静岡県・浜松市で開催されたフィアットピクニック2023に『500e(チンクエチェントイー)』で参加されていた遠藤一義さん。ミネラル グレーのそのクルマは、よく見ると関東のナンバープレートを付けていて、遠方から奥さまとお越しになられていた模様。お話を伺うと、ご職業は中学校の校長先生をされているそうです。納車から丸1年が経過したタイミングで、遠藤さんにお話を伺いました。 試乗はほぼ不要だった まずはEVを購入されたきっかけを教えていただけますか? 「もともとEVには興味があったんです。ただ、具体的に欲しい車種があったわけではなく、世にあるEVを見渡してもピンとくるモデルはありませんでした。そうしたなか、フィアットからEVが登場すると知り、ネットで調べてみました。そしてその姿を見たときに、とてもかわいらしく、自分が欲しいと思っていたクルマのイメージにピタっと重なる感覚を覚えたのです。それまでのクルマから乗り換えの時期が近づいていたタイミングだったこともあり、さっそくフィアットのショールームに足を運びました。そこで試乗をさせてもらい、即予約に至ったという経緯です」 『500e』オーナーの遠藤さん。 試乗してどのように感じられましたか? 「正直、乗らずともデザインを見ただけで、もう心の中は決まっていましたね(笑)。もともとガソリン車の『500(チンクエチェント)』も気に入っていて、いつか乗ってみたいと思っていた程でしたので。『500e』には、その面影が残りつつも、フロントライトがちょっと眠たそうな目に見えて、愛嬌があっていいなと思いました。ですから一応試乗はしたものの、それで気持ちが変化することはまったくなかったんです。もう“これにしよう。決めた!”と、そういう感じでした(笑)」 走らせてみて印象に残ったことはありましたか? 「乗ってみて、まず静かなことが印象的でしたね。“本当にこれで走り出すの?” という不思議な感覚でした。いざ走り出すと、アクセル操作にダイレクトに反応するじゃないですか。あ、電気自動車ってこういう感じなんだと、すごく新鮮でしたね。あの感覚は乗ってみないとわからないものだと思いました」 ご自身のクルマが納車された時はいかがでしたか? 「印象的だったのは、ボディカラーですね。ミネラル グレーのこの色はカタログのみで実車を見たことがなかったんですよ。それで納車の時が初対面だったのですが、見てこれは正解だと思いました。とても気に入りましたね。ディーラーの方にも“すごくいい色ですね”と言ってもらえましたし、フィアットピクニックのとき、帰りにお会いした方から“いい色ですね”と話しかけていただけたのも、とても嬉しかったです」 納車されて最初に何をされましたか? 「まず、納車のときにディーラーの前で記念写真を撮りました。それから自宅に乗って帰り、まずは充電を試しましたね。納車待ちの期間に自宅に200Vの充電用コンセントを付けてもらったんですが、それがちゃん機能することを確認しました。自宅はオール電化で夜間の電気料金が安くなる契約をしているので、充電の設定を深夜11時から5時までにし、それからはクルマで出掛けては帰ってきて充電するという生活が始まりました」 聞けば遠藤さんは、校長先生という立場ゆえ、学校の朝礼などで全校生徒の前で話すことも多いとのこと。時には環境問題について語ることもあるそうです。 「自分一人が電気自動車に乗り換えたところで、環境への貢献はごくわずかだとは思いますが、それでもやはり、個々が動かなくてはいけないと思います。私も子ども達に温暖化について話すこともあるので、じゃあ、自分には何ができるかというところで、電気自動車を選択したのも『500e』を選んだ理由のひとつにあります」 >>>次ページ 先生にとって特別なもの
ようこそわが家へ 勤め先の社用車だった『Panda 4×4(パンダ フォーバイフォー)』を、車両入れ替えの際に会社から譲り受けるかたちでマイカーとして迎え入れたという渡辺 忍(わたなべ しのぶ)さん。「ポコポコいうツインエアエンジンの音が愛嬌あって可愛いんです」とうれしそうに話すその表情にもマイカーへの愛が滲み出ています。仕事に励む傍ら、週末はお寺の宿坊体験のボランティアや趣味として楽しむヨガ、SUPなど、日常を満喫している模様。4WDの強みを発揮して日常をカラフルに楽しむ、そんな渡辺さんのPandaライフを覗かせてもらいました。 渡辺さんの『Panda 4×4』はもともと社用車だったのですか? 「そうなんです。社員やスタッフが移動に使うクルマで、私も乗らせてもらっていました。新車時は上司に“優しく運転してね”と言われていたので、アクセルを少ししか踏まないようにしていたら全然加速してくれなくて(笑)。“がんばれ、がんばれ!”なんて言いながら運転していました。見た目もかわいいし、だんだん愛着がわいてきて。会社が『Panda 4×4』を手放す時は私が引き取りたいです、と上司に前もって伝えていたんです」 (キャプション)『Panda 4×4』オーナーの渡辺さん。 社用車としてはどれぐらい活躍していたんですか? 「会社で使っていたのは5年ほどですね。ある年の冬に、雪道を移動する機会があったのですが、オールシーズンタイヤに履き替えていたこともあって、雪道も安心して走れたのを覚えています。その時はこんなに小さいクルマなのに、よく走るクルマだなと思いましたね」 渡辺さんはそれまで雪道の経験はあったのですか? 「実家のクルマやレンタカーを借りて雪道を走った経験はあります。随分前ですけどスキーに行くときに、自分でタイヤチェーンをつけたこともありましたよ。でも、それからしばらくは雪道を走っていなかったから、少し不安はありましたけどね(笑)」 ご自身でこれまでマイカーを所有された経験は? 「実は『Panda 4×4』が初めての自分のクルマなんです。マイカーはずっと欲しかったんですけど、東京でクルマを所有するのって維持費が悩みどころで、いつも踏み切れなかったんです。でも『Panda 4×4』と出会ってしまったので、購入前に出費を想定して、その分を毎月貯められるかシミュレーションしてみたんです。それで所有できるとわかったので購入したという経緯があります」 『Panda 4×4』が自分のものになったときは、どんな気分でした? 「初めての自分のクルマだったので、ようこそわが家へ!みたいな感じでした(笑)。名義変更や駐車場の契約なども自分でやったのでより愛着がわきました。ただ、その後コロナ禍になってしまったので、あまり遠くに乗りに行けなかったんですけど、日常の買い物に使うだけでも嬉しかったです」 >>>次ページ 車内で過ごすかけがえのない時間
