fiat magazine ciao!
Vol016_pix01_ttl
LIFESTYLE

オーナー紹介〜FIAT 500に乗って、友達とジェラートが待つ八ヶ岳へ

文=友永文博 写真=太田隆生   きっかけは北海道行きの船の上 8月最後の週末、緑の高原の中、駐車場に停まった赤い500が遠くからでもよく映えます。「僕が塩原さんと初めて会ったのは、2台のバイクで妻と北海道へツーリングに向かう船上でした」。そう語るのが、先の500の持ち主・鈴木岳比古さん。同じテーブルに座る塩原幸彦さんも「僕も同様に友人とツーリングに出かけるところだったんです。30時間以上の船旅ではやることも少なく、自然と意気投合しました」と笑います。     場所を変えながら、30年を超えて続く交流 鈴木さんは塩原さんより10歳上。しかしそんな年齢差を感じさせないフラットなやり取りが印象的です。今では塩原さんの2人の娘さんも含めた家族ぐるみ、30年以上のお付き合いとか。その間、鈴木さん夫妻はずっと東京近郊住まい。一方、塩原さんは長野、上海、現在は青森県に単身赴任と仕事の関係で転居続き。この日、お2人が会っていたのは、塩原さんの幼馴染・横内洋祐さんが3年前に始めた八ヶ岳で人気のジェラート店『八ヶ岳Sereno』です。2組の家族は時に国を隔てても、行き来をずっと継続。今年会うのはGW以来の2度目、前回もこの場所だったと言います。     「目的があって予定を立てて、会っているわけじゃないんです。以前も奥様の石川の実家に帰る途中、高速道路のSAで落ち合ってお茶しただけ、ということも。この店ができて鈴木さんとも随分会いやすくなりました」と塩原さん。「スキーやキャンプにご一緒したり、諏訪の御柱祭りに参加させてもらったり、塩原さんは僕の遊びの先輩です。最近は、ジェラートを食べながらたわいない話を2、3時間して『じゃあ、また』って別れる場合がほとんどですね」と鈴木さん。「2次会はないのですか?」と尋ねると「ないですよ。また会えますから」。そしてこう続けます。「先々週も家内とここで数時間を過ごしました。好きなジェラートを食べるためだけに、わざわざ500を運転してやって来るのも楽しいもの。オーナーの横内さんからは『ずいぶん贅沢なジェラートですね』って笑われますが」。     音響メーカーのデザイナーだった鈴木さんは早めに会社をやめ、フリーでプロダクトデザインを手がけたり、多彩な趣味に力を注いだり。また乗り物はバイクから車へシフト。基本的に小回りの効く小型車を乗り継いできました。そして還暦を前にした6年前、ラッキーカラーの赤い車を探していて見つけたのが、この限定マジェンタカラーの500。即断で購入したそうです。以来、自分の仕事のわがままを快く許してくれた奥様・眞喜江さんと、好きなとき大切な人たちに会うために、なくてはならない相棒に。さらに、気分転換のためのもう一つのプライベートスペースでもあります。鈴木さん曰く「車中ではiPhoneにダウンロードしたジャズかビートルズの曲をよく聴いています。今は500のない生活は考えられないですね」。     『八ヶ岳Sereno』から小渕沢の『Wood note』へ しばらくすると『八ヶ岳Sereno』に鈴木さんの奥様の実弟、中川喜文さん夫妻が合流(なんと石川県の自宅からドライブ!)。大勢の笑い声が聞こえてきます。ただ鈴木さん夫妻には、もう1カ所、久しぶりに顔を出したい場所があるようです。塩原さんたちに別れを告げ、2人は小淵沢方面に向かいました。行き先は、友人の加藤成彦さん夫妻が営む家具工房とカフェを併設した『Wood note』。自作の素敵なウッドテラスに立って、加藤さんが鈴木さん夫妻をにこやかに迎えます。     東京で電機メーカーの広報・宣伝を長く担当された加藤さんは、前から決めていた通り55歳で早期リタイア。飛騨高山の木工の専門学校で2年間の寮生活を送りながら技術を取得。今はこの小淵沢へ居を移し、木工家具の注文製作を行っています。鈴木さんとは共通の複数の友人を通して知り合ったのだとか。「なぜか八ヶ岳周辺に友人が多く集まるんですよ」と鈴木さん。     昨年の正月に見舞われたハプニング 実は鈴木さんと加藤さんには、忘れられない出来事があります。それは昨年の正月2日。いつものように『八ヶ岳Sereno』を訪ねた帰途、ここ小淵沢で突然、鈴木さんが運転する500に不具合が。東京まで戻れるか不安だし、どこもクローズだしということで、急遽、加藤さんに電話。加藤さん宅までなんとか走らせて、修理業者が引き取りに来るまで預かってもらったのだそうです。 「息子さんたちも帰省しているご家庭に突如お邪魔して、おせち料理までご馳走に。正月のハプニングにも嫌な顔一つせず受け入れてくださった加藤さんに本当に感謝です」。そんな鈴木さんの話を、加藤さんがニコニコしながら聞いています。 ほどなくして、先ほど一緒だった鈴木さんの奥様の弟さん夫婦も到着。3家族の楽しい語らいが始まりました。     愛車のドアは3枚までがいい 気のおけない友人や好きな場所へと向かうため、距離など気にせず愛車を運転。ごく自然体でいながらも、そんな愛情あふれる、好奇心旺盛な日常を送る鈴木さん夫妻。塩原さん曰く「何をするわけではなく、一緒にいるのがとても心地いいんです。だから皆さん、お2人に会いたくなるんじゃないでしょうか」。 「実は500に乗る前に10年間、初めて4ドアの車に乗っていました。でもこの500に乗って、僕のクルマのドアはやっぱり3枚まで、“2ドアハッチ”がいいなあと改めて実感。そんな走る楽しみをもう一度、思い出させてくれたのがこの車なんです」と鈴木さん。隔たる距離を物ともしないタフな相棒、赤い500を伴ってのロングドライブはまだまだ続きそうです。       『八ヶ岳Sereno』 毎朝手作りされるジェラートは通常9種ほど。隣の堀内ファームの高原野菜や近隣の果樹園の果実などをふんだんに使用。その味わい深さとさっぱりした後味が評判に。今の季節は「ぶどう」「洋ナシ」「カボチャ」のほか、こだわりの低温殺菌牛乳を使用した自信作「搾りたて牛乳」などがオススメ。軽食・喫茶も可能。   SHOP DATA 店名 『八ヶ岳Sereno』 住所 長野県茅野市玉川11398-291 若葉台団地上エコーライン沿い 電話番号 0266-75-1013 営業時間 10:00〜17:00 定休日 火・水曜(1月〜4月中旬は土・日曜のみ営業、7月20日〜8月末は水曜のみ休) Webサイト https://www.facebook.com/yatsugatake.sereno/ […]

