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LIFESTYLE

おしゃれやグルメなところが日本と似てる!?FIAT 500(チンクエチェント)の生まれ故郷イタリアの今を知ろう!

FIAT 500(チンクエチェント)はイタリアのクオーレ(心)のような存在 イタリアの魅力は日常に”美”があふれているところ。何気ない景色やちょっとした光景でもはっとするほど美しかったりします。そんな美しいイタリアの街に溶け込むエレガントさを備えているのがFIAT 500(チンクエチェント)。 「チンクエチェントはまさに”sapore italiano=イタリアンテイスト”。イタリア人なら大好きな車で、この車を見るとみんなが笑顔になるんです。」とは、500のヴィンテージを2台所有しているイタリア人女性。イタリアで最初に車が製造された時代から愛されてきた車なのでイタリア人なら誰もがこの車になにかしらの思い出を持っており、イタリアのクオーレ(心)のような存在です。 イタリア人は普段の日常生活をおしゃれに楽しくアップグレードするのが得意な人が多いのですが、そんな人達に選ばれているのが500。外観だけでなく内装もスマートなので運転していると気分が上がるのだとか。ちょっとしたお出かけも500となら素敵なドライブに様変わり。 ご当地グルメが豊富!似ている点が多い日本とイタリア 500で出かけたくなるような美しい国イタリア。世界遺産の数は世界一位のこの国は距離的には日本から遠く離れた国ですが、意外にも日本とイタリアには多くの共通点があります。 例えばグルメ。日本のご当地グルメのようにイタリア料理にもそれぞれの州に名物の食べ物や郷土料理があります。そんなイタリアで最近流行っているフードをご紹介します。 意外な組み合わせ?イタリア×グルメバーガーがブーム ここ数年、イタリアで流行しているフードといえばイタリア食材などを使った”グルメなハンバーガー”。イタリアとハンバーガーの組み合わせは意外かもしれませんが、トスカーナ州のキアニーナ牛を代表とする美味しいお肉、ルッコラなどの新鮮なサラダ菜、多種のチーズがふんだんに入ったイタリアな美味しいハンバーガーができるのです。 さすがイタリア、見た目もおしゃれで趣向を凝らしたハンバーガーが出回っています。フィレンツェにある、高級ブランドGUCCIのレストランではキュートなピンクのパッケージに入ったハンバーガー”Emilia Burger(エミリア・バーガー)”が人気メニュー。 イタリアでしか食べられないようなオリジナルのハンバーガーもありますので、イタリア旅行の際にはイタリアンバーガーを試してみてはいかがでしょうか。 フィレンツェのRinascente(リナシェンテ)がリニューアル!衣食住を楽しめる空間に フィレンツェのデパート、Rinascente(リナシェンテ)の最上階(4〜5階)が2月7日にリニューアルオープンし、イタリアに今までありそうでなかった「ファッションとフードとカルチャーの融合したフロア」の誕生が話題になっています。 本格的なトスカーナ料理が食べられるレストランTosca&Nino(トスカ・ニーノ)が新設、定期的に更新される職人によるハンドメイド作品の展示や有名ブランドのポップアップストアなど新たな取り組みが行われ、日本のデパートに近づいたスタイルになりました。デパート文化に馴染んでいる日本人にとって、フィレンツェ旅行で便利なスポットになりそうです。 日本でも流行するかも?おしゃれな床屋が人気 イタリアと日本の共通点、それはおしゃれな”髭スタイル”を楽しむ男性が増えていること。イタリア人からも「日本人男性も最近は髭スタイルの人が増えたよね。旅行者でもよく見かけるよ。」と言われますが、イタリア人もヒップスター人気などもあり、以前にも増して髭のおしゃれを楽しむ男性が増加中。 そんなブームに乗り、最近では”おしゃれな床屋”も登場。店構えがアパレルショップのような雰囲気で中にはコンサートやパーティーを開く床屋もあり、もはやただの床屋ではなくファッションにうるさい男性たちが集まるおしゃれ発信地と化しています。 “おしゃれ床屋”には素敵なパッケージのヒゲ剃りクリームなども販売され、どれにしようか目移りするほど。お土産やプレゼントにもぴったり。イタリアで人気の“おしゃれ床屋”、日本でも流行るかも? イタリア生まれのFIAT 500でライフスタイルをアップグレード ちょっとした移動も素敵なドライブにしてくれる500。何気ない日常もおしゃれに楽しむイタリア生まれの車で日々の生活をアップグレードしてみては? イタリア生まれのFIAT 500でもっと素敵な暮らしがしたいと思った方に耳よりなお知らせです。 まいにちをおしゃれに彩る限定車『500 / 500C Super Italian』が 3色のイタリアンカラーで登場します。 新しい季節を、新しい生活を、フィアットといっしょに! 詳しくはコチラ text・photo:小林真子 […]

LIFESTYLE

良質なココアを贅沢に使用 イタリア生まれの本格チョコレート「DOMORI(ドモーリ)」

  カカオ本来の味わいがそのままおいしさに イタリアが世界に誇る高級チョコレート「DOMORI(ドモーリ)」。世界に数あるチョコレートブランドのなかでもドモーリが注目されている理由は、全体の10%ほどしか取れない良質なファインカカオを原料に使い、製造方法にもこだわることで、カカオ本来の旨味が生きたおいしさを届けてくれるから。     カカオは、抗酸化効果が期待できるポリフェノールを豊富に含むことから近年ますます注目されている存在。ドモーリはカカオの味わいを最大限引き出すことに注力し、香料を使わずに発酵や焙煎、製造まですべてを自社で行っています。畑で獲れてから工場を出荷するまでのあらゆる工程で妥協せず、それによって実現するピュアな味わいは、グルメや健康志向の高い人をも魅了しています。     今回紹介するのは、ドモーリの真骨頂であるファインカカオの味わいを気軽に味わえる「CHACAO by DOMORI(チャカオ バイ ドモーリ)」。風味の異なる6種類がラインアップされています。   CHACAO by DOMORI 塩チョコレート(カカオ45%)     CHACAO by DOMORI塩チョコレートは、フランス・ブルターニュ地方のゲランドの塩をブレンドしたミルクチョコレート。カカオの豊かな香りと天日塩の思いもよらぬ出会いが口のなかでとろけ、豊かな芳香を楽しませてくれます。     フィアット正規ディーラーでは、2月3日(土)から14日(水)にかけてバレンタインシーズン限定のテストドライブキャンペーンを実施。期間中にフィアット車にご試乗された方に「CHACAO by DOMORI 塩チョコレート」を差し上げます。まいにちを楽しくしてくれるイタリア生まれのドモーリとフィアット。その運命的な出会いをあなたに。   バレンタイン テストドライブキャンペーンの詳細はこちら […]