『Doblò』とともに趣味のキャンプを楽しんでいる石井一行(いしい・かずゆき)さん。以前は『500X』にお乗りだったという石井さんに『Doblò』を購入したきっかけや『Doblò』とのキャンプライフについて自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。 『Doblò』はキャンプ道具のひとつ 2023年5月に国内発表された『Doblò(ドブロ)』は、その広大な荷室やイタリアンならではのどこか明るい雰囲気から、自由な発想でクルマとの暮らしを楽しみたいユーザーが選ぶのだろうな、と予感させてくれる存在。遠からずそういうユーザーと出会うだろうな、とデビュー時から思っていました。そして2023年10月28日に行われたFIAT PICNIC 2023で、すでにクルマをソロキャンプ&車中泊仕様にして楽しんでおられる方と出会いました。石井一行さんです。キャンプを趣味にされている方の目に『Doblò』はどう映るのか。そのあたりのお話を伺ってきました。 ▲『Doblò』 石井さんは高校生の頃にご両親といっしょに体験して以来、ずっとキャンプを趣味にしてきたのだそうです。奥さまと娘さんの3人家族。奥さまもキャンプに同行されるし、娘さんもキャンプ好き。これまではクルマに道具を積んで現地まで行き、テントを設営して、というスタイルで休日を楽しんできたのだとか。そして『Doblò』を購入するひとつ前のクルマが、『500X(チンクエチェントエックス)』でした。 「もともと『500(チンクエチェント)』がずいぶん前から気になっていて、年を取って2人で旅行に出かけるときにはこういうのがいいよね、なんて妻とも話していたんですよ。それで娘が免許を取るタイミングで小さいクルマに換えようということになって、いろいろ考えて『500X』を購入しました」 ▲石井一行さん もう少し詳しく教えてください。いつ購入されたんですか? 「去年の11月ぐらいです。最初に頭の中にあったのは、小さい方の『500』だったんですよ。すごくかわいいし、乗ってみたかったから。でも『500』の実車をショールームで見て、容量的に僕たちの使い方には合わないって思ったんです。さすがに3人と3人分のキャンプ道具を全部は積み込めないですからね。それで『500X』を選びました。『500』がそのまま大きくなったイメージで、こっちもかわいいな、って思ったんですよ」 まさに『500X』の開発メンバーたちが思い描いていたオーナー像ですね。実際に所有して、いかがでした? 「不満は何ひとつなかったです。サイズも適度にコンパクトでよかったし、走れば意外とスポーティだし。家族の評判もよくて僕自身もすごく気に入っていました。なのに1年も乗らずに買い替えてしまった(笑)」 それはなぜなんですか? 「『Doblò』が発売になったからです。妻に『こんなクルマがあるんだよね』って話したら『いいね』って言うので、いっしょにショールームに行ったら妻も乗り気だったから、そのまま買い換えちゃったんです(笑)。『500X』も本当に気に入っていたんですけどね」 決め手になったのは、やっぱり荷室ですか? 「そうですね。昔はキャンピングカーが欲しかったんですけど、現実的ではないでしょう?日本のミニバンも考えたことはあるけど、フィアットのミニバンがあるならそっちを選びたいじゃないですか。調べたら車中泊もできそうだから、これはありだって考えたんです。『500X』のときまでは車中泊じゃなくて、目的地まで行ってテントを設営して、というスタイルでしたから。だから最初からベッドキットのお金もちゃんと用意して、ベッドキットとオールシーズンタイヤをディーラーで組んで納車してもらいました」 ベッドキット以外、今はどんな道具を積み込んであるんですか? 「ソロ用テント、タープ、焚火台、椅子、寝るためのコット(簡易ベッド)。あとは料理用のものとかバーベキュー用の炭。たまたま今は犬のキャンプ用ベッドみたいなものも積んでありますね。ボックスの中はライトとかの小物が入っています。あと、通常の家電は何でも使える容量のバッテリーと、さらに充電もできるように太陽光パネルも。ここまでいるのか?っていうのはあるんですけどね(笑)」 何年もかけて選りすぐってきた道具類なんでしょうね。 「このクルマを買うときにいろいろ調べて、必要なものを積んでいます。家族とずっとキャンプをしてきたので、道具全体としては12年ぐらいかけて揃えていますね。今ここに積んであるのはソロキャンプ用で、自宅に家族用のものがあります。ソロキャンプを始めたのは去年ぐらいかな?まだこのクルマで家族3人でのキャンプには行ったことがなくて、僕がソロで3回ほど車中泊をしただけなんですけど、快適に使えていますよ。少なくともふたりなら楽に眠れる広さがあって、真っ平らにできるから疲れないんです」 なるほど。『Doblò』じゃないと車中泊仕様にはできなかったんですね。車中泊って楽しいですか? 「楽は楽だけど、キャンプの醍醐味から考えると、やっぱりテントを張った方が面白いな、とは思っています。ただ、撤収のことを考えると、朝起きて食事が終わったら片付けはじめて……って、ちょっと慌ただしいんですよね。家族で行くときは2泊以上でやらないと、あんまりゆっくりできないんです。