Vol020_pix01_ttl
LIFESTYLE

オーナー紹介〜娘が生まれて、僕のFIATが家族のFIATになりました

文=田代いたる 写真=太田隆生   500Xで友人のカフェを訪ねて 松本さんファミリーはサッカー好きのご主人・考史さんと、妻の明子さん、娘・多未ちゃんの3人家族。この日、ご家族の姿は自宅からクルマで15分ほどの『オクムサ・マルシェ』にありました。ここは食事や喫茶ができるほか、地元の食材や工芸品を扱う話題の店。実はマルシェのオーナー、浅見敦さんは10代の頃にフットサルチームで考史さんとボールを蹴り合った仲で、3年前のオープンの際にも、店づくりのDIYを一緒に手伝ったのだそう。2人は笑顔で語り合っています。 そして今年4月に考史さんが家族のために購入したクルマが500Xです。     乗り継いだ2台のフィアット 今年で40歳になる松本考史さんは根っからのFIAT好き。初めて出逢ったのは、20代のときで、当時を懐かしそうに振り返ります。 「プントでしたが、もうひと目惚れ。たまたま雑誌を見ていたらHGTアバルトが掲載されていまして。それで、カタログだけ見て、試乗もせずに購入してしまいました。25歳の頃です。気に入ったのはデザインと、それからスペック的な部分も。ユーザーの方のレビューを読んで、それでもう『これだ!』と思ってしまいました」。 2台のプントを乗り継いだ考史さん。やはりFIATが好きということで、次に選んだのはパンダでした。 「その頃はまだ独身で、ラフに車を乗り回したいという気持ちが強くありました。道具感覚で乗るにはパンダのようなクルマがいい。そう思ったんです。気に入って、結局、10年ぐらい乗っていました」。     結婚は3年前。知人の紹介で明子さんと出逢い、ほどなく家族になりました。「趣味が多彩で、経験も豊富だったところに惹かれた」という明子さんに、「しっかりしていて自分に必要な存在と、なんとなく初めから感じていた」という考史さん。そんなおふたりの間で可愛らしく座る娘さんが多未ちゃん。今年9月に2歳になったばかりです。     家族が増えてクルマを乗り換えることに 「多未が生まれて、もっと広いクルマにすべきだと思うようになりました。いろいろ見て回る中で、やっぱり好きでしたから、フィアットが見に行きたくなって、おそるおそる『どうかなぁ』とディーラーへ行くことを妻に相談したら、すんなりOKを出してくれた(笑)」。 ディーラーは10年前にパンダを買ったとき以来の訪問でしたが、当時の営業担当が店長になってまだ在籍しており、さらにはメカニック主任も同じ人。「当時、サッカーの話をよくしていたからですかね」。2人とも、考史さんのことを覚えていてくれたそう。そのときに試乗したクルマが500Xでした。「10年前のクルマと比較したから余計にだと思うのですが、パンダとまた違うインテリアの質感にまず驚きました。走ってみるとFIATらしいエンジンのトルク感も感じられて、『いいクルマだなぁ』と。妻も、良さを認めてくれました」と笑顔で語る考史さん。明子さんも微笑みながら言います。 「私自身はクルマの知識が全くないのですが、主人のこれまでの愛(笑)というか、熱い思いはよく知っていましたから」。     最近では、明子さんも時々、500Xを運転する機会があるそう。 「安定性をすごく感じます。運転しやすい気がする」。考史さんも「そう、確かに」と応えます。「最初は3ナンバーですし、全幅も広く、見た目でも大きいと思っていたのですが、乗ってみると小さく感じるというか、取り回しの良さを、私も実感しました。大きいけれど、パンダに乗っているときと、それほど変わらない感覚で運転できる。先日、軽井沢に3人で行ったのですが、山道でも走りやすさを実感しました。ターボのパワーに余裕を感じましたし、長時間、座っていても少しも疲れなかった。やっぱりシートがいいんです」。     たくさんの経験があれば、人生の幅もグッと広がる 軽井沢を目指した理由は、『おもちゃ王国』があったから。体を動かすことが大好きで、テレビに出てくるキッズキャラクターもお気に入りの多未ちゃんに喜んでもらおうと家族で向かいました。「楽しかったよね?」と愛娘に問い掛ける明子さん。多未ちゃんもお母さんの優しい声に、穏やかな表情で応えます。すると真顔になって考史さん。 「個人的な意見ですが、幼いうちから、他人と違うものに触れさせるって意外と大事だと思うんです。いい経験になる」。そうして育まれるのは感性。多未ちゃんの将来にきっと、物を言うはずです。 「他人と同じである必要は全くないということですよね。たくさんの経験があれば、人生の幅はグッと広がる。そこは大切に育てていきたい」。 「こだわりある主人のお陰で、私の世界も広がりました」。今度は明子さんが真顔になりました。   相棒500Xと共に迎える、新たな命 愛娘の将来を見据えつつも、ハッピーな日々を送る松本さん一家。明子さん、実は現在、妊娠7カ月とのこと。「予定は12月です」と考史さんが言えば、「多分、男の子」と明子さん。 「出かけるところもきっと変わってきますよ。男の子ならキャンプは連れていきたいですし、サッカーも一緒にやりたい。多未は今も気が向けばボールを蹴ってくれて、それはそれで嬉しいんですけど(笑)」。 そう言って多未ちゃんの頭を優しく撫でる考史さん。500Xとともに暮らす、松本ファミリーの夢は広がる一方のようです。 『オクムサ・マルシェ』 店のコンセプトは「小さな道の駅」。都内でグラフィックデザイナーをしていた浅見さんが、東京出身の奥様と一緒に地元に戻り、実家の農機具倉庫を改造して2014年オープン。1階がテーブル席と食材の販売、2階が工芸品ギャラリーとフリースペース。30年以上蕎麦屋を営んだお祖父様直伝の蕎麦料理や、地元の有機農家の食材を使った薬膳料理が評判。   SHOP DATA 店名 『オクムサ・マルシェ』 住所 埼玉県入間郡越生町小杉756 電話番号 080-9973-5457 営業時間 11:00〜17:00 定休日 水〜金曜   […]