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美ファッションとパッションが交錯したイタリアンな夜 PASSIONE Presents ITALIAN NIGHT

  街ではクリスマスの飾り付けが始まった季節の夕暮れ。日本でも有数の高級住宅地、渋谷区松濤に位置するフィアットカフェ松濤に、たくさんの人々が集まりました。老若男女、年齢も性別もばらばらでしたが、彼らにはひとつの共通点で繋がっていました。それは、イタリアを愛しているということ。アリタリア-イタリア航空日本語版機内誌『PASSIONE(パッシオーネ)』の創刊3周年を祝うパーティの模様をお伝えします。   美しいもので人生の楽しみを広げるのがイタリア流     ここで、イタリアを愛する人々を迎えたフィアットカフェ松濤についても簡単に補足しておきましょう。フィアットカフェ松濤は、フィアット松濤店に併設されたユニークなカフェ。イタリアの食材を用いたフードイベントを開催するなど、クルマ以外のイタリアの魅力や文化、ライフスタイルを発信する基地として愛されている場でもあるのです。都心の一等地にあることとあわせて、パーティを開くのにうってつけというわけです。     イタリアで最も有名な高級スパークリングワインのひとつ、フランチャコルタの繊細な泡が来場者を歓迎し、ナポリの名店で修行を積んだ青木嘉則さんが焼くピザの香りが空腹を刺激します。そう、美味しいものや美しいもので人生を楽しむのがイタリア流。極めつけが料理研究家のベリッシモ・フランチェスコ氏の料理。登壇したフランチェスコ氏は、「ただ食べるだけでなく、土地の歴史や人柄とか、イタリアの美や食への文化を知ってもらいたく料理教室を開いています」と述べました。     フランチェスコ氏の言葉を聞きながら、ふと「料理」の部分を「クルマ」に置き換えても成立するのではと感じました。すなわち「イタリア車を知ることで、イタリアの文化を理解できる部分もあるのではないか」と思います。     さて、アリタリア-イタリア航空の客室乗務員のコスチュームを用いたファッションショーで会場のボルテージはさらに高まります。同航空会社の制服はこれまでにジョルジオ・アルマーニやアルベルト・ファビアーニといった錚々たる顔ぶれのデザイナーズブランドが手掛けており、2016年に18年ぶりに刷新された現在のワイン色の制服も、ミラノを拠点とするデザイナー、エットーレ・ビロッタの手によるもの。ファッションショーでは歴代の制服が一堂に会し、華やかなオートクチュール・コレクションを披露。イタリアを象徴する赤と緑を用いた色合いが見事でした。     さて、イタリアの美意識を堪能した後で、この日、最も会場を沸かせたトークセッションが行われました。壇上にあがったのは、『PASSIONE』の九島辰也編集長と、FCAジャパン マーケティング本部長のティツィアナ・アランプレセです。 九島さんは、「僕は自動車評論家の仕事もしているので、ティツィアナさんとは旧知の間柄。リラックスしすぎて、余計なことまでしゃべらないように気をつけます(笑)」と挨拶。 ティツィアナが、「私は学生時代に九州大学に留学して、日本をとても好きになりました。そして13年前に再び来日して、現在は、FCAというフィアットやアルファロメオなどのクルマを扱う企業でマーケティングの仕事をしています」と自己紹介したところで、愉快なトークセッションがスタートしました。 ここでは、ふたりのトークを抜粋してお伝えします。     九島 「フィアット500は日本でも人気がありますが、イタリア人ってホントにこのクルマが好きじゃないですか。実際、ミラノの街とかで見かけると映えるんです。なぜでしょうね?」 ティツィアナ 「人生って毎日が違う生活の連続ですよね。フィアット500は、ライフスタイルの変化に合わせやすいんだと思いますよ。どんな人でも、その人らしい使い方ができるというか」 九島 「カラーバリエーションも豊富で、性別や年齢を問わず、だれもが自分の好きな色を選べますね」     ティツィアナ 「そうです。特に若い人はカスタマイズしたりオプションを選んだり、自分にぴったりの1台を楽しんでいます。九島さんはファッションにもお詳しいけれど、ファッションを楽しむのにも似ていますよね」 九島 「おっしゃる通りで、フィアット500を楽しむ人は、ジャケットや靴を選ぶのと同じように、自分らしさを表現しているのだと思います」 ティツィアナ 「私は日本人になりたいと思ったくらいで、日本の文化をとても深く愛しています。一方で、イタリアの文化にはちょっと違うところがあって、でもそれも好きなんです」     九島 「たとえば、どんなところがイタリアの文化は違いますか?」 ティツィアナ 「自分らしさを大事にしたり、それを恥ずかしがらずに表現したり。だから私は、マーケティングの仕事を通じて、日本のみなさんにそうしたパッションを伝えられたらいいと思っています」 九島 「パッション、素敵な言葉ですよ。クルマにしろ旅行にしろファッションにしろ、情熱がなければ人生は楽しめませんから」 ティツィアナ 「ね? だからパッションを大事にして、恥ずかしがらずに自分を表現するために、九島さん、一緒に歌いましょうよ」 九島 「え? ここで歌うんですか?」 ティツィアナ「さあ、『オー・ソレ・ミオ』を始めるわよ!」 こうして、会場も巻き込んだ『オー・ソレ・ミオ』の大合唱でパーティは賑やかに幕を閉じることに。パッションと自分らしさを大事にして人生を楽しむ。参加者たちは、“イタリアンナイト”が発信したメッセージを満喫したはずです。     […]

