を目指して、マシンも豆も、もちろん淹れ方も吟味されているのです」   そうして規定された「イタリアンエスプレッソの定義」がこちらです。 ・ コーヒー粉の量 7g±0.5g ・ 抽出圧力 9気圧±1気圧 ・ 抽出時間 25秒±5秒 ・ 抽出されたカフェの量 25ml±2.5ml ・ 抽出されたカップ内の温度 67℃±3℃ ・ 5種類以上をブレンドした豆で抽出     バリスタの実力を世界大会でジャッジし、後進を育てる立場でもある中川さん、「日本のバリスタはマジメで一所懸命な反面、仕事の途中で手が止まって、連動した作業ができていないなと感じることがしばしばあります。バリスタにとってカウンターはステージ。常に流れるような動きで作業することが大切です」と語ります。その言葉通り、抽出を待つ間にほかの作業をしたり食器を整えたりして、決して流れを止めません。もちろんお客さんのほうに向くときはいつも笑顔でした。   正しいイタリアンエスプレッソとは 各国でエスプレッソが飲まれるようになった今、原点回帰の必要性、つまり「これが正しいイタリアンエスプレッソだ」という定義を改めて認識する必要がでてきたといえるのかもしれません。「それはお客様だけでなくバリスタのためでもあります」と中川さん。「コーヒーは生活の流れの一部ですが、あくまでも流れであって、特別なワンシーンというわけではないと思います。おいしいコーヒーが当たり前に飲める。日常的な流れの中で、コーヒーを通じて快適な時間が過ごせる。そのためにバリスタにできること、すべきことはいろいろあるはずです」 本物のイタリアンエスプレッソとは何か? 日本人にとってはその基本的な問いにすら、正しく答えることは難しいのが現状です。でも、それは行きつけのバールで毎日何杯もエスプレッソを飲むイタリア人だって、同じなのかもしれません。彼らが知っているのは、エスプレッソの正確な定義ではなく「おいしいエスプレッソとはこういう味だ」という経験。「適切に抽出・作成されたエスプレッソとともに、空間の雰囲気を作るバリスタによって、おいしい経験ができるのだろうと思います」 私たちも、本物のエスプレッソを知り、正しい飲み方を知れば、生活のワンシーンにおいしいエスプレッソがごく普通に存在するようになるのではないでしょうか。4月16日のイタリアエスプレッソデーは、そのための第一歩になるかも。たとえば、イタリアカフェテイスティング協会日本支部ではその日に合わせたイベントなどをご紹介しています。また、イタリアンエスプレッソを味わえる店を集めたこちらのリスト を参考に、身近なお店で本物のエスプレッソを味わってみるのもおすすめです。     ナポリでは、必ず1杯の水と一緒に供されるエスプレッソ。水で口をすっきりさせてから味わうのがナポリ流なのです。 「日本でエスプレッソを淹れると、ブラックで飲もうとする方も少なくないです。でもエスプレッソは砂糖を入れてこそ完成する味。それも、ナポリ人を見習ってたっぷりの砂糖を入れ、30〜40回以上かき混ぜてみてください。混ぜる回数で味や口当たりも変わりますよ。ちなみに北の人はあまり混ぜずにさっぱりと味わうのが好きで、ナポリに代表される南の人たちは何度もかき混ぜてからその後は一息に飲みきりますね。しっかり混ぜることで乳化してキャラメル状になり、上品なチョコレートのような飲み口になります。おいしくないエスプレッソだといくら混ぜても砂糖の甘味だけが飛び抜けてしまうのですが、本物のエスプレッソはコク、酸味、甘味のすべてがバランスよく、複雑に仕上がっているんです」と中川さん。     左は淹れたてのエスプレッソ。1分ほど置いておくと右のように黒く変色してしまいます。「アロマも味もすぐに変わりますから、出されたらすぐに味わうのがエスプレッソを楽しむ極意。ナポリのバールに行くと、スプーンと砂糖を手に持ち、かき混ぜる準備をして今か今かと待ち受けているおじさんもよく見かけますよ」 18世紀にはすでにカフェテリアがあったイタリア。先述したグレコは1760年創業、ヴェネツィアのカフェフローリアンはそれより前の1720年、フィレンツェのジッリは1733年の創業で、しかもその歴史的な店が現存して営業を続けているのです。「カフェテリア創世記のいろいろなお店が今も現役で華やいでいるのがイタリアらしいですよね。ひとつの通りにいくつものバールがあり、そのすべてが個性的で、“これがイタリアのバールだ”なんて一緒くたに評価することはできないほど」と語る中川さん。そうして連綿と続いているカフェ/バール文化の深さには驚嘆するばかりです。そして同時に、本物のエスプレッソのおいしさやイタリアらしい陽気なバールの楽しみ方を日本のみなさんにもぜひもっと知っていただけたらと思います。     […]