Vol019_pix01_ttl
LIFESTYLE

オーナー紹介〜「ルパン三世」作画監督が語る、相棒FIAT 500との秘密

文=髙橋 勝也 取材協力=叶 精二   アニメーター、そして作画監督として、長きにわたり日本のアニメーション界をけん引している大塚康生さん。 数え切れないほど手がけた作品の中でも、特に有名な作品のひとつが「ルパン三世」。 大塚さんが作画監督として手がけた映画「ルパン三世 カリオストロの城」で500が大活躍するシーンは、フィアットファンにとって特別な場面といえるでしょう。 自身もフィアットファンである大塚さんに、かつての愛車Nuova 500との思い出のカーライフを語っていただきました。   初めての500は、日本第1号車 アニメーション業界やファンの間で、無類のクルマ好きとして知られる大塚康生さん。そんな大塚さんが初めてフィアットオーナーになったのは、55年以上前のこと。 「若い頃、某国産車に乗っていました。ある時、馴染みのセールスマンから『今度、フィアット 500を取り扱うことになったんです』と聞き、実車を見る前に予約しました(笑)。購入の決め手は、デザインのかわいさとルーフがオープンになること。あと、大好きなリアエンジンだったことですね」。そして、大塚さんから驚きの発言が。「そのセールスマンが言うには、僕が初めて乗った500は日本輸入第1号車。つまり、僕が日本初の500オーナーみたいなんです」。 「いままでに乗ったクルマの中で、500が一番楽しかった!」と語る大塚さん。ホワイト、クリーム色、水色と3台乗り継ぐほど、500の魅力にのめり込んだそうです。     500といっしょに、日本各地をドライブ 「500とは、本当にたくさん遊びましたね」と笑顔で語る大塚さん。 日本各地を500で旅したことは、いまでも忘れられない楽しい思い出で、なかでも一番印象に残っているのは、九州へ行ったことだとか。「当時は、まだ高速道路も完備されていなかったので、東京の自宅から九州まで、ずっと下道でドライブしました。毛布を1枚載せて、車中泊をしながら何日もかけて旅行をしたことは、いまでもいい思い出です」。 そんな楽しい旅の中、フィアットオーナーならではのハートフルな出逢いもあったよう。「行く先々での、人との出逢いも楽しかったですね。その頃、日本にほとんど500が走っていなかったこともあって、声をかけてくる人が多かったですね。すぐに、意気投合したりして。ヒッチハイカーの高校生を乗せて、ドライブしたこともありましたよ」。 人と人との出逢いを生む。そんなフィアットの個性は、いまも昔も変わらないようです。         作品に描く、クルマ選びのポイント 仕事場まで、愛車の500で通っていた大塚さん。名作『ルパン三世 カリオストロの城』に登場する500は、常に愛車がそばにある環境の中で描かれたそうです。 「スタジオの窓から見えるところに500を停めていたこともあって、スタッフみんなで僕の愛車を見ながらスケッチをしていましたね。当時、僕の500は薄い水色だったんです。ルパン三世の500を黄色にしたのは・・・思いつきですかね(笑)」。日本のアニメーションにおいて、自動車の個性やモデルの特徴を初めて描き分けた草分け的な作品と言われている「ルパン三世」。 細部までこだわって、クルマを描いてきた大塚さんに、車種の選び方のポイントについて聞いてみました。「大切なのは、シンプルな形で描きやすいこと。そして、特徴的でキャッチーなことです。そういった意味でも個性的な500は、作品に描くのにピッタリでした」。 ときにスピーディーに、ときにコミカルに。まるで生き物のように走り回るアニメーションの中の500には、500の陽気な個性と大塚さんの楽しい経験が、たっぷりと活かされているのでしょう。         アニメーションの制作においても、そしてプライベートにおいても、大塚さんにとって欠かせない存在となった500。 インタビュー当日は、奇しくもフィアットの創立記念日である7月11日。しかも、その日は大塚さんの86歳の誕生日でした。そんな記念の日に、いまも愛してやまない500との思い出をにこやかに語る大塚さんの瞳は、まるで少年のようにキラキラと輝いていました。           大塚 康生 Yasuo Ohtsuka 1931年生まれ。アニメーター・作画監督。日本初のカラー長編アニメーション映画『白蛇伝』で動画・原画、『太陽の王子 ホルスの大冒険』(1968年)で作画監督を務めた。『ムーミン』『ルパン三世』映画 『ルパン三世 カリオストロの城』『未来少年コナン』『じゃりン子チエ』などで作画監督を歴任。 50 年以上にわたり制作スタジオや専門学校で後進の指導を担い、高畑勲氏、宮崎駿氏を筆頭に幾多の人材を育成した。おもな著書に『作画汗まみれ』(徳間書店、文春文庫)、『大塚康生の機関車少年だったころ』(クラッセ)、『王と鳥 スタジオジブリの原点』(大月書店、高畑勲氏・叶精二氏らと共著)ほか。 自動車をこよなく愛しており、これまでに3台の『500』を所有。ルパン三世での500の活躍は、自身の体験に基づくところも多い。その他、フィアット車では『850』のオーナーとなったこともある。 […]

Vol018_pix01_ttl
LIFESTYLE

湘南ライフに寄り添うFIATの魅力を再発見!