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CULTURE

芝浦に160年。老舗寿司店の主人に聞く江戸庶民の気質と遊び

1800年代には人口が百万に達し(※)、世界最大級の都市といわれた江戸。 そこでは300年余の間に生活のあらゆる部分が独自の発展を遂げ、明治、大正、昭和を経て現在に受け継がれたものも少なくありません。今回は、創業160年を数える老舗寿司店のご主人に、今も息づく江戸の庶民文化について伺います。 ※当時行なわれた町人対象の人口調査に、記録のない武家や公家などの推計を加えたもの   「小粋」を尊ぶ江戸の暮らし 「小粋」、辞書を引くと、なんとなく気が利いていたり、しゃれていることを指す言葉だと記されています。小粋の小は一歩下がった謙虚な表現で、これみよがしではなく、さりげなく漂う洗練を小粋と呼んできたわけですね。 こういった感性を大切にしたのが江戸の人々で、それは明治維新を経て東京となった今も息づいています。東京湾に面し、運河が走る港区の芝浦界隈もそのひとつ。多摩川など多くの川が流れ込む豊饒な海は、良質な魚介を産し、それは江戸前の由来にもなりました。 この地に徳川幕府の時代、安政から160年続く寿司店があります。   現当主で五代目という「おかめ寿司」は、江戸前の伝統を守る老舗。店主でありながら、同じく江戸庶民に愛された「江戸前の小物釣り」や「落語」も愛する長谷文彦さんは、小粋な暮らしを平成の世に実践する現役の江戸っ子です。今回は、今も残る江戸の嗜みや愉しみを伺いました。     切って、握る…シンプルだからこその奥深さ おかめ寿司の創業は安政2年(1856年)、徳川幕府が終焉に向かう時代でした。 「江戸時代、ここには漁港と河岸がありましてね。この先の東禅寺にイギリスの公使館ができて、ウチの初代が魚介を納めるようになりました。その頃、巷では“イギリス人が娘の生き血を呑んでる”なんてウワサが広がってたんです。おそらく、それはワインだったんでしょうねぇ(笑)。そんなわけで、飯炊きに若い娘を出入りさせるなんておっかない! というわけで27歳(当時じゃこれで大年増といわれたそうです)だった初代の女将さんが選ばれて、そこで初代と出会い夫婦になったんです。で、その後独立して寿司屋を始めたというあんばいです。」   明治維新前夜、激動の時代に歩みを始めたおかめ寿司ですが、寿司はシンプルだからこそ奥が深いと言います。 「塩や酢でしめたりしますが、結局は切って、握るだけの仕事なんです。でも、切り方によって、同じ魚でもさっぱり感じたり、そうでなかったりするんです。包丁で魚のよさを引き出せるんですよ」 昨今、ウニやイクラの軍艦巻きなど、かつては江戸前寿司になかったものも出すようになりましたが、160年間変わることのない伝統もあるとか…。   「アジ、サバ、小肌の締め方ですね。塩引きだけで旨みを出すっていうのもこだわりがあって。夏場のスズキだってちょっとクセがありますが、塩をやって、そのあとで洗うとクセが抑えられて、旨みが出てきます。寿司は男、それも職人も多かった江戸の街で、気が短くて味にうるさい連中が育てた文化ですよね。だから昔の寿司は大きかったんです。祖父の話では、今の三倍くらい。仕事帰りとかの食べ物ですからそうなったのだと思います」 時代と共に、客層もその好みも変化します。今ではトリュフを使った創作寿司を出すような店もあるほど。伝統は革新の積み重ねと言いますが、寿司の大きさだけでなく、おかめ鮨も、世の中の動きにアンテナを張って、新たな素材や味にも可能性を探ります。   「うちもカリフォルニアロールを出せなんて言われて最初は面食らいましたが、最近では、カウンター8席全部外国の方なんてこともありますからね。やっぱりそこは柔軟に対応するということも必要なのかなと思いましたよ。でないと絶滅した恐竜みたいになっちゃう…。」と、長谷さん。老舗ののれんを守る努力も忘れません。     江戸の人々が愛した小物釣りの深淵 運河や水路が縦横に走る江戸の街は「東洋のベニス」と讃えられたと言います。そこではフナやタナゴ、ハゼなどの釣りが楽しまれ、武士や町人の憩いの場となっていました。浮世絵にも釣りを楽しむ人々が多く描かれ、女性の釣り姿も目につきます。長谷さんが長年愛する江戸前の小物釣りについて伺ってみました。   「大名が楽しんだというタナゴ釣りなど小物釣り文化は現代にも受け継がれてきました。釣り糸は生娘の黒髪に限る…。なんて話もあって、私も女房の髪で真似したもんですよ(笑)。旦那衆も“ちょっと組合の寄り合いに…”とか言って、女将さんに内緒で釣りに行ってたんですね。そんな時、タナゴとかの小継(こつぎ)の竿は都合がいいんです。胸の内ポケットに隠せるから、仕事の合間にちょいと1時間って…。」     江戸前の釣道具は、指物(さしもの・板を指しあわえて作られた家具や器具の総称)や漆の高い技術がふんだんに盛り込まれつつも、これ見よがしな華美に走らない江戸の感性が漂っています。コンパクトでありながら、求められる機能は満たされていました。       「享保の倹約令(第8代将軍徳川吉宗による幕政改革)の影響かもしれませんが、表地より裏地に凝るなんてのが粋とされていました。でも、やろうと思えば絢爛豪華にもできたと思うんです。そうはせずに、しかし凝る所には凝る…。釣具で言えば1本の篠竹を切ったっていいのに、節が詰まってる竹を捜したり、それぞれの部分に合った竹を吟味して継竿にしたのは、他人より粋で優れた道具がほしい釣り師と、それに応えようとする職人達のいい関係があったからでしょうね。釣り師はパトロン的な存在で、若い職人を育てようとする……呉服屋の旦那衆とか日銭で金回りのいい釣り師は、見込みのある若い船頭がいると、何人かで金を出し合って船を1艘造ってやるんです。でも、客としてきちんと金を払って乗り、恩着せがましいことは一切言わない。そんな粋なことをしてたんです。」     見栄と我慢と意地っ張り…人情あふれる落語の愉しみ 落語も江戸っ子の楽しみでした。明治大学の落語研究会であの三宅裕司さんの後輩である長谷さんにとって、この小粋な芸能も幼い頃から生活の一部だったといいます。   「先々代が、和服着て小唄、端唄、常磐津、踊りを嗜み、歌舞伎の大向こうでした。先代の勘三郎さんが麻雀仲間でよく来てましたよ。出前の帰りに、芝居をひと幕見てくるような人でした。ウチは、仕事が休みの忌み日ってのがあって、先々代と墓参りに行くんですけど、帰りに上野でとんかつ食って、鈴本演芸場寄って落語聞いたり、浅草公会堂行ったり…。そんな風に落語と接していたんです。で、寄席の落語の真似を学校でやるとウケるわけですよ。こりゃ面白いなぁ…って。それで大学で落研(落語研究会)に入ったんです。」   落語は庶民の娯楽であると同時に生活の鏡でもありました。 「江戸の落語に出てくる気風のよさとか、見栄と我慢と意地っ張り、やせ我慢の大人って、わたしの子供の頃は普通にいたんです。でも、昭和50年頃を境に減っていきましたね。職人仕事の工場が郊外に移転したからなんですね。」         切る、締める、握る…シンプルだからこそ、ごまかしがきかず、技術とセンスがそのまま現れる寿司の世界。小さな魚を釣る楽しみを、コンパクトな道具や釣法に昇華させていった小物釣り。そして、粋を尊び、細やかさを身上とする市民の息づかいを描き出した落語。   文化を守るという意味ではイタリアも頑固である。こと、楽しいことに対する徹底的な姿勢は、こうした江戸っ子の気質にも近いものがある。 「フィアット500で、春の小物釣りとか行ってみたいですね。小さな道具を積んで、ウインドウからの景色が違って見えると思うんだよねぇ。水郷とかにタナゴとかフナとか、お弁当作ってさらっと遊びに行ったらいいだろうなぁ」。そういって笑った長谷さん…。 寿司職人が作るお弁当。それを彩るステキな小物たち。小粒だけど、あっけらかんとした開放感が十八番の500。是非ともそんな組み合わせで、ニッポンの桜を愛でてみたいものです。 […]