今は娘も大学に入って土曜日も学校があったりとか、家族の生活スタイルが変わってきていることもあって、ソロのときには車中泊もありかなって思いはじめたんですね。目的地まで走っていって、寝床はクルマじゃないですか。設営はタープを貼るだけで、あとはゆっくりと焚き火とお酒。撤収にも時間はかからないから、朝もゆっくりできる。そういうよさがありますね。ひとりだったらなおさら車中泊ですよ。『Doblò』はそういう使い方ができるんですよね」 ちなみに今、『Doblò』に積んである道具だけで何泊ぐらい行けちゃうんですか? 「車中泊ができるわけですから、あとは食べ物さえあれば、ソロなら何泊でも。ソロ用のテントを広げることもできますから、気分を変えたくなったらそうすることもできます」 どこにでも行ける仕様じゃないですか。 「気持ちだけは(笑)。これから車内に妻と娘、僕が外に張ったソロ用テントで、というふうにいろいろなことを試してみたいな、と思っています。『Doblò』のおかげでキャンプの可能性が広がりましたね」 そういえば、さきほど犬用のベッドとお聞きしたんですけど……。 「はい。うちには犬が2匹いて、家族でキャンプや旅行に行くときには必ずいっしょなんです。だからキャンプサイトもホテルも、犬がOKなところを選んでいます。普段は家の中で放し飼いなので、キャンプのときはテントの中で放し飼い(笑)。いっしょに寝ているし、寒くなれば寝袋の中にいっしょに入ってきますよ。あとはリードをつけて自由にテントの周りで遊んだり。キャンプとかに出掛けるときはなんとなく感覚でわかるから、朝から大騒ぎですよ(笑)。『Doblò』になってからは軽井沢のドッグランのあるホテルにいっしょに行っただけで、キャンプはこれからなんですけどね」 ちなみに、キャンプをする人ってどういうクルマを好むものなんですか? 「人それぞれだと思うんですけど、僕の場合は、キャンプ場って地面が凸凹していることが多いから、車高はある程度クリアランスがあるものがいいし、そういう場所なのでアウトドアに似合う雰囲気のクルマがいいなって意識したりしますね。キャンプ好きの仲間たちも、わりと同じ傾向です。前の『500X』も今の『Doblò』もそうですけど、クルマを道具として考えたら、本当にいい道具。『Doblò』はひとつ“いい道具”感が高くなった感じですね」 次のページ:【いつでもどこにでも行けるクルマ】
クルマ好きのお客さんのガレージハウスを設計するなど、建築士として活躍している近藤光一(こんどう・こういち)さん。普段乗りできる楽しいクルマとして『500C TwinAir(チンクエチェントシー ツインエア)』を購入された近藤さんに、フィアットを選ばれた理由、そして『500』の魅力について自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。 『NUOVA 500』と同じオープントップ 今回登場していただく近藤光一さんは、ガレージハウスやビルトインガレージ住宅、店舗などを手掛ける建築士さん。趣味のフランス製クーペとハッチバック、イタリア製オープンスポーツカー、普段使いの日本製SUVと奥さま用のフランス製MPV、そして普段乗りもできる趣味のクルマとして2022年に『500C TwinAir(チンクエチェントシー ツインエア)』を増車したエンスージャストでもあります。 「僕は趣味のクルマの世界にはフランス車の方から入ってきているんです」とおっしゃる近藤さんが『500』のどんなところに惚れ込んでいるのか、お話を伺いました。 ▲近藤光一さん フランス車の世界から入った、とはどういう流れなんですか? 「最初のうちは日本車を2、3台乗り継いでいたんですけど、途中で何か虚しくなっちゃったんですね。だけど、たまたまうちの近所でフランス車のハッチバックを試乗したら、よく走るし乗り心地もいいし安い。そこからフランス車の世界に入ったんです。日本車を乗り継いでいたときには足はガチガチが偉い、街の中では信号での出だしが速ければいいみたいに、クルマの価値観が凝り固まっていた部分があったんですけど、そのクルマに乗ってからはどうでもよくなっちゃいました。すべての方程式をそこから組み直した感じです」 『500』との出逢いは? ▲近藤さんご自宅のガレージと『500C』 「実は、プロトタイプの『トレピウーノ』を見て興奮したタイプなんです(笑)。2004年に発表されたのを知って、早く出ろ、早く出ろ、って。デザインに惹かれて、欲しいと思ったんですね。僕はフランス車が好きな一方で、昔からクラシックなイタリア車に趣味で乗っていて、それが今持っているオープンカーなんです。イタリアやイタリアの文化、イタリアのクルマも大好きなんですよ。それで2007年の新型『500』デビューのタイミングに合わせてチンクエチェント博物館がイタリアツアーを企画してくれたので、僕も参加して『500』のインターナショナルミーティングにも行きました。実はそのとき、僕は新型『500』を買うつもりで行ってるんですよ。おつきあいさせていただいている博物館の伊藤精朗代表が誘ってくれたから、みんなで買いに行きましょう!って(笑)。そう言ったくせに、結局、15年間買わなくて……」 何か理由があったんですか? 「発表されたのは2007年でしたけど、クルマは2008年まで入ってこなかったじゃないですか。その間にいろんなクルマの誘惑があって、手元のクルマが増えちゃったんです。もうこれ以上は増やせないし、でもずっと気になっているし、っていう状態で15年が経っちゃったんですね」 15年の沈黙を破って『500』を購入することになった、そのきっかけは? 「コロナ渦と世界情勢の影響、ですね。ちょうど1年前の初夏、それらが原因で部品が入ってこなくなっちゃったんですよ。奥さんのクルマと古いオープンカー以外、あれもこもれもぜんぶ動かせなくなっちゃったんです。だから仕方なくエアコンもパワーステアリングもない、古いオープンカーを足に使っていたんですよ。真夏に(笑)。