文=友永文博 写真=加瀬健太郎   「湘南Fes」X FIATのコラボレーションが実現 車好きが『T-SITE』に集まって自慢の愛車を披露したり、親交を深めたり、といったユニークなイベントが「モーニングクルーズ」。その第41回目、湘南の魅力を発信する新たな試み「湘南Fes」の一環でもある今回はFIATが協賛。「イタリアの小さなクルマ」をテーマに8月6日に『湘南T-SITE』で実施されました。イベント当日は早朝からFIATその他の、新旧多彩なクルマが続々集合。そのラインアップは最新モデルから、ファンが見惚れるほどの貴重なヴィンテージカーまで! やはり湘南開催ならではの、こだわりあふれるユニークな車が多い印象。集まった方々は、気の合う仲間を見つけて車談義を楽しんだり、憧れの車に見入ったり、思い思い自由にイベントを楽しんでいました。     「モーニングクルーズ」には“イタリアの小さな名車”が大集合! そして会場内でもひと際目を引いた一台が、クリームイエローのボディに赤いレザーシートの71年式の500。奥様と2人で訪れていたオーナーの鈴木明さんはカジュアルな休日の装いながら、センスを感じさせる素敵なスタイル。またグラマラスなオープンのバルケッタで参加した山崎雄さんは500、ABARTH、ABARTHと乗り継いできた生粋のFIATファン。そんなモーターライフを満喫している大勢の方々が集まった会場は、とてもハッピーで和やかな雰囲気に!               500の最新モデルを体感できる試乗会も併催 輝かしい伝統を次世代に引き継ぎつつ、絶妙なアップデートを果たしてきたFIAT 500。来場された多くの人に、その最新モデルも気軽に体験していただきたいと、当日は車両展示と一緒に試乗会も実施。500と500Xの2台を揃え、スタッフが同乗して細やかな説明も受けられるとあって、一組20分間隔の予約枠は数時間先まで絶えず満杯に。目立ったのは、小さな子ども連れのファミリーの皆さん。同じ500をご主人と奥様と別々に、それぞれじっくり乗り心地を確かめたり、奥様が積極的に500と500Xの2台のハンドルを握ったりと、女性ドライバーからの関心も高いよう。それぞれ快晴下、気持のちいい湘南ドライブを楽しんでいました。そして充実した試乗を満喫した後は、書店ほか施設内の個性派ショップを巡ったり、ブック&カフェでお茶をしたり、アンケートに答えた方に進呈されるランチプレート券を利用して昼食をとったり……リラックスした湘南のウィークエンドを誰もが満喫。           トータルに魅せる、FIATのある湘南ライフ 今回は実車を使ったイベントのほかにも、FIATと湘南で暮らすことで、より楽しい毎日が送れることを想像していただきたいと、本があふれるスタイリッシュな館内3カ所で、FIATのスペシャルコーナーを設置。「湘南アクティブライフ」「湘南NEW STYLE」「湘南スローライフ」の3つのスタイル別に、それぞれオリジナルポスターとその日常の一コマを表現したジオラマのほか、関連するFIATオフィシャルグッズや書籍を集めてトータルに展開。FIATを相棒とした、湘南にぴったりの憧れのライフスタイルを身近に感じられる仕掛けも。 もちろん車両展示スペースに関しても地元の造園会社、湘南グリーンサービスに特別に依頼。自然と車が共存する、ピースフルなムードがいっぱいのモダンなガーデンガレージを提案いただきました。           『湘南T-SITE』の多彩なコンテンツを存分に生かしながら、FIATのある魅力的な湘南ライフを間近に感じることができた今回のイベント。さまざまな地域の魅力とFIATと共に暮らす楽しみ——それを皆さんの近くでも、提案できる機会をこれから作っていきたい、と思っています。 […]