NEWS

「若手料理人 世界一」を目指す日本地区代表が決定! 〜『サンペレグリノ ヤングシェフ 2018』日本地区大会

文=山根かおり 写真=SHIge KIDOUE   30歳以下、ノンジャンルで行われるユニークな料理コンクール 自分の持てるパッションを全力で傾け、夢を追いかける若者たち。『サンペレグリノ ヤングシェフ』は、そんな情熱あふれるヤングシェフが集うコンペティションです。数あるコンクールのなかでも30歳以下の若き料理人の可能性に焦点を当てているのが特徴。そして、フランス料理でも和食でもジャンルを問わずに挑戦できるのも面白いところです。     実際サンペレグリノはどんな料理にも合わせやすいファインダイニングウォーターとして愛されていますし、レストランや料理人とのつながりも深いので、サンペレグリノらしい料理コンペティションといえるでしょう。     コンペティションでは、まず自らの実力を凝縮させたシグネチャーディッシュを書類で応募し、それをパルマにある国際的な料理学校「ALMA」が審査。ここで21の国・地区それぞれの代表10名ずつが厳選され、ミラノの決勝に進める代表1名をその地区内で選出します。     名だたる顔ぶれの審査員が出場者10人の料理を丁寧に審査 日本地区大会は、10月12日に開催されました。出場者10名は、すでに自分の店を持っていたり、有名店でスーシェフを務めていたりする実力派ぞろいですが、やはりコンペティションということで緊張感が漂います。     開会式では、審査員から「参加者のみなさんと食に対するパッションを共有できて嬉しい。1人を選ぶのは難しいですが、私たちもベストを尽くします」(アンゲラー氏)。「この緊張感を、世界に羽ばたき次のステージへと向かうステップにして」(高澤氏)。「自分ができることを精一杯出し切れば、それは必ず何かにつながります。頑張って!」(長谷川氏)と、激励のメッセージが寄せられました。     調理時間は自己申告制で、中には5時間にわたって仕込む出場者も。調理中も審査員シェフは各テーブルをまわり、時に話しかけたり質問を向けたり。取材のカメラも入りますが、集中力は途切れません。     駐日イタリア大使館に場所を移し、いよいよ日本代表の発表! 熱戦を制した1名の発表は、駐日イタリア大使館に場所を移して行われました。     発表後には華やかなアフターパーティが控えていることもあって会場はにぎやかな雰囲気に包まれましたが、朝から調理とプレゼンテーションを終え、力を出し尽くした出場者10名は緊張の面持ちで発表を待ちます。     審査員を代表し、ルカ・ファンティン氏が発表。 読み上げられたその名前はYasuhiro Fujio、大阪「ラシーム」でスーシェフを務める藤尾康浩さんでした!     メンターシェフとして藤尾さんとともに「世界一」を目指すルカ・ファンティン氏は「地区大会優勝は私たちの第一ステップ。ミラノでは他20地区の代表者と競うことになりますが、ライバルはたった20人です。プレッシャーを感じなくても大丈夫。これから一緒に頑張っていきましょう」と新たな愛弟子を祝福しました。     料理のタイトルは「Across the Sea」。日本特有の食材である鮎を用い、鮎になじみのない海外の人でも受け入れやすい創造性豊かな一皿です。     審査員の高澤氏が「10人のすばらしいクリエーションの中でも、藤尾さんのプレゼン能力はとくに優れていました。コンペティションなのにレストランで出すのと同じクオリティのシズル感、温度感を表現できていた点も評価が高い」と太鼓判のコメント。料理のコンセプトから素材選び、調理法、プレゼンテーションまで、緊張感とプレッシャーの中で高いクオリティを出し切れたことが評価につながりました。     出場者のシグネチャーディッシュ、そのすべてを一挙公開! 発表の際、ファンティン氏から「過去のイベントの中でもレベルが高かった」と総評があった本大会。「オリジナリティとクリエイティビティに富み、旬の食材をふんだんに使って、フレーバーのバランスも抜群でした」(アンゲラー氏)、「ひとりずつに個性があってしっかり前を向いていて、非常にすばらしかった!」(長谷川氏)という声もありました。 さて、代表に選ばれた一皿だけでなく、未来の「食」を担う若手料理人へのエールを込めて、出場者すべての力作をご紹介しましょう(敬称略)。           […]