打ち合わせで現場にも行きたいしお客さんのところも行きたいんだけど、汗染みだらけの変な人が来たって思われたら嫌だなって考えていたら、友達がチンクエチェントのレンタカーがあることを教えてくれて、借りることにしたんです。そこで気がついたんですよ。僕は15年間、このクルマを買ってなかったって。結局3ヶ月借りて、秋に自分の『500C』を買いました。ツインエアにするか1.2ℓにするか迷いましたけどね」 『500C』を選んだのはなぜでしょう? 「最初の『NUOVA 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)』のトップって、お尻の方まで開くんですよね。あのデザインこそが『500』だと思っていたんです。だから2009年の春先に『500C』が追加されたとき、それをモチーフにデザインしてくれたことが嬉しくて。ルーフの上の部分だけじゃなくてお尻の方までトップが降りてくる。これだよこれ!と思って、最初から『500C』を買うつもりでした」 ツインエアを選んだのは? 「1.2ℓの『500』のレンタカーに乗っているときに、高速道路の長い登り坂で個人的にトルク不足を感じたんです。僕なんかはデュアロジックでギアを落としてエンジンの回転を上げてしのぎますけど、奥さんは苦手みたい。それでショールームに行ってツインエアを試乗させてもらったら、やっぱり元気だなって感じたんです。トルクがありますよね。これなら大丈夫って確信しました。実際、僕の家のまわりも坂道が多いんですけど、力強さには不満はありませんよ」 次のページ:【一家に1台『500C』だな、って思う】
フィアットに心惹かれてから、1年間ほど“フィアットファン”として過ごしていたという波多野(はたの)あゆみさん。その後、『500』を購入にいたった経緯やどんなところに魅力を感じているかについて自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。 少しずつ少しずつ“好き”が膨らんでいきました 「私、もともとはまったくクルマに興味がなかったんです。免許は取っていて、仕事に行くために必要だからクルマを買うことになったときも、安いし安全そうだからこれでいいか、っていう感じで何も考えずに決めていました。なのに、『500(チンクエチェント)』に出逢ってからガラッと変わっちゃいましたね(笑)」 そう笑うのは、波多野あゆみさん。数年前まではクルマに興味がなかったというのに、現在では6年前から愛車となっているカントリーポリタンイエローの『500』にずっと心を奪われ、クルマのことも大好きになった模様。いったいなぜそうなったのか、お話を伺ってみました。 あゆみさんは昨年の7月に結婚されたとのことですが、転機はのちの旦那さんの家に遊びに行ったときに訪れました。今から7年ほど前のことでした。 「彼の家でフィアットからのDMを見て、このオニギリみたいな形をしたかわいいクルマは何だろう?って思ったのがきっかけでした。ちょうど『500』がマイナーチェンジをして新しい顔になったよっていうお知らせで、ポップコーンをイメージした白の『500』がデザインされているDMでした。そこで気がついたんです。駐車場で彼のクルマの隣りにいつも停まっているクルマ、フィアットでしょ!って(笑)。それまでクルマに興味がなかったから、まったく気にしてなかったんですね。調べてみるとチャチャチャアズールカラーの『500』であることが分かって、それからすごく『500』を意識するようになって……」 ▲波多野あゆみさん そこで『500』いいな、って思っちゃったんですね? 「そうですね。お隣のチャチャチャアズールがすごくよかったんです。デザインと色と雰囲気の完璧なクルマがたまたま近所にいて、ハマってしまいました。私はもともとオタク気質があって(笑)。ハマったら自分がどうなるか知っていたので……」 ハマるとどうなるんですか? 「『500』が出ている雑誌や新聞を見つけたら全部買って、ちょっとでも載っているところがあったら切ってノートに貼って。ほんとハマるとやばいですよね(笑)。これはもし自分がフィアットに乗ったら大変なことになると思って、推しのことは“かわいい”“かわいい”って楽しむだけにしよう、それですませておこう、って思っていたんです。それはそれで楽しかった。1年くらいずっとファンしていて、その当時は今ほど『500』が周りで走っていなくて、出会うのがちょっと珍しい感じだったので、出かけたときにすれ違うたび彼と大騒ぎしていました」 なるほど。最初のうちは“かわいいな”と思っても、自分で乗ろうとは思ってなかったわけですね。なのに、なぜ購入する方向に……? 「少しずつ少しずつ“好き”が膨らんでしまって。私、下調べをいっぱいしていたんですよ。実際に乗っている人のブログとかを見たりして、壊れないかとか、どういう仕様なのかとか、ちゃんと走るのかとか。かわいいだけじゃやっていけないから、ちゃんとクルマとして安心して乗れるのかとか。そうしているうちに“キュン”ってする気持ちがどんどん大きくなって、いつからか自分が乗りたいって思うようになっちゃったんです。好きすぎて『500』の絵を練習しはじめたりとか。乗るからには描けなきゃ、って(笑)」 ハマったらどうなるか、の一端がわかった気がします(笑)。購入されるときはどう踏ん切りをつけていったんですか? 「買いたいという気持ちが出てきた頃からフィアット貯金をはじめました。働きはじめてまだ少しだったから貯金が少なくて、1年ぐらいして頭金が貯まった頃に勇気を出してショールームに行きました。最初はチャチャチャアズールが欲しかったんですけど、ぜんぜんなくて、だけどもう乗りたい気持ちが膨らんじゃっているから、1ヶ月もたたないうちに今のカントリーポリタンイエローの『500』に決めちゃいました。全般的に黄色のものは好きだったので」 ▲カントリーポリタンイエローカラーの『500』 最初に『500』を意識した瞬間からたった1年で、激変しましたね(笑)。