Vol022_pix01_ttl
LIFESTYLE

オーナー紹介〜詩人・谷川俊太郎さんが語る「クルマへの愛」

文=和田紀子 写真=加瀬健太郎   フィアット500のために書き下ろした詩 500の10年目の誕生日を祝って、500のオーナーでもある谷川俊太郎さんから、なんとオリジナルの詩のプレゼントが! それが以下に掲載させていただいたもの。人間と同じように感情を持った500と家族との物語が目に浮かぶようで、本当に素敵ですね。そこで本日は、谷川さんと車のこと、あれこれもう少し伺いたくて、杉並にあるご自宅を訪問しました。     谷川さんの車ヒストリー 幼稚園の頃から車が好きで、自分の車を持つのが夢だったという谷川俊太郎さん。 「一番最初に買った車がシトロエンの2CV。その後、モーリスのオックスフォードのワゴン、モーリス1100とイギリス車を乗り継いで、そろそろ気分を変えてイタリア車に乗ってみようかと購入したのが、フィアット1100でした。中古で、確か薄いブルーみたいな色だったかな。それが1960年代の東京オリンピック前後くらい」   ——フィアットのどんなところが気に入ったのでしょうか? 「全体にアルミっぽくて軽かったの。あとはキビキビした走りの感じがすごくよくて、それが僕の中でのイタリア車の印象になっているんです。なんだか温かくて人間味があって、イタリアの国の感じがイタリア車には出ていますよね」     そして再びフィアットへ その後は「僕、浮気症だから」と国産車をはじめ、さまざまな車を乗り継いで、再びフィアットに戻ってきたのが90年代。 「Puntoのカブリオレでした。当時はまだトップが電動で開くタイプが珍しかったんです。その後、もう2台Puntoに乗って、2台目はオートマティックのミッションがすごく良くて気に入っていたんですが、だんだん年を取ってくると、車は小さいほうが楽だっていうので、5~6年前に今の500に買い替えました。“ワカモレ”という名前で売り出された限定車で150台しかなくて。僕、アボカドが好きなもんだから、そういうのもあって、なんとなく買っちゃったんです」   ——乗り心地はいかがですか? 「オートマなんだけどシングルクラッチだから自分で操作している感じがあって、それがけっこう気持ちがいいのね。あとは水を冷やすファンが付いていないのかな? っていうくらい静かで、おとなしいのもすごく気に入っているところです」     車って自由。だから新しい発見がある 現在は、都内での移動はもっぱら地下鉄で、車に乗るのは、北軽井沢にある山の家に行くときくらいだそう。約160㎞の道のりを、休憩を一回挟んで約2時間かけて運転していきます。   ——谷川さんにとっての車とは、そうした「目的地への移動」や「移動手段」以外に、どんな意味があるのでしょうか? 「まず基本的には『個人の移動の自由』というのがありますね。鉄道やバスといった公共の交通手段は、他人といっしょくたで、時間も決まってしまっています。でも車なら、思い立ったらいつでもどこへでも出かけられる。しかも、韓国の釜山と九州の間にフェリーがあれば、ヨーロッパまで車で行けるかもしれない……。そして、車が走っていくというのは、風景をパーンしているわけです。スピードに合わせて、風景がどんどん切り変わっていくのがすごく気持ちがいい。それが僕の書く詩にも影響しているんじゃないかと思います。風景が流れていったり、突如として違う風景が現れたりする。そういう経験は歩いていてはできない、車ならではのものだと思いますね。そんなふうに流れていく風景の中で音楽を聴くと、部屋の中で座って音楽を聴くのとでは、まったく違ったものに聴こえます。音楽を聴く場所としての車というのが僕は好きなんですね。聴くのはもっぱらクラシック。カーステレオがなかった時代から、ポータブルのラジオをぶら下げて、運転しながら音楽を聴いていました」     ——車の中を自分の部屋のようにカスタマイズしたりするのでしょうか? 「そういう趣味は全然ないですね。ただ、以前アメリカに朗読旅行に行ったとき、僕の詩の翻訳者であるアメリカ人の車に乗せてもらったら、それがワーゲンのワゴンで、なんと掘り炬燵がついていたんです。そこでみんなで喋ったり、ご飯を食べたり。それはすごく楽しかったんだけど、僕にとって車というのは、できるだけシンプルで機能本位なものであってほしい。だからフィアットが好きなんです。スピードも正直どうでもよくて、デザインのほうに惹かれます。それも、メカとしてよりも、パッケージとしてのデザイン。そういう意味では、実は今、一番興味があるのが軽自動車なんです。ギリギリの空間をいかに有効活用するか、非常によく考えられている。ああいうミニマルな世界というのはすごく日本に合っていると思います」   ——500の空間についてはどうですか? 「ちょうどいいですね。若い頃は大荷物で移動することもあったけど、今はどんどん物を少なくしていきたい。断捨離です。なので、あのくらいで全然満足。今の自分の年齢と暮らしにすごくフィットしていると思います。年を取ると欲がなくなります。もういい車を欲しいとも思わない。今は死ぬまで500に乗ろうみたいな感じです。こちらから免許を返納するつもりは全然ありませんから(笑)」       Shuntaro Tanikawa 1931年東京生まれ。詩人。1952年第1詩集『二十億光年の孤独』を刊行。1962年「月火水木金土日の歌」で第4回日本レコード大賞作詞賞、1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第34回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第1回萩原朔太郎賞、2010年『トロムソコラージュ』で第1回鮎川信夫賞など、受賞・著書多数。「Punto」をはじめフィアット車を長く乗り継ぐ。現在の愛車はアボカドグリーンがさわやかな「500 ワカモレ」。 […]

Vol024_pix01_ttl
LIFESTYLE

オーナー紹介〜「500Xが来たことで、生活の楽しみが広がりました」

2016年2月から3月にかけて実施された「LOVE&BITE」キャンペーンで、見事「500X Cross Plus」を当選した岸本さん。「500X」のオーナーになってライフスタイルがどう変化したか、うかがいました。   岸本さんにとって、フィアットとの出逢いは子供の頃に見たアニメ『ルパン三世』に遡ります。劇中に登場していたチンクエチェントの姿が印象に残り、フィアットに対して、「小さいけど走りがいい。そんなイメージを持ちました」と話してくれました。それから長い月日が経ち、自らが「500X Cross Plus」のオーナーになったのでした。     幼い頃からクルマやバイクが好きで、運転免許証を取得してからは自分でメンテナンスしたり、クルマの見栄えにこだわったりと、クルマの趣味的な側面を大切にしている岸本さん。「500X」に対しては、どのような印象を持たれたのでしょうか? 「思った以上によく走るクルマだと感じました。街中はもちろん、足回りがしっかりしているので山道の走行も楽しむことができます」。     「あと、ダイヤルひとつで走行モードを簡単に切り替えられる“ドライブムードセレクター”によって、異なる運転感覚を楽しめるのが気に入っています。ノーマルモードでも十分によく走るし、スポーツモードではより機敏な走りを楽しめます」。     「デザインは、『500』のデザインモチーフを守りながら、しっかりとSUVの雰囲気が出ているなと。全体的によくできたスタイルだと思います。なかでもフロントまわりがお気に入りです」とのこと。「500X」に乗るようになってから、走行中に周囲の視線を感じることが増えたそうです。     「あと、ドライバーにとってインテリアは満足度を左右する大事なポイントだと思いますが、『500X Cross Plus』のレザー内装は柔らかく上質感があっていいですね。子供が汚してしまわないか心配になってしまうほどです(笑)。細かなところではドリンクホルダーにイルミネーションが採用されていて、夜間でも直感的に使いやすいところが乗り手への気遣いを感じられて気に入っています」。     岸本さんは、週末はご家族や友人など大勢でバーベキューに出掛けることもあるとのこと。そんな時はラゲッジルームにコンロや食材などを満載にして目的地に向かうそうですが、そうした場面で「500X」は、実用性の高さもさることながら、移動中の運転を楽しむことができるのがいいと話してくれました。 「『500X』には、実用的なだけでなく趣味的な要素も備えているので、乗ると気分が爽快になります。清涼剤のような感覚がありますね」。 「おかげでこのクルマに乗り替えてからドライブする機会が増えました」と笑いながら話してくれた岸本さん。「500X」でアクティブなカーライフを満喫されている様子が伝わってきました。   […]