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CULTURE

おでかけFIAT〜小さな高級魚ワカサギにみる「小粋」という価値

時代が求める小さな美味 SNSの発展とともに、かねてからのグルメブームはさらに加速しました。とりわけ高級肉などが好例ですが、同じくらいの人気を集めるのが「お魚さん」。大間のマグロ、氷見のブリ、日本海のノドグロなどなど、その多くは脂の乗りを身上とする、派手な顔ぶれがほとんど。確かに美味い。間違いなく幸せなおいしさがそこにはあります。 ところが、そうした重量級のスターたちに負けず劣らずの支持を受けているのが、たとえば琵琶湖のホンモロコ。長く小さな高級魚として食通の間で珍重されてきたのですが、最近では若い女性の間でも流行の古都の旅で、虜になる人が続出しているとか…。その需要を受けて各地で養殖も始まったといいますから、ちょっとしたブームの予感すら感じられます。 ギラギラとした豪華さや派手さばかりが上質ではない! という流れが世界的に巻き起こる現在、自然に人々は真の豊かさやモノの本質に、以前よりも気をとめるようになったのかもしれません。 魚に限らず、こうした個性的でキラリと光るキャラクターをもつ食材や料理に対する注目度は、これからさらに上がるでしょうし、むしろちょっと小粋でオシャレにすら映るのかもしれません。 さて、今回は、同じように人差し指ほどの姿でありながら、徳川家の将軍を虜にし、天皇に捧げられた魚…。「ワカサギのお話です。 えっ?ワカサギが? そう思う方も多いでしょう。スーパーでも魚屋でもごく普通に売られていて、甘露煮や南蛮漬けなど惣菜店でもおなじみのアノ魚です。 ワカサギは「公魚」と書き、第11代将軍徳川家斉の時代、霞ヶ浦に近かった麻生藩はワカサギを年貢として献上することが許されていました。つまり、公儀御用の魚=「公魚」というわけなのです。“小さな高級魚”として江戸幕府の将軍たちはこの美味に目を細めていたのです。     今も箱根に残る「献上公魚」 今や世界的な観光地として人気も高く、年間2000万を超える人々が訪れる箱根。その地の中心にある芦ノ湖は、蒼い湖面に朱の鳥居が映え、霊峰富士山を臨む美しい湖ですが、ここで育ったワカサギは、刺網漁が解禁となる毎年10月1日に、天皇陛下、皇太子、秋篠宮、常陸宮の各宮家へ献上されているのをご存知でしょうか? 皇室の避暑地として「函根離宮が置かれていたこともあって、昭和天皇はことのほか箱根を愛していました。そして、昭和24年の植樹行事をきっかけに献上が始まったという経緯があります。     採捕されたワカサギは同湖の漁業協同組合により、湖畔にある九頭龍神社へ奉納され、午前7時から公魚献上奉告祭を迎え、やがて皇居内の宮中三殿と呼ばれる三つの神殿へ向けて旅立っていきます。     そんなワカサギは、一方で実は誰もが簡単に気軽に楽しめる釣りのターゲットでもあります。その大きさからは想像がつきにくいのですが、実はサケの親戚なので好奇心が非常に強く、闘争心も旺盛。可憐な姿に似あわず、群れの中で激しく餌を奪いあったり、光るものや動くものに激しく反応するので、芦ノ湖では餌をつけずにハリだけでも釣る事が可能。ふらりと手ぶらで訪れ、道具をレンタルし簡単に楽しめる手軽さも芦ノ湖のワカサギの魅力です。   小さな身体に潜む奥深い味わい 甘露煮や佃煮も有名ですが、フライや天ぷら、素焼きといったシンプルな調理法やアレンジでこそワカサギの素材力が浮き上がってきます。     炭火でじっくりと炙っていくと、さらりとした上品な味の脂がにじみ、やがて皮の焼ける甘い香りが立ちのぼり、噛みしめるときめ細やかな身がフワっとほぐれていきます。あっさりとしているのに、じんわりと広がっていく旨み…。その他ピザに載せたりなどしてもとても美味しいワカサギ。ドライブのついでや日帰りキャンプに是非ともお試しいただくことをオススメします。     肩肘を張らないという特技 そんなワカサギにまつわる話には、日本人とイタリア人の間にある共通点を見出すことができます。美や歴史、何より食を重んじるところはもちろんなのですが、派手さにとらわれず、ちょっとしたコトやモノにも価値を見出す「小粋」という感覚を持ち合わせることがその最たるものかもしれません。     北に上質なポルチーニがあると聞けば北へ、最高のピスタチオがあると聞けば南へと躊躇なく数百キロも走るイタリア人は、本当の上質が意味するものが何なのかを身体で知っています。 四季折々、各地方の田舎町の名産を嗜むのは最高の贅沢として広く一般的ですが、戦後のイタリア人にそれを体感させたのは、他でもないFIATの小型車たちなのです。     街からアルプス、城塞都市や農道など、あらゆる景色に自然に溶け込むデザインを持ちあわせる小さな相棒たち。多彩な景色や文化、なにより豊富な食文化を持つ日本にも自然にフィットするはずです。 さあ、あなたもFIATで日本を味わい尽くしてみませんか?   参考文献 九頭竜神社社報 […]