購入するときに試乗もしたと思うんですけど、最初に『500』に乗ったときにはどんなふうに感じました? 「それまで普通のクルマにしか触れてこなかったので、最初はちょっと癖があってビックリしました。デュアロジックは初めてだったので。でも運転していて慣れていく感じがしたから、ちっとも嫌じゃなかったです。というか、何より乗っている時間が本当に楽しかった。ついに運転しちゃった!って緊張で手が震えちゃって。試乗のときには彼が後ろに乗っていたんですけど、そのときの様子を写真で撮られてました(笑)。彼も『乗った方がいいよ、そんなに好きなんだったら買った方がいいよ』って、押し押しでした。憧れていたクルマ、すれ違うたびに私を笑顔にさせてくれたクルマが、とうとう自分のものになるんだ、好きすぎるこの推しに私が乗ることになるんだ、って本当に嬉しい気持ちになりましたね」 次のページ:【お気に入りのカフェのドアを開けた瞬間の気持ち】
クルマ仲間と気軽に集まることの出来るイベント『新舞子サンデー』を主催したり、チンクエチェント博物館のイベントのお手伝いをしたりと、イベントのディレクターとして活躍される猪飼是尋(いかい・ただひろ)さん。イタリア車好きの猪飼さんの愛車『500』について、購入のきっかけや魅力などを自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。 自分を穏やかにさせてくれる雰囲気が、本当に大好き 東海エリアのクルマ好きの間でよく知られている『新舞子サンデー』というイベントがあります。6月から8月を除く毎月第3日曜日に愛知県知多市の新舞子マリンパークで開催されているいわゆる“置き系”イベントで、毎回300台を越えるクルマたちが集まって楽しい時間を過ごします。 そのイベントを2010年にはじめ、現在もディレクターとして運営を取り仕切っているのが、今回登場していただいた猪飼是尋(いかい・ただひろ)さんです。その手腕を買われて、チンクエチェント博物館が主催する“ミラフィオーリ”や“トリコローレ”といった全国に広く知られるイベントのディレクターとしても活躍されています。 ▲猪飼是尋さん 猪飼さんはイタリア車好きとしても知られていて、その愛車の1台が『500(チンクエチェント)』。2010年に300台限定で販売された、ブルー ヴォラーレの『500 Azzurra(アッズーラ)』です。もともとは現在も並行して所有するイタリア・ミラノのブランドのクルマの愛好家でもあるのですが、同時に「これからの僕の人生の中で『500』というクルマを持たない時期はもうないだろうなって思っています」というほど、トリノのブランドの小さなクルマがお気に入りの様子。その理由を訊ねてみました。 まずは『500』を購入することになったきっかけを教えてください。 「実は最初、自分が買うべきクルマだとは思っていなかったんです。もちろんフィアットは好きだったし、試乗して欲しいと思ったこともあったんですけど、すでに趣味のクルマが別にありました。あと、何より高校生と中学生の娘3人がいる5人家族なので、家族全員で乗ることを考えたら『500』だとやっぱり小さいんですね。それで家族用に国産のハイブリッドカーも所有しているんですけど、1年半前に職場の移転で公共交通機関からクルマ通勤に切り替える必要が出てきて、どうせならイタリア車で通勤したいっていう気持ちが強くなり、『500』を購入することにしました」 ▲『500』 いいチャンスだったんですね。実際まいにち乗るようになってみて、いかがでしたか? 「こんな楽しいクルマ、なかなかないな、と。乗ってみて初めてわかる良さ、楽しさっていうのが、あふれるように伝わってくるクルマなんですよね。仕事では日々せわしくしているんですけど、『500』ってゆっくり走っても誰にも何も言われないし、自分のペースで走れるんですよ。ほかのクルマに乗るときとは、右足への力の入り方が変わるんです。『500』のいいところってそこで、それは買った当初も今も変わってないです」 たしかにそういうキャラクターの持ち主ではありますね。 「そうですね。この“キャラクター”っていうのがすごく大切で、そんなに急がなくてもいいよ、せかせか生きなくていいよ、って言われている感じがするんです。今までいろんなタイプのクルマに乗ってきて右レーンを走ることが多かったんですけど、『500』だと基本は左レーン。僕はどっちかというと少し早めに現地に着こうって思うタイプなんですけど、『500』に関してはゆっくり走った方が楽しいから、それを見越して早く出発するんです。不思議ですよね。すごく穏やかな気持ちにしてくれるクルマ。平和な空気感というか、自分を穏やかにさせてくれるこのクルマの雰囲気が、本当に大好きなんですよね」 『500』には意外とスポーティな一面もあるわけですが、そっちの方は……? 「がんばって走ると、たしかにそれはそれで楽しいです。ワインディングロードのようなところを走ると、気持ちよく曲がってくれますからね。『500』の1.2ℓのファイアエンジンは設計も古いし非力といえば非力なんだけど、よく回ってくれて楽しい。シーケンシャル操作でギアを変えながら回転を上まで引っ張っていくと、結構速い。普段はATモードで走っていますけど、そういう道に行ったときにはシーケンシャル操作で走りを楽しんだりしています。まったりと元気の両方が楽しめるのも『500』のいいところですね」 次のページ:【この先ずっと『500』と名のつくクルマに乗っていこうと思っています】