Vol023_pix01_ttl
LIFESTYLE

オーナー紹介〜藤トモ的「FIAT 500」のお気に入りポイント

「500(チンクエチェント)」に乗っていると、周りの人からオーナーとしての感想を聞かれることがよくあります。そこで今回は、わたくし藤トモが「500」を所有して満足している点を紹介したいと思います。 取り回しのしやすさや狭い道路での走りやすさなどで人気を集めているコンパクトカー。かくいう私も、コンパクトカーを所有しています。8年前にひと目惚れして購入した「FIAT 500」です。このクルマに乗っていると、知人から「イタリア車ってどうなの?」とか「国産のコンパクトカーと比べてどう?」「やっぱり軽自動車とは違う?」などと聞かれることがあります。そこで今回はそれらを踏まえた個人的な意見として、私が「500」の気に入っている点を紹介したいと思います。     さて、改めて「500」と国産コンパクトカー(軽自動車も含め)の違いを考えてみると、違いは色々ありますが、意外と近い部分も少なくありません。なんといっても日本はコンパクトカー大国。なかでも軽乗用車は、国内乗用車販売の約4割弱を占めるほど。その競争の激しさもあって、低燃費を追求したり、装備や小物入れを充実させたりと、日常の使い勝手を徹底的に磨き込んだ日本ならではのきめ細かな配慮が行き届いているものが多いです。そこに魅力を感じる人は多いと思います。     そこで試しに「500」と軽乗用車でボディサイズを比べてみましょう。まず「500」は全長3.57m×全幅1.625m×全高1.515m。軽乗用車は、規格で定められた最大寸法は全長3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2m以下で、全長と全幅は規格の上限ぎりぎりで作られているものが多いです。つまり「500」は、それに比べて17cm長く、幅は15cmほど大きいことになります。それほど大きな差ではないので、取り回しに不満が出ることはないと思います。     次に燃費。生活に直結しますのでクルマを選ぶ上では大切な要素ですね。私も「500」を購入するときに経済性は気に掛けました。現在販売されている「500」のエンジンは1.2リッターと875ccターボエンジンの2タイプで、前者の燃費は19.4km/L、後者は24.0km/L(JC08モード)です。参考までに軽は、いま日本でもっとも売れているモデルで21km/Lから26km/Lほど。ここは両者ともに優秀といえますね。 「500」には、信号待ちで無駄な燃料消費を抑える「START&STOPシステム」が全車に、エコ走行を促す「ECOスイッチ」が875ccターボエンジン車に備わっています。個人的な印象としては、「500」は走りに余裕があることと、実用燃費に加え、長距離移動時の燃費がいいことに満足しています。     では私にとっての「500」のお気に入りポイントを紹介しましょう。速度域の高い高速道路やカントリーロードを走ることも想定して鍛えられた「500」は、カーブや高速道路の車線変更などでも不安定になりにくく、安心感が得られます。この操縦安定性に優れた走りが運転の喜びを与えてくれること。それに、がんばり過ぎないキャラクターというか身の丈感に愛着が湧いてきて、いつの間にか虜にされてしまうのです。     愛嬌満点のキャラクターは周囲からの評判もいいですし、ほんわかした雰囲気のおかげか、乗っている私までフレンドリーに見られることがあるのもうれしいポイント。そうそう、「500」はフレンドリーなオーナーさんが多いので、お友達も随分増えました。また、クルマにあわせて身に付ける服までお洒落にキメたくなってしまうところもあります。そういうことも含めてクルマがオーナーに与えてくれる影響は絶大。私自身もこのクルマを所有して、そうした変化を前向きに楽しむようにしています。     クルマは移動手段として日常を支えるものですが、そうしたなかでも「500」は単なる「便利な乗り物」の域を超え、オーナーに満足感や心の変化を与えてくれるものです。クルマを所有して変わる自分自身。この部分を楽しめるのが「500」の大きな魅力だと感じています。     文 藤島知子 写真 荒川正幸 […]