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LIFESTYLE

おいしいイタリア〜シンプルな漁師めし「アクアパッツァ」

巷では◎◎めしなるものがもてはやされている。 いろんなアイディアが詰まっていて手軽で美味しく味わえ、しかもコスパ抜群。そんな簡単レシピが大人気である。 アクアパッツァという料理をご存知だろうか? いうなれば南部イタリアの漁師めしなのだが、これまたシンプルなことこの上なく、さりとて日本で大人気なイタリアン、ペペロンチーノやピッツァ・マルゲリータ同様、実に奥の深い料理なのである。 日髙良実(ひだかよしみ)、日本を代表するイタリア料理のシェフのひとり。喫茶店で供されるナポリタンやミートソース、そして冷凍のピザくらいしか一般的には認知されてなかった時代、イタリアの名店で修行を重ね、本格的なイタリア料理を日本に広めたことで知られている。 今よりもずっと本格イタリアンが少なかった時代、彼の海外武者修行もフランス料理からスタートしている。しかし、当時のフランス料理は敷居が高く、そこに疑問を抱いていた彼はもっと身近に楽しんでもらえるイタリア料理を選んだ。     その男、南へ 日髙青年は、やがて単身イタリアへ渡り数々の名店で修行を重ねる。 イタリアは広い、そこで郷土料理も学ぶべきだという先輩シェフの言葉に、彼は南イタリアのナポリへ足を向けた。 そして、後の彼の店名でもある「アクアパッツァ」に出会うことになるのだ。 「塩とオリーブオイル、柑橘類くらいしか使わないのに奥が深い。衝撃でした。シンプル、そのひと言ですね。イタリアンの凄味を感じました」     極めればミニマルに 「毎日食べても飽きないんです。いやシンプルだからこそ飽きないのかな? これぞイタリア的な一皿だと思いました。」 アクアパッツァは、格式あるレストランでも食べられるが、同時に庶民的でもあるこの“漁師めし”は、オステリアやトラットリア、果てはターヴォラカルダといった場末でも楽しむことができるので、修行の合間に評判の名店を食べ歩いたという。 「最初は仕事に夢中でしたが、慣れてくるといつのまにかどんどんイタリアが好きになっていました。特にイタリア人の人がらでしょうね、朗らかで屈託がない。街の美しい景色は、この人たちあってのものなんだと実感しました。     修行する店のスタッフの実家へ遊びに行ったり、街を散歩するようになると、ますますイタリアの魅力に引き込まれていく。」 「ナポリって港町ですからね。新鮮な魚介類の料理を大勢で楽しんでいる。暖かい日差しが降り注ぐ街並、石畳の上にはちっちゃなフィアットたちがギュウギュウに停められている。あれは心象風景ですね、僕にとってのイタリアの。」 そう語る日髙氏がアクアパッツァを作ってくれるという。           長く愛される理由 ホールスタッフに取り分けてもらった一皿を前にすると香しさに包まれる。柔らかな白身を口にふくむ…。素材を活かすのがイタリア料理などという月並みな言葉が頭の中から吹っ飛んでしまった。気がつけばスープまで飲み干していた。一皿のカタルシス。日髙氏の言う衝撃とはこのようなものだったのだろうか? 庶民派という点ではFIAT 500もその代表格。しかも、ギュウギュウに路上に溢れていたチンクエチェントは日高氏と同い年の1957年生まれ。 「ますます親近感を覚えますね。使い込まれたチンクエチェントが元気に走り回る光景は私にとってイタリアそのものです。いまは忙しくて運転する機会と言えば横須賀のアクアマーレに行くくらいなのですが、いつかこういう車に乗って港町を巡る旅をしてみたいものです。」 笑顔で答える彼と、いつのまにかミケランジェロやダヴィンチといったイタリアの文化や芸術にも話が及ぶ。 「どちらもイタリアの人が作ったものだからなんでしょうね、アクアパッツァ的なものを、チンクエチェントに乗った時にも感じましたよ。イタリアの気質みたいなものでしょうか。しっかりと歴史が磨いていく感じなのかな…。 誰からも愛され、歴史が磨き続け、愛され続けるという点で、一皿のアクアパッツァとチンクエチェントには同じイタリアの精神が脈々と宿っていると改めて認識させられた。     リストランテアクアパッツァ 東京都渋谷区広尾5-17-10 EASTWEST B1F 03-5447-5501 2018年春より移転予定 […]

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LIFESTYLE

オーナー紹介〜イタリア文化を丸ごと愛する2人の思いが、トラットリアと500に凝縮!