広告制作会社にお勤めの小島潤一(こじま・じゅんいち)さんにアートディレクターの目線で、13年間乗り続けている『500C』について語っていただきました。フィアットを選んだ理由やデザインの魅力について、自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺います。 昔から全般的にクラシカルなデザインのものが好き 今回ご登場いただく小島潤一さんは、日本でも有数の広告クリエイティブを手掛ける会社にお勤めの、アートディレクター。企業や商品、大型施設などのブランディングを取りまとめ、TVCMの企画からロゴ・パッケージ・空間まで多岐にわたる分野のデザインも手掛けてこられました。またプライベートでは1961年式の英国製ライトウェイトスポーツカーを長年所有しつづけてきたエンスージアストでもあります。 そしてもう1台の愛車が、2010年に50台限定で販売された、テックハウス グレーのボディに赤いソフトトップが組み合わせられた『500C VINTAGE(チンクエチェントシー ヴィンテージ)』。優れた審美眼や絶妙なバランス感覚、そして豊かな遊び心が要求されるお仕事につき、クルマ趣味の酸いも甘いも体験してきている小島さんが、新車で購入されてから13年間、なぜ『500』に乗り続けているのか、お話を伺いました。 ▲小島潤一さん 小島さんの車歴は、誰もが知っている英国製の小さな名車からはじまったのだそうです。 「19歳のときに買って、6年乗りました。でもエンジンを降ろすことになりお金がかかりそうだったので、フランス製の洒落た小型ハッチバックに乗り換えたんです。でも、しっくりこなくて、半年ぐらいで国産オープンスポーツカーに。すごくダイレクトで、レスポンスもよかったし、ここでオープンの魅力を知りました。まわりにはヒストリックスポーツカーに乗っている知り合いがたくさんいて、こういうブレーンがいれば古いクルマに乗っても平気かな、と思って今の1961年式の英国製オープンスポーツカーに乗り換えたんです。30年ぐらい前の話ですね」 ▲小島さんご自宅のガレージ そのクルマが持つ独特の世界観と、全身で楽しさを感じられるドライビングフィールに魅せられてしまった、ということなのでしょう。でも、驚いたことに小島さんはそれから20年ほど、その小さなスポーツカー1台で過ごしてこられたのだとか。その間に結婚もされ、奥さまも“クルマっていうのはこういう(長く乗る)ものだ”と思ってこられたのだそうです。にも関わらず、2010年に突然『500』を購入されたのはなぜなのか、やはり気になります。 「小さいクルマが好きだし、昔から全般的にクラシカルなデザインのものが好きだったから、古い『500』もすごく好きだったんです。以前、かつての名車をモダンにデザインしなおしたようなクルマがいろいろなメーカーから出たじゃないですか。その流れの中でフィアットからも『500』がデビューして、『これはやばいな』と思ったんです。普段使いのクルマの必要性を感じていたから。でも、なぜか踏み出せなかったんですよ。そのあと、アンテナを張っていたらテックハウス グレーに赤いソフトトップのモデルが出て、昔の『500』のルーフをパタパタって開けるのに似ていて、即、買っちゃったんです。ショールームですぐに売り切れちゃうと思うっていわれて、ほとんど一目惚れの衝動買いですね(笑)」 ▲『500C VINTAGE』 イタリアはデザインの国なんだな、と改めて思う ひとりのデザイナーとして、『500』のデザインをどうご覧になりますか? 「購入の決め手がデザインってくらい、かなりレベルが高いと感じますね。まったく隙がなく、旧型のコンセプトを継承しつつ、モダンにかわいくまとめている。昔の『500』もそうだけど、ヘッドライトのところからボディを1周する筋があって、そこから下がもっこりしている感じは今の『500』も受け継いでいる。日本車だったらこういうところにモールを入れて分けちゃうところなんでしょうけど、でも『500』はそこを面の構成による光の反射だけで表現している。そういうところが好きですね。内装が昔と同じボディ色のインストルメントパネルっていうのも、今のクルマではなかなかないじゃないですか。シートにあしらわれた白いパイピングとか、その洒落ている感じにも惹かれます。イタリアはデザインの国なんだな、と改めて思いますね」 オープンの『500C』を選んだのは、やっぱりオープンが好きだからですか? 「もちろんです。僕たちの仕事はここまでやれば“OK”っていうことがないから、平日は予想外に仕事の予定がみっちりになっちゃうんです。だから週末にオープンで走っていると、たとえ近所の買い物とかでも気持ちが開放されるので」 普段どんなふうに『500』に乗っているんですか? 「日頃は横浜の街乗りばっかりですね。月イチで開催されるマルシェに食材を買いにいって、そこでトートバッグいっぱいに買って帰ってきたり。『500C』って、そういうときの使い勝手は見た目以上にいいですよ。ハッチバックと比べると荷物の入るスペースが小さいと思っている人が多いですけど、実は開口部が狭いだけで容量はあまり変わらないんです。大きな荷物をドンと積むとかでなければ、積める量はほとんど同じなので不自由はないです」 『500』でどこかへ出掛けたりはしますか? 「年に5〜6回、三浦半島に行ったりはしますよ。母親の実家があって、幼い頃から馴染みがあるんです。昔からドライブは三浦半島ですね。家から1時間以内で行けるし、海もあるし丘もある。ヨットハーバーみたいのもいくつかあって、かなり開放感があるんですよ。あとゴールデンウィークと夏休みには、『500』で行ける範囲で旅行もします。いちばん遠くまで行ったのは京都の日本海側ですかね。あるときInstagramで琵琶湖の湖畔の“#あのベンチ”っていうのを見て、行ってみたいと思って。湖とそれを眺めるベンチと木とクルマをいっしょに写真を撮れる、撮影スポットなんです。そしたら、そこから京都の海沿いまでわりと近いことに気づいて。加えて、知多半島や岐阜にも行ったので、4日間で1,500キロくらい走りました。『500C』はロングドライブでもあんまり疲れないんですよ。それに、マニュアル操作でその気になってドライブすると結構元気よく走ってくれて、楽しいですよね」 次のページ:【代わりになるものが思い浮かばない】