LIFESTYLE

おいしいイタリア〜自宅で手軽にナポリ式カッフェ「クックマ」

大好評・バリスタ中川直也さんとのバール連載、4回目は自宅で飲める本格派カッフェを伝授していただきます。ドリップコーヒーとはまた違う濃厚な味わいのカッフェ・ナポレターノ。簡単なのにとてもおいしくできるので、思わずほしくなっちゃいます!       バールをこよなく愛し、なじみの店に何度も足を運ぶのがイタリア人の日常ですが、もちろん自宅でもカッフェを楽しみます。各家庭に直火式のマキネッタが必ずあり、しかも「家族2〜3人用」「家族で大量に飲む大人数用」「来客用」など大きさ違いで数個あるのが普通だといいますから、コーヒーがいかに暮らしに溶け込んでいるかがよくわかります。 マキネッタは以前こちらの記事でもご紹介しましたが、今回登場するのは、イタリアの中でもとくにコーヒーに強いこだわりを持つナポリ人が愛用する昔ながらの器具、クックマです。     「イタリア全土で近代的なモカ・マキネッタが使われているのに対し、ナポリ人だけは昔ながらのクックマを愛用しています。一日にバールや家で7〜8杯のコーヒーを飲むナポリ人ですが、その半分以上は自宅で飲むわけですから、クックマの使い方やレシピにもかなりのこだわりがあります。親から伝わる一子相伝的なものでもあるので、誰もが“うちのコーヒーが一番!”と思っていますね」と中川さん。     ナポリ人も納得のクックマは今から約170年前、19世紀前半に発明されたといいます。「サイフォンと同時期に誕生した器具です。20世紀になりイタリアでエスプレッソが発明されるまでの数十年で、フィルターコーヒーよりもより抽出効率が高い方法が発明されてきましたが、ナポリ人は古き良きものを大切にしますから、そういった面でもクックマを愛し、その器具を今でも使っている自分たちに誇りを持っているのだと思います。ナポリの文化を守り続けているんだ、という自負を感じます」 ではさっそく、クックマを使ってナポリ式カッフェを淹れてみましょう。     まずは内側の容器(穴あきのもの)に粉を入れます。今回は3杯用のクックマなので規定量は15〜17g。「18gぐらい使うとシロップのようなとろみ感が出て、ナポリ人が家庭で味わうようなカッフェ・ナポレターノになります。15gだといわゆるレギュラーコーヒーより少し濃い目かな、という感じ。お好みですが、まずはナポリ風を味わってみて」     容器の脇を軽く10回ほど叩いて、粉を均一にならします。指でぎゅっと押し込むと抽出しづらくなり、濃く出すぎたり苦味ばかりが強調されたりするので、軽くならす程度でOK。「もしご自身で豆を挽く場合は、グラインダーの粗さ表示を細かい設定にしてください。確実なのはイタリアの粉パックを使うこと。クックマやモカ・マキネッタに合うようになっていますから。イタリアではそもそもドリップコーヒーを飲みませんから豆を自分で挽く人もいないのです」     均一にならしたら、フタを閉めます。フチの部分に粉がくっついているとフタがきちんと閉まらず、うまく抽出できなくなるので、その部分についた粉は指できれいにはらってから閉めましょう。     注ぎ口がないほうの容器に熱湯を注ぎます。内側にラインがあるのでそれを越えないように。「温度は90〜95℃くらい。熱湯だと苦味や酸味が際立ってしまいますが、少し冷ますと脂質や糖質が溶けつつも、高温による苦味・酸味成分が出すぎないため、バランスのいいイタリア人好みの味に抽出できます。沸かした湯を冷たい容器に注げばちょうど適温になりますね」     先ほどのお湯の中にコーヒー粉を入れた容器を入れ(写真左)、残りの容器(注ぎ口の付いたもの)をすぐにはめます。 持ち手を持ってすっと上下をひっくり返し、その上にフタをのせたら、あとは5分ほど待つだけ。     ところで、最後にのせたフタは単なる飾りなのでしょうか? 「その通り。上容器のお尻の部分を隠してエレガンテに、カップに注ぐときもエレガンテに、という役割です」・・・エレガンテ! なるほどそれもイタリアらしいですね。 抽出が終わったら、濃さが均一になるよう容器の中で軽くまわします。香りを逃がさないよう上容器を付けたままカップに注ぎましょう。     おいしいカッフェ・ナポレターノのできあがり。簡単なのにとてもおいしいです! このコーヒー2杯分に、65℃程度に温めたホットミルクを加えれば、コクと優しさのあるカッフェ・ラッテも簡単に作れます。バニラやチョコのアイスと合わせれば、食後や夏のデザートにぴったりのアッフォガートに。 「夏にぴったりといえば・・・」と、中川さんが手早く作ってくださったもう一品は、淹れたてのコーヒーで作るカッフェ コン ギアッチ。「コーヒー withアイス、つまりアイスコーヒーです(笑)。氷さえあればいいので、僕も夏場はよく作ります。甘味も加えずにこのまま味わってみてください」     ワイングラスに氷を6〜7分目まで入れておき、できたてのカッフェ・ナポレターノを注ぐだけ。「できたてを急冷させるので甘味も酸もきれいな状態のまま。香り、味ともにぎゅっと閉じこもるんです。じんわり冷ますとおいしくないんですよね」 注いだら、グラスをまわすかマドラーでステアすれば完成。     「たとえばコンビニで買うアイスコーヒーは、苦味ばかりが立って甘味が少ない。コーヒーの旨味である糖質や油分がちゃんと溶け出していないから薄っぺらい味にしかならないんです。カッフェ・ナポレターノで作ったら、ひと味違うでしょう?」ひと味どころか・・・これ、本当においしいです! ワイングラスで飲むことで香りがさらに際立つし、夏のひとときを優雅に演出してくれる効果も。 自宅で簡単に作れるカッフェ・ナポレターノ。この道具があるのとないのとでは、暮らしの質が変わってしまうはず・・・そう思えてしまうコーヒー器具でした。次回は、カッフェ・ナポレターノで作るカクテルレシピをご紹介。クックマがますますほしくなっちゃうこと請け合いです。どうぞお楽しみに!   ***   フィアット松濤 ショールーム内のFIAT CAFFÉでも、クックマで淹れた「カフェナポレターノ」が飲めます。お気軽にどうぞ。 […]