文=田代いたる(ベスト・イタリアン選考委員) 写真=太田隆生   店で使うおしゃれな備品を500で買い出し 真っ赤なボディに、ベージュのソフトトップが何ともスタイリッシュな500Cが、この日、『IKEA立川』のパーキングにありました。オーナーは竹内悠介さんと舞さん夫妻。ペーパーナプキン、ストロー、フォトフレームなど、今日もたくさんお買い上げのよう。『IKEA立川』には「よく来ます」と笑顔で舞さん。竹内さんも、「店で使っているテーブル周りの備品など、いつもここで買っています。イタリアに住んでいた頃から愛用していますよ」と続けます。竹内さんは、西荻窪で人気のイタリア料理店『トラットリア29(ヴェンティノーヴェ)』のオーナーシェフです。       『トラットリア29』は肉料理が評判の、西荻窪の人気店 愛車を走らせ、店に戻った竹内さん。舞さんにも手伝ってもらい、ディナータイムの準備に取りかかります。『トラットリア29』は今年で7年目。当初から変わらないコンセプトは「お肉の美味しいイタリアンレストラン」。メインはもちろん、前菜やパスタも肉料理がズラリ。その原点は竹内さんが修行したトスカーナ州にありました。 「けれど、最初の修行先にトスカーナを選んだ理由は、当時、自分の中にイメージができたイタリアで唯一の州だったから。本当に、そんな程度(笑)。元々、肉料理は好きで『州都のフィレンツェもビステッカが名物だからなぁ』って。何のツテもなく、行ってしまいました」。 最初の修業は、ビザの関係から半年の期間限定でした。「運良く、日本人シェフが在籍していた、フィレンツェの店で働くことはできたのですが、半年では全然、足りなかった。そこの先輩料理人から、存在を教えてもらったのが『チェッキーニ』でした」。そこである日、見学に出かけることに。     イタリアで『チェッキーニ』と出逢い、肉にのめり込む 『チェッキーニ』とは、トスカーナ州パンツァーノで400年(!)も続く老舗の精肉店。生の肉を卸し、販売するだけでなく、生ハムやサラミ、牛肉のタルタルなど、肉の総菜もいろいろ扱っています。店の向かいにはビステッカが名物の直営レストランも併設。竹内さんも驚いた、肉尽くしの環境がそこにはありました。 「生から熟成まで、肉料理に、これほど多彩なアプローチがあるのかと感激しました。その奥行の深さにすっかり魅せられてしまった」。 竹内さんがここで実感したのはひとつの文化。主役は肉で、町のお肉屋さんがその文化を牽引し、多くの人から愛され続けている。「いつかは自分の店を持ちたい」。イタリア料理の世界に飛び込んだときから抱いていた、竹内さんの漠然とした夢は『チェッキーニ』と出逢い、確固たる信念に変わりました。 「肉に特化した店をやる」。強い決意を胸に抱き、改めてイタリアへ渡った竹内さん。ほかの州も知っておきたいと、今度はエミリア・ロマーニャ州ボローニャで著名な『トラットリア・ダ・アメリーゴ』や、マルケ州で城壁の内にあるリストランテ『ラ・ボッテ』といった名店で研鑽を積みます。一方で、『チェッキーニ』にはずっと修業を嘆願。望みが叶ったのは、渡伊から1年半の月日が経った頃でした。     肉漬けの日々で見えてきた、肉の本当の美味しさ 「『チェッキーニ』では本当に、朝から晩までみっちり、肉(笑)。毎日7時から午前中はずっと、70歳を越える熟練職人の隣で肉を解体して、ランチタイムはレストランの手伝い。夜は夜で、また肉屋に戻って作業する。おかげで、それぞれの部位にはどんな特性があって、どういう調理が適しているのか、深く知ることができました」。 だから『トラットリア29』のビステッカは、イタリアで感激した赤身の美味しさを真っ直ぐに伝えるスペシャリテ。調味は基本的に焼き上がりに振る塩のみで、熱源も炭火。『チェッキーニ』と同じスタイルを踏襲しています。 「表面の水分を適度に飛ばして香ばしく、中はレアに仕上げるイメージ。時間はかけず、一気に焼き上げる。今日の短角牛で300gほどですが、完成まで10分ぐらい。日本で塊肉だと休ませながら焼くというイメージがありますが、イタリア人に言わせると、『それはビステッカでなく、ローストビーフだ』って言われてしまう(笑)」。       奥様との出逢いももちろん、イタリア! 『トラットリア29』は、イタリアの食文化に惚れ込んだ、竹内さんの熱意が凝縮されたレストラン。今も、年に1回は現地へ。そこで体感し、会得した、すべてが血となり肉となってお店に結実しているのです。実は、この日も2週間ほど滞在したフィレンツェから戻ったばかり。今回も、少なからず新たな発見があったようです。「新しい写真を飾らないと」。笑顔で舞さんが言いました。 そう言えば、竹内さんと舞さんが初めて出逢ったのもフィレンツェだったのでは? 「実は、よく食べに行っていた『トラットリア・ソスタンツァ』の裏手に、妻と横内美恵さんが暮らしていた部屋があって。横内さんを介して知り合いました」 横内さんは、今、『トラットリア29』の店舗を使い、別業態としてランチ限定で営業する、サンドウィッチ専門店『3&1(トレ・エ・ウーノ)』の責任者。竹内さんがフィレンツェで初めて働いた店の後任が、横内さんという縁があります。当時、彼女のルームメイトとして一緒に暮らし、ジュエリーデザインの学校に通っていたのが、舞さんでした。 舞さん曰く、「この店のデザインは、私の美大時代の先生にお願いしました。もちろん、2人のアイデアはいろいろとリクエストしています。そして、小物などを集めて飾るコーディネートは私の担当。飾る写真などは、折に触れて替えています」。     イタリア人のデザイン力に惹かれて なるほど、明るくスタイリッシュな店内は、夢を叶えてジュエリーデザイナーとしても活躍する舞さんと、竹内さん、そして美大時代の恩師のセンスの賜物。伝統的で重厚な肉料理を提供するするレストランとは思えないほど、洗練されています。実はその理由も「『チェッキーニ』の存在が大きかった」と舞さんは振り返ります。 「歴史があるお店なので、建物自体は何百年も前に建てられたままですが、『チェッキーニ』のレストランは、中に入るとビックリするぐらい、モダンにリノベーションされていた。彼らチームのデザイン力を実感しました。帰国して、店を始めるとき、最初から、そういう風にしたいねって2人で話していました」。 聞けば、トスカーナ州の代表的ワイン、キアンティの品評会でも、古い駅舎を会場に使用。外観は荘厳に、中は明るくモダンなんてことがよくあるそう。イタリアは美食の国であると同時にデザインの国でもある。そんなことを改めて思い出します。そして、竹内さんが愛車に500Cを選んだのも、イタリアへの愛の深さを考えれば、当然のことでした。     500のためのドライバーズライセンス 「ちょうど、僕がボローニャで修業していた頃、500に3代目が誕生して、街で見る度に『乗りたいなぁ』って思っていました。免許もなかったのに(笑)。イタリア人の同僚に『買ったぜ』と自慢されたときはホント、悔しかったなぁ」。 だから、運転免許取得の動機はただ一途に「500に乗りたかったから」。忙しい合間に免許を取って、店が軌道に乗った3年半ほど前にようやく、500Cを購入しました。買い出しでも大活躍する、今や『トラットリア29』には欠かせない、大切な存在です。 「かわいくて選んだカラーリングですが、後から見るとベージュが脂、ボディが赤身で、やっぱり肉になっているんです(笑)」という竹内さんに、舞さんは「彼はいつもそう言うんですけど、誰も同調してくれない(笑)」。 イタリア文化を丸ごと愛する2人の熱い思いが、『トラットリア29』の料理と店舗、そして500Cに凝縮されています。   […]