10年間『500』に憧れ続け、現在は『500 Dolcevita』に母娘で乗るサチエさんと、エミナさん。親子ふたりで楽しんでいるというチンクエチェントライフについて、自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。 10年間ずっと欲しかったクルマだったので、感動的でした 今回お話をお伺いするのは、2021年に即完売となった限定モデルの『500 Dolcevita(チンクエチェント ドルチェヴィータ)』を幸運にも手に入れることができたサチエさんと、免許取り立てのエミナさんです。 ▲サチエさん(左)、エミナさん(右) サチエさんは2009年頃に街で『500』と出逢い、ひと目惚れ。けれどその後は、10年以上も思いを募らせるばかりでした。 サチエさん「なんてかわいいクルマなんだろう!って衝撃を受けたんです。それからは街で『500』とすれ違うたびに『いいな。かわいいな。欲しいな』って、いつもクチにしていました。クルマに対してそんな気持ちになったこと、なかったんです。でも、日本車の販売店に勤めている友達にずっとお世話になってきたから、買い換えたいって言えなくて……」 エミナさん「母が『ああ、かわいい、やっぱりかわいい』って言っていた記憶はありますね(笑)。私もクルマのことは何も知らなかったけど、でも母がずっと『かわいい』って言っているクルマだっていうことはいつの間にか認識できていて、その後もずっとずっと『かわいい』って言い続けていたから、いつ買うんだろう?って思ってました(笑)」 転機が訪れたのは、サチエさんがフィアットの公式Instagramを見るようになってから。ある日、『500 Dolcevita』の写真を見て、胸が高鳴ったとおっしゃいます。 サチエさん「白いレザーシート!これだ!って思いました。好みにドンピシャだったんです。すでに『500』に乗っていた友達に相談したら、早くしないとなくなっちゃうよって言われて、でも意味がわからなくて(笑)。フィアットの限定車はすぐに売り切れちゃうこと、知らなかったんですよ」 ▲『500 Dolcevita』 サチエさん、エミナさんが一緒にショールームを訪ねると、残り1台で商談待ちが2組。ドキドキしながら待っていると、何と2組とも購入には至らず。商談の権利が巡ってきたそうです。 サチエさん「地方に単身赴任をしていた主人に17時頃に電話が繋がって、『あと1台しかなくて、しかも19時までに返事をしなくてはいけないの』と購入を懇願したら、『ずっと欲しかったんだもんね。いいよー』と言ってくれたんです。思わず泣きそうになりました」 『500』のどんなところに、そこまで惚れ込んだんですか? サチエさん「かわいいところに尽きますね。正面の顔が笑っているように見えるところとか、お尻がキュッてあがっているところとか。いや、全部ですね。ホワイトのボディカラーも赤いダブルのストライプも。クロームのエンジンフードのラインも、ホイールも、“500”ロゴの入ったサイドモールもリアゲートの“Dolcevita”のロゴも。それに、アイボリーを基調としたエレガントなインテリア!ポルトローナフラウ製の赤いパイピングがついた白いレザーシート、ナチュラルウッドのパネル、beatsのスピーカー。すべてがお気に入りです。ただ、私が購入したときにはすでに売り切れていた青と白のボーダー幌の『500C Dolcevita(チンクエチェントシー ドルチェヴィータ)』への憧れがあって、ガラスルーフのサンシェードやフィアットのバスケットを青と白のボーダーで装飾して楽しんでいます」 いざ『500』と暮らすことになって、初めて走らせたときにはどんな気持ちでしたか? サチエさん「ニヤニヤが止まりませんでした。エンジンをかけると“Dolcevita”の文字がモニターに浮かび上がるのですが、それだけでもううれしくて。ああ、私『500』を運転してる!って。10年間ずっと欲しかったクルマでしたから、感動的でしたね」 エミナさん「まわりから見たらあやしく思われそうなくらい、嬉しさのオーラがすごい感じでした」 毎日一緒に過ごしてみて、『500』はいかがですか? サチエさん「2年ちょっと経ちましたけど、毎日かわいいですね」 エミナさん「一緒に乗っていると、母はクルマから降りるときに必ず『ああ、今日もかわいい』って言うんです。たしかにかわいいけど、普通、そんなに毎日『かわいいかわいい』って言わないですよね(笑)」 エミナさんは免許を取ったばかりだそうですけれど、『500』を初めて運転したときはどんな気持ちでしたか? エミナさん「免許を取った次の日だったので、ちょっと緊張しました。ずっと助手席に乗っていたので感動はそんなにはなかったんですけど、でも、このかわいいクルマを運転しているんだ、気分が上がるな、って感じましたね。『500』を運転している友達はひとりもいないので、自分のクルマじゃないんですけど、特別な感じがしてちょっと嬉しいな、って思いました」 次のページ:【『500』は誰にでも愛されちゃうから】
赤い『500』から赤い『500C』へと乗り換えた、織戸秀行(おりと・ひでゆき)さんと真梨子(まりこ)さんご夫妻。“今では完全に趣味=『500』”というお二人に、フィアットによって変化したライフスタイルについて、自動車ライター・嶋田智之さんがお話を伺いました。 いつかこういう“かわいいクルマ”に乗りたいな、って思ったのが最初 2021年に行われた『500オーナーによる座談会』に参加してくださった織戸秀行さんと真梨子さんご夫妻。当時はその1年前に購入された『500 TwinAir』を溺愛していたご様子でしたが、2022年7月に『500C TwinAir Dolcevita(チンクエチェントシー ツインエア ドルチェヴィータ)』に乗り換えられたと聞きました。同じ『500』のハッチバックからオープンエアへ。赤いカラーから同じ赤いカラーへ。織戸さんご夫妻にどんな心境の変化があったのか、そもそもなぜ『500』なのか。お話を伺ってきました。 おふたりと『500』の物語は、どうやら真梨子さんがイタリアで暮らしていた頃に源流があるようです。 