LIFESTYLE

おいしいイタリア〜エスプレッソをもっと楽しむ。「イタリアエスプレッソデー」

イタリアのバール文化を紐解き、楽しみ方をお伝えする中川直也さんとの新連載。2回目は、イタリア人が一日に何度も飲むエスプレッソ。本場の味とは? そして正しい飲み方とは? 知っているようで知らない本物のエスプレッソ、その魅力をお伝えします。       エスプレッソの歴史を知ろう! 日本でもすっかりおなじみになったエスプレッソ。カプチーノやカフェモカなども含めれば、日々多くの方が味わっていることでしょう。とはいえ日本でエスプレッソドリンクが広まったきっかけは、チェーン展開されるアメリカ・シアトル系のコーヒーショップ。つまり、イタリア発祥である「本物のエスプレッソ」がみなさんに広く知られるのはまだこれからといえるかもしれません。 エスプレッソが誕生するひとつの転機となった舞台は、1800年代のイタリア。当時ナポレオンが発した大陸封鎖令によりフランス植民地で砂糖やコーヒー豆が極端に不足していました。すでにカフェ文化が台頭していたイタリアでは閉店を余儀なくされる店も現れたとか。そんな中、スタンダールやゲーテも立ち寄ったという1760年創業の「アンティコ・カフェ・グレコ」の3代目オーナーが、カップを小さくし豆の量を減らして価格も下げるという苦肉の策で試練に立ち向かいます。 結局、小さめのカップ(=デミタスカップ)で飲むスタイルは多くの客に受け入れられ、フランス領全土にこの流れが広がっていきました。その後、19世紀前半から中頃にかけては、より抽出効果の高い新しい方法として、サイフォン、フレンチプレス、ナポリ式クックマが登場。20世紀のエスプレッソ抽出へと、道は続いていったのです。 そして1901年、高圧力で濃厚なコーヒーを淹れる方法としてルイジ・ベッツェラが新しいタイプのマシンを開発、その特許を買い取ったデジデリオ・パヴォーニが1906年4月のミラノ万博に出品し、世界で初めて「Caffè Espresso」と表記したのが現在のエスプレッソの直接の起源といわれています。     世界初の「Caffè Espresso」が登場した1906年4月〜のミラノ万博を記念して、国際カフェテイスティング協会(IIAC)イタリア本部では毎年4月16日付近の週末を「イタリアエスプレッソデー」と制定(日本では、1906年のミラノ万博一般公開日にあたる4月16日を毎年「イタリアエスプレッソデー」としています)。     「長い歴史を持つコーヒー文化の中では、エスプレッソは比較的新しい飲み方です。イタリアのエスプレッソは豆の量から抽出の温度、圧力等々、細かな規定がありますが、それが決まったのもほんの20年ほど前。はやりすたりはイタリアにもありますし、おいしいカッフェの1つとして発展してきた中でスタイルとしての変化もあったでしょう。そんな中、イタリアは昔から培われた経験をもとに完成された味わいを守ろうとしています。実際に飲んでみて「これはイタリアンエスプレッソの定義に当てはまるキャラクターだ。適切な焙煎、ブレンド、抽出により、奥行きのある香りや味わい、余韻が感じられる」などと思える理想的な方向性を目指して、マシンも豆も、もちろん淹れ方も吟味されているのです」   そうして規定された「イタリアンエスプレッソの定義」がこちらです。 ・ コーヒー粉の量 7g±0.5g ・ 抽出圧力 9気圧±1気圧 ・ 抽出時間 25秒±5秒 ・ 抽出されたカフェの量 25ml±2.5ml ・ 抽出されたカップ内の温度 67℃±3℃ ・ 5種類以上をブレンドした豆で抽出     バリスタの実力を世界大会でジャッジし、後進を育てる立場でもある中川さん、「日本のバリスタはマジメで一所懸命な反面、仕事の途中で手が止まって、連動した作業ができていないなと感じることがしばしばあります。バリスタにとってカウンターはステージ。常に流れるような動きで作業することが大切です」と語ります。その言葉通り、抽出を待つ間にほかの作業をしたり食器を整えたりして、決して流れを止めません。もちろんお客さんのほうに向くときはいつも笑顔でした。   正しいイタリアンエスプレッソとは 各国でエスプレッソが飲まれるようになった今、原点回帰の必要性、つまり「これが正しいイタリアンエスプレッソだ」という定義を改めて認識する必要がでてきたといえるのかもしれません。「それはお客様だけでなくバリスタのためでもあります」と中川さん。「コーヒーは生活の流れの一部ですが、あくまでも流れであって、特別なワンシーンというわけではないと思います。おいしいコーヒーが当たり前に飲める。日常的な流れの中で、コーヒーを通じて快適な時間が過ごせる。そのためにバリスタにできること、すべきことはいろいろあるはずです」 本物のイタリアンエスプレッソとは何か? 日本人にとってはその基本的な問いにすら、正しく答えることは難しいのが現状です。でも、それは行きつけのバールで毎日何杯もエスプレッソを飲むイタリア人だって、同じなのかもしれません。彼らが知っているのは、エスプレッソの正確な定義ではなく「おいしいエスプレッソとはこういう味だ」という経験。「適切に抽出・作成されたエスプレッソとともに、空間の雰囲気を作るバリスタによって、おいしい経験ができるのだろうと思います」 私たちも、本物のエスプレッソを知り、正しい飲み方を知れば、生活のワンシーンにおいしいエスプレッソがごく普通に存在するようになるのではないでしょうか。4月16日のイタリアエスプレッソデーは、そのための第一歩になるかも。たとえば、イタリアカフェテイスティング協会日本支部ではその日に合わせたイベントなどをご紹介しています。また、イタリアンエスプレッソを味わえる店を集めたこちらのリスト を参考に、身近なお店で本物のエスプレッソを味わってみるのもおすすめです。     ナポリでは、必ず1杯の水と一緒に供されるエスプレッソ。水で口をすっきりさせてから味わうのがナポリ流なのです。 「日本でエスプレッソを淹れると、ブラックで飲もうとする方も少なくないです。でもエスプレッソは砂糖を入れてこそ完成する味。それも、ナポリ人を見習ってたっぷりの砂糖を入れ、30〜40回以上かき混ぜてみてください。混ぜる回数で味や口当たりも変わりますよ。ちなみに北の人はあまり混ぜずにさっぱりと味わうのが好きで、ナポリに代表される南の人たちは何度もかき混ぜてからその後は一息に飲みきりますね。しっかり混ぜることで乳化してキャラメル状になり、上品なチョコレートのような飲み口になります。おいしくないエスプレッソだといくら混ぜても砂糖の甘味だけが飛び抜けてしまうのですが、本物のエスプレッソはコク、酸味、甘味のすべてがバランスよく、複雑に仕上がっているんです」と中川さん。     左は淹れたてのエスプレッソ。1分ほど置いておくと右のように黒く変色してしまいます。「アロマも味もすぐに変わりますから、出されたらすぐに味わうのがエスプレッソを楽しむ極意。ナポリのバールに行くと、スプーンと砂糖を手に持ち、かき混ぜる準備をして今か今かと待ち受けているおじさんもよく見かけますよ」 18世紀にはすでにカフェテリアがあったイタリア。先述したグレコは1760年創業、ヴェネツィアのカフェフローリアンはそれより前の1720年、フィレンツェのジッリは1733年の創業で、しかもその歴史的な店が現存して営業を続けているのです。「カフェテリア創世記のいろいろなお店が今も現役で華やいでいるのがイタリアらしいですよね。ひとつの通りにいくつものバールがあり、そのすべてが個性的で、“これがイタリアのバールだ”なんて一緒くたに評価することはできないほど」と語る中川さん。そうして連綿と続いているカフェ/バール文化の深さには驚嘆するばかりです。そして同時に、本物のエスプレッソのおいしさやイタリアらしい陽気なバールの楽しみ方を日本のみなさんにもぜひもっと知っていただけたらと思います。     […]

1 21 22 23 24