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おいしいイタリア〜シェフ直伝。本格濃厚「カルボナーラ」

銀座で出会った極上のカルボナーラ カルボナーラ。「炭焼き職人風」という名の通り、卵、パンチェッタ、チーズで作るシンプルなソースに、炭焼き職人の手から炭の粉がハラハラと落ちたかのように黒胡椒をたっぷりかけたパスタです。日本でもおなじみですが、個人的には「おいしい!」と感激したことはありませんでした。今回ご紹介する、ジャッジョーロ銀座のカルボナーラを食べるまでは。     落とし気味の照明が落ち着いた雰囲気を醸し出す店内は、食通の常連さんやカップル、近所にお勤めの会社員など、幅広い客層。銀座にふさわしい高級感がありつつも、フレンドリーでにこやかな接客をしてもらえるので、とても居心地よく食事が楽しめます。ジャッジョーロ銀座は、今年で開業8年目を迎えたリストランテ。フィレンツェにある世界最古の薬局「サンタ・マリア・ノヴェッラ」の自然治癒、予防医学といった思想を取り入れながら、素材本来の味わいを活かした調理法で、心身が豊かになれる料理を提供する本格派です。こちらの名物といえば、目にも舌にもおいしい「15種類のハーブサラダ」、炭火を使った和牛や和豚のグリル、それに、天然真鯛のハーブ蒸しなど、思わず通い詰めたくなる料理ばかりなのですが、濃厚なカルボナーラも人気メニューの筆頭。本当に、感動的なおいしさなのです。   こだわり卵と熟成パンチェッタ     「エサ、飲み水、環境などすべてにこだわり、清潔な鶏舎でストレスなく暮らしている親鶏が生んだ卵です。鮮度もいいし、すべてにおいてポテンシャルが高いですね。完璧です」とシェフも太鼓判。「カルボナーラの決め手は、なんといっても新鮮で味のいい濃厚な卵」と語る、シェフ岩永 健さん。野菜、魚、肉などすべての食材に対して真摯に向き合い、鮮度はもちろん栽培法(飼育法)や産地にまでこだわるシェフがカルボナーラのために選び出したのは、「こだわり家族のこだわり卵」と名付けられた、なんとも鮮やかなオレンジ色をした卵。 本来、カルボナーラは卵黄だけで作りますが、この卵の場合、黄身だけだと濃すぎるくらいの濃厚さなので、ジャッジョーロでは全卵を使って作られています。それなのに、あの見事に美しいオレンジのカルボナーラになるというのですから、驚きです。     唯一の「具」ともいえるパンチェッタ。イタリアで熟成させて、香草をまぶしたもので、なんとも芳醇ないい香りがします。「生ハムと同じで、このまま食べてもおいしいですよ」とシェフ。カルボナーラを作る際は、あらかじめカリカリに炒めておきます。 ではさっそく濃厚こだわり卵のカルボナーラ、レシピを教えていただきましょう!   ジャッジョーロの極上レシピを伝授!     材料(1人前)/スパゲッティ90g 、茶色い殻の全卵1個(ヨード卵・光など、ちょっといい卵を使いましょう。普通の卵を使う場合は、卵黄のみで2個分)、パンチェッタ10g、グラナパダーノ10g(パルミジャーノ・レッジャーノ、ペコリーノ・ロマーノでもOK)、生クリーム10cc(乳脂肪分35%がおすすめ)、塩・黒胡椒適量 材料をそろえたら、たっぷりのお湯を沸かします。茹でる際の塩は、湯量の1〜0.8%。「けっこう多めですよ。ご家庭で作るとだいたい塩が少なすぎる人が多いですから」とシェフ。塩の分量でパスタそのものの塩味が変わるので、ここはきっちり量りましょう。   1)パンチェッタを適当な大きさに刻みます。   2)フライパンに少量のオリーブオイルを敷き、弱火でカリカリになるまで炒めます。   3)キッチンペーパーで油を切っておきます。このくらいまでじっくり炒めることで、香ばしさが際立ちます。   4)ボールに卵を割り入れ、チーズ、生クリーム(分量の2/3)、塩ひとつまみ、粗挽きの黒胡椒を適量(たっぷり目がおいしいです)加えて、泡立て器で混ぜます。   5)ダマが残らないように、しっかりかき混ぜます。   6)フライパンに、パンチェッタ(半量。残りは飾り用に取っておく)と4)の残りの生クリームを入れておきます。まだ火は付けません。   7)パスタを茹で始めます。茹で時間は、表示よりやや少なめに。ジャッジョーロの場合、「9分と書いてありますが、7分50秒にしています」とのこと。キッチンタイマーできっちり測りましょう。   8)パスタが茹で上がる30秒前になったら、フライパンを弱火にかけ、温め始めます。温めすぎると卵がそぼろ状になってしまうので、気をつけて。このあたりで、盛りつけ用の皿も出しておきましょう。   9)フライパンをいったん火から下ろし、茹で上がったパスタを十分に湯切りして加えます。   10)5)の卵液も加えます。ボールに残らないよう、ゴムベラでこそげ落としましょう。   11)火に戻して(慣れるまで、火加減は弱火で)、ここからは手早く! まわりから火が入るので、鍋はだをゴムベラで混ぜながらソースをからめていきます。   12)卵のとろみを見つつ、1分ほど。火の入れ具合はパスタの量やフライパンの大きさ、コンロの種類によっても変わってくるので、ここはズバリ練習あるのみ!   13)生すぎず、ダマにもならない頃合いになったら、余熱がそれ以上入らないように、すぐにお皿へ。トングで高さを出すと美しく盛りつけられます。   14)残しておいたパンチェッタを飾り、粗挽きの黒胡椒をたっぷりかけたら完成!       ソースとパスタをからめるとき火の入り具合を見極め、ダマにならないように仕上げるのはかなり難しい工程ですが、これは何度も作って経験を積むのが一番です。それに、シェフいわく「カルボナーラの本場はローマですが、ローマで食べてもここまでクリーミーなのはないですよ。イタリア人は生卵を食べないので、生すぎるといやがるんです。だから、イタリアで食べるカルボナーラはそぼろ状だったりします」とのこと。 […]

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