真梨子さん「大学を卒業してから1年間、イタリアに留学していたことがあるんです。イタリアが大好きで、実際に住んでみたくなってしまって。その頃に昔の『Nuova 500(ヌォーヴァ チンクエチェント)』とか四角い初代『Panda(パンダ)』が走っているのをまいにちのように見ていて、いつかこういうかわいいクルマに乗りたいな、って思ったのが最初でした。けれど帰国してから調べたら、当時は『Multipla(ムルティプラ)』しか売ってなくて、私が望んでいるのはもっと直球でかわいいフィアットだぞ、って(笑)。それからしばらくの間は忘れていたんですけど、何かのきっかけで思い出してまた調べてみたら、『出ているじゃない、かわいいクルマが!』と、気持ちが膨らんだ感じでした」 そのかわいいクルマとは、もちろん2008年に日本に上陸した現在の『500』の初期モデルです。 真梨子さん「でも、その頃の私はまだ独身の実家住まいで、いいな、とは思っていたんですけど、家にはクルマがあるし、自分でクルマを買うほどでもなかったんです。結婚してクルマを買ったりするときになったら欲しいな、いつかは乗りたいな、とは思っていたんですけれど」 ▲真梨子さん 一方、真梨子さんが就職した先で出会って結婚された秀行さんは、当初は『500』にあまり関心がなかったのだとか。 秀行さん「僕はその頃に乗っていた自分のクルマが気に入っていて、小さいクルマには興味がなかったんです。輸入車に乗るならもっと大きいクルマがいいな、って思っていました。だけど妻が『500』を好きだっていうのは知っていたので、一度見に行って試乗したら気がすむだろう、とショールームに行ったんですね。まさか後に自分が『500』に乗ることになるなんて思いもせず(笑)。そのときは『500 1.2pop(ポップ)』と『500 TwinAir(ツインエア)』の両方に試乗したんですけど、妻は『このエンジン音がいい、めっちゃいい、断然ツインエアでしょ!』と。そんなこと言うんだ、って軽く驚きました(笑)。本当に好きなんだな、って新鮮でしたね」 ▲秀行さん 真梨子さん「私はかなり欲しかったんですけど、主人が自分のクルマを好きだっていうことを知っていて。なので、試乗だけで今は買わないだろうなって思って、特に提案したりもしなかったんですけど……」 それから徐々に、秀行さんの気持ちの中に変化が生まれた模様です。 秀行さん「実はクルマを見に行ったときに、ハンドルが白かったり、インパネがボディと同色だったりっていう、インテリアのデザインの見事さに惹かれてはいたんです。それから自宅でパンフレットを眺めたり、インターネットでいろいろデータをチェックしていたんですよ。そうこうしているうちに、自分が乗っていたクルマのモデルチェンジがあったんですね。それが自分の好みだったら、もしかしたらそっちを選んでいたかもしれないんですけど、あまりタイプじゃなかったんです。だったらフィアットにしよう。せっかく妻も好きなクルマなんだし。と、それで気持ちが購入に傾きました」 そして2019年、織戸さんご夫妻は2度目の試乗に向かいます。 秀行さん「小さいクルマだし、エンジンのパワーもそう大きくないから、高速走行や加速力とかも気になっていたんです。それで高速道路も含めてしっかり試乗させてもらったら、想像していたよりもぜんぜん速いし、加速もいい。まったく問題ないな、これなら大丈夫だなって思って、ついに購入しました」 写真を撮りたくなるクルマ 納車になったのは2020年。『500 TwinAir』と暮らすようになってから、ご夫妻のライフスタイルに変化が訪れます。 ▲500オーナーによる座談会に参加された際の織戸さんご夫婦と『500』 秀行さん「前のクルマでは一度もなかったのに『500』に乗るようになってから、クルマの写真を撮るのが好きになったんです。SNSにも興味はなかったのに、Instagramもはじめたりして。みなさんがいろいろなところに行って撮った写真を投稿しているので、それを見て自分もその場所でクルマの写真を撮りたいって思って、本当にいろいろなところに写真を撮りに出掛けるようになりましたね。写真を撮りたくなるクルマなんですよ」 真梨子さん「主人がInstagramをはじめてすごく楽しそうだったので、私もはじめました。ふたり一緒に『500』に乗って行くので写真は同じ場所で撮るんですけど、違うカットを撮って投稿しています。前のクルマのときにはそんなに遠出をしなかったんですけど、『500』が写っている雰囲気のいい写真を見ると、『私たちも行ってみない?』みたいな感じで週末の旅行の予定をたてて行ってみたりとか。クルマに乗る機会というか、クルマで旅行することがすごく増えましたね。『500』がいろんな場所に連れてってくれるんです」 秀行さん「特に決めているわけじゃないんですけど、近場も含めると月に1〜2回は写真を撮りに出掛けていますね。もちろん出掛ける前にもふたりで下調べをしたり、よさそうな場所の写真を見つけて、『ここどう?』『採用!』なんて相談したり。行った先でも地図アプリを見ながら調べて、航空写真に切り換えてチェックして、いい写真が撮れそうな場所に印をつけて。行くからには、いろいろ撮ります(笑)。そういうのがすごく楽しいんですよね」 真梨子さん「写真を撮るために、4〜5時とか、ものすごく早起きして出掛けます。ライフスタイルが大きく変わりましたね。特に主人はスマホやスニーカーをクルマに合わせて赤にしたりとか、スマホのケースにマイアーニの包み紙からチョキチョキ切り出した『500』の姿を入れたりとか、もうビックリするくらい『500』の影響を受けています。ここまでハマるとは思ってなかったです(笑)」 ▲秀行さんが撮影されたお写真 秀行さん「人生、激変ですね(笑)。生活の中心といったら言い過ぎかもしれないけど、『500』がなければ今の生活が成り立たないようなところはあります。今では完全に趣味=『500』、です」 次のページ:【幸せを運んでくれるクルマ、家族みたいなクルマ】